「今の仕事」と「将来の自分」の間に、橋を架ける方法

「今の仕事」と「将来の自分」の間に、橋を架ける方法

2019/01/16

「仕事か人生か」でもう悩まない! 仕事も人生も味わうには

 今後、副業が当たり前になっていく中で、時間の切り売りをする仕事を副業や兼業に選ぶことは、ブラックな働き方につながりかねません。会社員を続けながらも、自分の価値を見極め、能力を役に立つ形でパッケージ化するには、どうしたらいいのでしょうか。この連載では、働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、「ポータブルスキル(持ち歩き可能な、どこでも通用するスキル)」を磨く方法を指南します。最終回の今回は、「仕事が遊び、遊びが仕事」という理想の状態にするために必要なことと、人生の棚卸し方法をお教えします。

仕事の優先順位と人生の優先順位、決められないときはどうする?

 ある企業での働き方改革に関する講演会で、仕事での優先順位付けについて話す機会があり、参加者から次の質問が出ました。

 「今目の前の仕事の優先順位と、将来に役立つ仕事・やりがいのある仕事・自分のキャリアにつながる仕事の優先順位付けにいつも迷ってしまいます。例えば、この企画は会社にとっても世の中にとっても絶対いいものだし、私も力を入れて取り組みたい! と思うアイデアがあるけれど、自分の直接の業務ではないから真っ先に取りかかることは難しく、折り合いのつけ方にモヤモヤしてしまいます」

 「絶対いいものだ!」と信じているのならぜひ推進したいものですが、目の前の仕事も放っておくわけにはいかない……悩ましい問題ですよね。

 この悩みは、連載のタイトル「じぶん商品化戦略」とは関係のないように見えますが、実は大いに関係があります。仕事の優先順位と、自分にとって情熱を持って打ち込めるような人生の優先順位を別々のものとして切り分けるような「仕事か人生かを選ぶ」考えは徐々に古くなってきているからです。今後は遊ぶように楽しむように働く時代が間もなく訪れ、あなたらしさや、あなたのアイデアや人生経験を商品として売り出し、仕事においても価値を出すことが当たり前になってきます。となると、上記のような「今の仕事と好きな仕事との折り合いをどうつけるか」という問いが出ることすらなくなってくるのです。

 兆しはもう見えています。例えばほぼ日では、2018年春より労働時間を8時間から7時間に短縮し、毎週金曜日を「インディペンデントデー」として、一人で考えたり、自由に使ったりする時間にしたそうです(出所 「すいません、ほぼ日の経営。」日経BP社)。これは単に労働時間を削減する「働き方改革」の話ではありません。質のいいアイデアを生むためには集中力を高めて物事を早く終わらせる、という今まで一般的だった考えを捨て、仕事に「余白」や「遊び」を加えることで、かえって個人の仕事の創造性、人生の創造性が高まり、それが会社の成長にもつながると考える会社は今後どんどん増えていくだろうと、私はこの本を読んで感じました。「仕事が遊び、遊びが仕事」となれば、「今の仕事の優先順位と、本当にやりたいことの優先順位の折り合いがつかない」という状態は今後なくなっていくでしょう。

 自分が本当にやりたくて、楽しくて仕方がなくて、夢中になったプロジェクトが世の中を変えるものとなるので「仕事はつらいものだからガマン料」「仕事は仕事、生活は生活」と割り切ったり、「本当はこの仕事をやりたいけど、今はできない」と考えたりすることがいずれなくなると思われる中、私たちが今すべきことは徐々に「いかに仕事を人生のやりがいにつなげるか?」「仕事を楽しむか?」という思考にシフトしていくため「脳を再インストールする」ことかもしれません。

現状の不満から楽しみを見いだす思考法とは

 「仕事が遊び、遊びが仕事」の時代になりそうなのは分かった。でも今のこの差し迫った悩みはどうしよう? という話ですが、「仕事が遊び、遊びが仕事」思考を養うという視点で取り得る解決策は二つあると考えています。一つは現状を乗り切るためのマインド面の施策、もう一つは将来を見据えた施策です。順番に紹介しましょう。

現状を乗り切るためのマインド面の施策:今の仕事と将来の仕事の「架け橋」を考える

 「会社にとって絶対にいい」施策と、今やっている仕事の価値を、まずはこじつけからのスタートでもいいので、何かしらの意味を見つけるクセを付けましょう。これを私は「架け橋」と言っています。

 例えば、「あいつが言うなら」と誰もが納得して自由な裁量で仕事ができるようになるために、今目の前の仕事を誰にも文句を言わせないように1年間集中して頑張ろう! というものでもいいですし、そこまで大層なものでなくてもかまいません。「今後『じぶん商品化』の時代が来ると、一人起業家が増えてくるだろうから、私がやっている事務代行の仕事は一人起業家にニーズがあるはず。今のうちにどういう事務フローだとパッケージとして商品化しやすいか考えておけば副業や起業したときに役立つはず」というものでもいいでしょう。

 今の仕事内容と自分が本当にやりたいことに乖離(かいり)があればあるほど、仕事にやりがいを見いだせません。やりがいがないから仕事でも結果を出せず、結果を出せないから本当にやりたい仕事がいつまでたってもできないという負のループに入ってしまいます。「今の自分の仕事は、将来の仕事と関係ない」という思い込みは、仕事を楽しむという思考の妨げになりますので、まずは今の仕事の意義と未来の仕事に橋を架けていきましょう。

 ちなみに、よくよく考えた結果、どうしても会社の未来がよくなることと今の仕事がつなげられないというのであれば、あなたにその仕事は合わないということです。その仕事にやりがいを見いだすことは今後も難しいと思うので、転職など次のステップを考えるいい機会かもしれません。

