チャンスを生かし「自分らしいリーダー」になるには

チャンスを生かし「自分らしいリーダー」になるには

2019/01/10

日経ウーマンオンライン創刊編集長からのメッセージ

 日経ウーマンオンラインが創刊されたのは、今から9年前の2009年9月。当時、私・麓幸子は日経WOMAN編集長と日経ウーマンオンライン編集長を兼務して、この媒体の創刊に携わりました。そして、既にお知らせしているように、来年2月に新たに働く女性向けWebメディア「日経doors」と「日経ARIA」に生まれ変わるため、本日をもって記事更新が終了します。そこでこれまでを振り返りながら、働く女性の皆様に、この媒体での最後のメッセージをお送りしたいと思います。

昇進、異動、転職…さまざまなチャンスを存分に生かす

 この9年間での大きな変化の一つは、2016年に女性活躍推進法(以下推進法)ができたことでしょう。私は記者として30年以上、働く女性とそれを取り巻く環境を見続けてきましたが、直近のこの9年は過去のどの時代よりも働く女性の環境が大きく変わったと思います。政府は、女性の活躍を成長戦略の重要な柱と位置付け、推進法をつくり、企業に女性活躍を迫りました。この法律は、301人以上の会社に、女性活躍の数値目標を立てることとそれをどのように達成するか行動計画を作り、公表することを義務付けています。その結果、301人以上の会社の99.1%に当たる1万6315社がそれを実行しています。努力義務である300人以下の会社も5093社が対応しています(18年9月末現在)。つまり、全国で2万1408社が、女性活躍にコミットし、それに対して目標と行動計画を社内外に公表しているのです。このような光景は、推進法施行前はありませんでした。

 私は企業のトップや人事担当役員に取材する機会が多いのですが、彼らは口をそろえて「優秀な女性たちを登用したい」「女性管理職をもっと増やしたい」と言います。このようなことは、過去30年なかった、いや30年どころか、働く女性にとって(ちょっと大げさですが)有史以来初めてのこと。ですから、女性の皆さんにお伝えしたいのは、今は千載一遇のチャンス! ということです。かつてなかったチャンスをフルに生かして存分に自分のキャリアを伸ばしていただきたいのです。

 チャンスはずっとあるものではありません。チャンスには期限があるのです(推進法も10年の時限立法です)。この記事を読んでいる意欲的な女性の皆さんには、きっと昇進や新たな職務、また転職や起業など実にさまざまなチャンスが訪れるでしょう。その好機を逃さずにその手でグッとつかみ、思う存分に生かしていただきたいと思うのです。

 でも、女性は得てして控えめです。そのようなチャンスを前にして、「自信がない」「私にできるのか」と思い、臆してしまいがちです。でも大丈夫です。あなたならできます。

 女性は自分の能力を低く見積もり過ぎます(反対に男性は自分の力を高く見積もり過ぎる傾向があるかもしれません)。あなたの前に来たチャンスは、あなたが自分の力で獲得した正当なものです。あなたには十分それをやりこなせる力があるのです。ですから、それをきちんと生かしましょう。例えば、昇進のオファーが来たら、受けましょう。女性管理職を増やしたいと思う会社のために? いえ、違います。あなたのキャリアとこれからの人生のためにです。あなたが勇気を出してそのチャンスを受ければ、さまざまな新しい景色が見えてきて、新たな自分の可能性に気付くでしょう。

変わる組織のマジョリティー、働き方改革が女性活躍の追い風に

 日本はこれまで女性が活躍しにくい国でした。それは、この度発表された世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」で、世界で110位にとどまっていることからも明らかでしょう。女性管理職登用も世界に比べて遅れています。その一つの要因は、専業主婦のいる男性を前提として企業活動も組織マネジメントもしてきたからです。専業主婦に家事、育児、介護など私的なことを全部任せて時間制約・制限なく仕事にまい進できた、残業し放題の男性をデフォルトとしてきました。だから、家事育児の責任が生じがちな女性はそこから排除されてきたのです。しかし、この仕組みも変わろうとしています。

 なぜなら、組織にいる人たちが変わったからです。かつて昭和の時代では、時間制約のない男性がマジョリティーでした。でも、今は違います。多くの人が時間制約を抱えて働いています。今、共働き世帯は1188万世帯となり、男性のみが働く片働き世帯より547万世帯も多くなりました(2017年)。若い共働き世帯にとっては家事も育児もシェアをするのが当たり前です。一方、2025年には日本は高齢化率30%になり、今後シニア世代では介護と仕事の両立に悩む人たちが大幅に増えるでしょう。また、私自身50歳で夜間大学院に入学しましたが、学びと仕事を両立したいと思う人たちも多くなるでしょう。つまり何らかの事情で時間制約が生じがちな人が組織の多数派になるのです(私はこれを日経ビジネス誌上で「新しいマジョリティー」と名付けました)。

 女性活躍の追い風となるのが、働き方改革です。今年、働き方改革関連法が成立し、2019年には、日本の労働法制で初めて残業時間の上限規制が導入されます。「長時間労働が美徳」「残業が当たり前」から「生産性高く働くことが大事」「定時退社が基本」へと価値観が変われば、もっと働きやすい社会となり、女性たちが活躍する領域も増えるでしょう(なお、この働き方改革の起点となったのは、3年前の今日、過労自殺した高橋まつりさんです。この9年間で最も痛ましいこの出来事を深く胸に刻みたいと思います)。

