真面目な人ほど「自分はまだまだ病」でチャンスを逃す

真面目な人ほど「自分はまだまだ病」でチャンスを逃す

2018/10/25

勉強熱心があだとなり、実践をおろそかにしていませんか?

 今後、副業が当たり前になっていく中で、時間の切り売りをする仕事を副業や兼業に選ぶことは、ブラックな働き方につながりかねません。会社員を続けながらも、自分の価値を見極め、能力を役に立つ形でパッケージ化するには、どうしたらいいのでしょうか。この連載では、働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、「ポータブルスキル(持ち歩き可能な、どこでも通用するスキル)」を磨く方法を指南します。第2回の今回は、「自分はまだまだ病」にかかってチャンスを逃している人に、警鐘を鳴らします。

勉強好きは「じぶん商品化」が苦手

 リカレント教育という言葉が話題になっています。リカレント教育とは図書館情報学用語辞典によると、「職業人を中心とした社会人が高度で専門的な知識や技術を習得するために、必要に応じて受けられる再教育システム。リカレント(回帰・循環)という語が示すように、生涯にわたって教育を継続的に循環させようというもの」だそうです。簡単に言うと「社会人の学び直し」全般をそう呼ぶようになってきているようです。

 学生時代の同級生にも社会人入学で学んでいる人がおり、社会人経験のない私たちに比べ勉強に対する熱量が高い印象がありました。経験がないまま理論だけを学んでいてピンとこなかったことが「あの時のこの勉強はこういう意味だったのか!」と後で気付くということはたくさんありますよね。社会人経験を経た彼女の視点から見た学校の講義はきっと生き生きと動きだすような、実践につながるものだったのだろうと思います。

 最初の就職先に定年までずっといるということが現実的ではなくなってきたり、副業が徐々に解禁されてきたりしている世の中で、今の自分をアップデートするために学びたい、と思う人が今後ますます増えていくことでしょう。

 しかし、私は「じぶん商品化」(=「自分の価値がここにあるのではないかな?」と仮説を立て、パッケージ化し、値付けして販売しながら試行錯誤を繰り返すことで、どこででも通用するスキルを磨くこと)をするためには、時に勉強が成長の邪魔になることもあるのではないかと感じています。

真面目な人が陥る「自分はまだまだ病」とは

 真面目な人ほど、自分はまだまだその域には達していない、と学び続ける傾向にあり、私はこの状態を「自分はまだまだ病」と呼んでいます。

 一般的に勉強熱心なのはいいことだといわれていますが、「じぶん商品化戦略」の視点でいうと、勉強熱心がかえってあなたの首を絞めるということもあり得ます。

 理由は二つです。

1.学びが深くなればなるほど、「自分には無理だ」と行動を制限されがちだから
2.「学校」で学べる情報は、既に過去の成功体験だから

 順番に説明しましょう。

学びが深まるほど「自分には無理だ」と行動を制限される

 将来起業したい、独立したい、フリーランスで働きたい、副業で自己実現したい、という希望があったとき、勉強好きな人は、まず「そのための学校」に通おうとします。独立のタネを見つけるためにMBAで勉強しよう、大学院に通おうというのもその一つです。もちろん何も情報がない状態で進むよりも、全体像を学べたほうが安心だというのも分かります。でも心当たりはありませんか? 学べば学ぶほど「自分にはこんなすごいことは無理だ」と思ってしまう、ということが。

 真面目で一生懸命な人ほど、どこまで学んでもきりがない底なし沼にはまってしまい、「私にもできる」ではなく「私にはそこまでできない」と萎縮してしまうのです。「自分はそこまでできないから、もっともっと学ばないと」と思い、さらに勉強をして深く追求するというループに入り、結局何も行動に移せず時間だけが過ぎていく、ということもあり得ます。

 実は、行動に移せない人は、自分の考えや行動が世に受け入れられず、傷つくのが怖いのです。怖いから知識武装するわけですが、今度は得た知識が邪魔をし「こんな中途半端な状態ではいけない」と、さらに行動を制限してしまいます。