将来を見据えた施策:会社に納得してもらえるほどの意義を考え、プレゼンする

 もう一つ将来を見据えた施策としては、決裁者にプレゼンしたらどうなるか? をイメージし、実際にプレゼン資料を作ってみることです。あなたが情熱を持って取り組める仕事が、どれだけ会社の未来を変えるかを会社の文脈で考えてまとめてみましょう。会社の文脈とは何かというと、一言でいって「もうかるかどうか」です。「もうかるか」というと生々しいと感じる方も多いかもしれませんが、会社は利益の追求によって世の中をよくすることで成り立っているため、いくら「社会にいい」活動を提案しても、それが「もうからない」のなら会社もGOを出さないもの。つまり、「もうけ」は悪ではなく、経済の循環を促す社会貢献といえるでしょう。ですから、例えば会社の今期、次期の経営戦略や会社の創業時からの経営目的とリンクさせ、あなたの施策がいかに会社の「もうけ」にとって必要不可欠かをプレゼンとして組み立ててみましょう。

 プレゼンを組み立てる方法については「言いたいことが伝えられる3つのポイント」でも紹介した「GARPFSメソッド」を参考にしてみてください。

最後に、今までのキャリアをしっかり棚卸ししてみよう

 このように、日々の仕事から楽しみを見つけたり、関連性を見つけることから始めると、徐々に「仕事が遊び、遊びが仕事」という意識が自分の中にインストールされていきます。最後にもう一つ、時間をかけてでも一度考えておいて損はないのが「人生の棚卸し」です。多くの人はキャリアの棚卸しや自己分析を人生で1~2度、就職や転職の時しか実施しません。棚卸しも中途半端で、振り返り切っていないのです。人生の棚卸しは就職活動が終わったらそれで終わり、ではありません。定期的に転機が訪れるたびに徹底的にすべきものだと私は考えています。

 AI(人口知能)やRPA(ホワイトカラーの業務自動化技術)、「人生100年時代」といったキーワードに漠然とした不安を抱えてしまう理由は、自分の得意不得意、好き嫌い、強み・資質を理解しないままはやりや、稼げるかどうか、得するかどうか、ハクが付くか、と言った基準でキャリアの方向性や勉強分野などを決めてしまい、本当にやりたいことや、力を発揮できることを見失ってしまっているからです。

 そしてどうしたらいいか分からず、多くの人は資格取得に走ります。勉強している間は前に進んでいる安心感を得ることができるからです。しかし取得後、さあ、どうする? となった時にまた不安になり、また新しい資格を求めます。こうしていつまでたってもキャリアの方向性に悩むから、目の前の仕事に全力で取り組むことができないし、仕事に楽しみや意義を見いだせないのです。

 あなたらしさ、あなたの価値は、外に求めるものではなく、内に探るものです。今の自分とは全く違う自分になろうとするから、勉強しても勉強しても「まだ足りない」と不安になるのです。いったん徹底的に過去をしっかり振り返ってみると「じぶん商品化」の種は既にあなたの中にあることが分かるでしょう。過去を振り返り自分の強みを知る手法については過去記事でも紹介した「自分年表」を書いてみるのもおすすめです。

「ひとり時間」の振り返りで、過去の自分からヒントを得よう
まとめ

 今回のまとめは次のようなものです。

●「仕事か人生かを選ぶ」考えは徐々に古くなり、今後は遊ぶように、楽しむように働く時代が間もなく訪れる

●「いかに今の仕事を人生のやりがいにつなげるか?」「仕事を楽しむか?」という思考にシフトしていくため「脳を再インストールする」ことが今後必要

●「仕事が遊び、遊びが仕事」を実現するために今できることは3つ
1.今の仕事と将来の仕事の「架け橋」を考える
2.決裁者にプレゼンしたらどうなるか? をイメージし、実際にプレゼン資料を作ってみる
3.自分の人生を徹底的に棚卸ししてみる

 「仕事が遊び、遊びが仕事」の時代がやって来ると、出るくいは打たれるという価値観は終わります。みんな違うから個性を出し合い新たな価値を生み出せるのです。出っ張っているところも、へこんでいるところもあるから、それがチームとなってぴったり合わさったとき、素晴らしい未来が見えてくるのです。

 もちろん「じぶん商品化」でお金を頂くには、長年積み重ねた経験や知識も必要でしょう。しかし、一つのことを苦しみながら長く研究し続けた専門家は、変化に対応するのが難しい場合が多いです。3~5年後にどんな世の中になるか分からない今の時代は、むしろ、興味にまかせて夢中になりつつ1~3年くらい集中した経験を何個か掛け合わせた人のほうがより強いのです。

 そうして掛け合わせた強みを市場に問い、フィードバックを得て自分だけの学びを身に付けていきましょう。自分だけの学びは、そのまま教えるネタになり、誰にもマネできない「自分ならでは」としてのすごみとなっていきます。まずは自分らしさを探すのではなく、今いる環境を自分らしくすることから始めましょう。方法はお伝えしました。あとはジャンプするのみです。あなたの一歩を心から応援しています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

文/池田千恵 イラスト/PIXTA

Profile
池田千恵(いけだ・ちえ)
株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や自治体の朝イチ仕事改善、生産性向上の仕組みを構築している他、個人に向けては、教えるプロ(講師・コンサルタント・専門家)として起業したい人が商品作りを学べるコミュニティー「教えるプロのための自分商品化実践会」を主宰。9年連続プロデュースの「朝活手帳」など著書多数。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/12/25掲載記事を転載
「今の仕事」と「将来の自分」の間に、橋を架ける方法