*関連記事「1年前の電通過労自殺 長時間労働からあなたを守る方法

イノベーションとエンゲージメント、どちらも女性が鍵に

 優秀な女性たちがどんどんリーダーになってほしい。意思決定層に女性たちが増えてほしい。そして組織をよりよい方向に変革してほしいと思います。

 女性たちには二つの意味で期待しています。一つは、組織にイノベーションを創出するキーパーソンとして。意思決定層に同じような人たちばかり――例えば、男性・日本人・50代以上・専業主婦あり――がいるモノカルチャーな組織ではイノベーションが生まれにくいといわれます。しかし、そこに、女性たちが参画して視点が多様になることで、イノベーションが創出しやすくなります。さらに、リスク管理能力や変化に適応する能力も向上するといわれています。それはそうですよね。男性たちの関心事がおおむね似ており同じ方向にしかアンテナが向かなければ、キャッチするリスク要因、変動要因も限りがあります。しかし、そこに女性が加わればもっと違う角度から情報を入手し、さまざまな要因を検討することが可能になります。女性役員が一人以上いる企業は経営破たん確率を20%減らせるという調査結果もあるのです。

 もう一つは、組織のエンゲージメントを高める存在として、です。17年に発表されたある調査が日本中の経営陣に衝撃を与えました。米ギャラップ社が発表したエンゲージメント(仕事の熱意度)調査です。これによると、日本には熱意あふれる社員が6%しかおらず、エンゲージメントの国際比較では139カ国中132位の最下位クラスだったのです(日経電子版17年5月26日)。組織のエンゲージメントによって組織成果が左右されることは容易にイメージできますよね。日本ではそれがとても低いのです。その報道を見た経営トップが「ウチのエンゲージメントはどうなっている!」と慌てたという話がいろいろな方面から聞こえてきました。さて、その理由を、米ギャラップ社では、コマンド&コントロール(指令と管理)によるマネジメントは若いミレニアル世代には効果的ではないためと分析し、上司のマインドセットを変える必要があるとしています。

自分らしさを生かしたリーダーになればいい

 「強いリーダーシップが取れない」「自分の上司のようになれない」と女性は悩みがちですが、上記の分析を見ると、従来のリーダー像に縛られる必要はないと思えるのではないでしょうか。「オレについてこい」式の支配型・管理型マネジメントは、昭和の時代は効果がありましたが、平成も終わろうとしている現在では、部下と一緒になって考えて部下が力を発揮できるように支える、共感型・支援型のマネジメントのほうがいいらしいのです。それならば女性にもできるのではないでしょうか。いやむしろ女性のほうが男性よりも得意なのではないでしょうか(もちろん個人差はありますが)。

 日経ウーマンオンライン内の連載「ウーマン・エグゼクティブ・カウンシル」には、経営トップや取締役など女性エグゼクティブのインタビューを掲載しています。彼女たちのリーダーシップのあり方や組織マネジメント方法、そしてファッションスタイルは人それぞれです。実に多様です。しかし、共通項があります。「果たして私でいいのか」「自分が務まるのか」と不安や葛藤を抱えながらも、それを乗り越えて「私は私でいい」「自分らしくいることが強み」と思うようになったと多くの人が語っています。彼女たちは決して遠い雲の上の人ではなく、真摯に仕事をする皆さんの延長線上にあるロールモデルだと思います。魅力的な女性リーダーたちの姿、そして言葉をぜひご覧いただきたいと思います。「自分らしさを生かしたリーダーであればいい」「自分らしいリーダー像をつくればいい」ということが分かっていただけるのではないかと思います。

 女性がリーダーになればすべてのことが解決するとは思いませんが、今年起こった組織のさまざまな不祥事やセクハラ・パワハラなどのハラスメント案件を振り返ると、もし、女性がトップにいたら、または意思決定層にもっと女性が多かったら、このような事態にならなかったのでは、避けられたのではと思います。

 リーダーになり得る素晴らしい女性はたくさんいると思います。あとは「自分はできる」という自分への信頼と、「失敗してもいい、そこから学べばいい」という気持ちでチャレンジする勇気を持てるかどうかだと思います。

 組織をリードし、自分の人生をリードし、世の中にいいインパクトを与えませんか?

 誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、自らが変化を起こす「チェンジメーカー」になりませんか? ぜひ、ご一緒に歩みましょう。女性たちの力もあなたの人生の可能性もきっと無限大です。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。皆様のご活躍とご多幸をお祈りします。

文/麓幸子 写真/PIXTA

Profile
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研フェロー。1984年筑波大学卒業、同年日経BP入社。88年日経ウーマンの創刊メンバー。2006年日経ウーマン編集長。15年日経BP総合研究所副所長。17年日経BP総研マーケティング戦略研究所長。18年現職。法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁などの有識者委員を歴任。筑波大学非常勤講師。著書は「女性活躍の教科書」「仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣」など。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/12/25掲載記事を転載
チャンスを生かし「自分らしいリーダー」になるには