 「じぶん商品化」は、アイデアを市場に問う作業なので痛みも伴います。商品開発に百発百中はあり得ません。しかし、受け入れられないのはあなたの存在全体ではなくて、あなたのアイデアの一部だけです。チャレンジしてダメダシされて失敗を経験にしたほうが、よっぽど成長があります。じぶん商品化 → 販売 → 失敗 → 改善を繰り返すには、勉強のし過ぎはかえって弊害となります。小さく試して反応を見て、世の中の流れを肌感覚で知っていき、自分「ならでは」の精度や判断軸を蓄積していきましょう。

「学校」で学べる情報は、既に過去の成功体験

 MBAをはじめとする経営の学校ではケーススタディーがあります。ケーススタディーとは、過去の企業の成功、失敗事例を分析し、強み・弱み・課題を抽出し、自分だったらどうするかを学ぶといったものです。経営者の状況を追体験し、意思決定能力を学ぶ上では欠かせないものではありますが、気を付けなければいけないのは、学べるのは過去の成功の追体験であるということです。5年先、どの業界がライバルとなっていくかも見えない、今の会社が何を売る会社になっているか分からないような世の中で、過去の成功体験を追うことが、必ずしも「じぶん商品化」に役立つとは言えないと私は思います。

 また、私は10年間大企業、中小企業、さまざまな規模・業種の方と取引をしてきましたが、小さく商いを繰り返して市場感覚を磨きながら商品開発をする「じぶん商品化」のやり方は、大企業で成功したやり方とは大きく違います。大企業でずっと頑張って出世しようとしている人や、ビジネスを大きくして上場を目指そう、と考える人には大変役立つMBAの知識ですが、自分の強みを生かしながら自由に働こうとしている私たちに直接役立つものだとは限らないのです。

学びは現場に落ちている

 では、勉強にはまり過ぎずに実践的な学びを得るために、何を心掛ければいいのでしょうか。すぐできる方法を今回は二つ挙げます。

1.目の前の仕事から「じぶん商品化のタネ」を拾う
2.自分の仕事の「再定義」をする

 何度も聞かれることは、みんなが知りたいことである可能性が高いです。自分にとって当たり前にできることが、実は「じぶん商品化」のための宝物になることがあります。例えば、仕事上で毎回繰り返し聞かれて、ちょっとうんざりしていることに、もしかしたらあなたが解決できるニーズがある可能性があります。仕事なら、IT関連部署ではないのにトラブルシューティングに毎回かり出されるなど「なんで私ばっかり」と思うようなことに、IT部署では解決できないあなただけの何かがあるかもしれません。プライベートなら、あなたがおいしいレストランをいろいろ知っていて、毎回「おすすめのレストランを教えて」というざっくりした質問に答えるのが面倒臭くてイラッとしていたとしたら、用途・ニーズ・人数・予算に応じて自分のオススメレストランガイドをまとめてみると役立つかもしれませんよね。

 じぶん商品化のタネについては、以前の連載の記事「自分への『よくある質問』にはコピペ対応、残業ゼロへ」にも詳しく書いたので参考にしてみてください。

 「自分の仕事を『再定義』をする」 とはどういうことかというと、今やっている仕事を「作業」ではなく、「価値」で見直してみるということです。

 例えば私は過去、パワーポイントでプレゼン資料を毎日100枚以上作る部署にいたのですが、「パワーポイント作成」だと単なる作業です。しかし、資料作成の本質は、混沌とした情報を整理してまとめ、分かりやすい形に編集して伝えるという「価値」となります。パワーポイントの資料の作成代行だと単価は安いかもしれませんが、あなたの強みを「見える化」して資料にまとめることができます、と伝えれば単価は高くなります。

 あなたが今している仕事の中でも「作業」として捉えているけれど「価値」になりそうなものはたくさんあるはずです。まずはそれを見つけるところから初めてみましょう。

まとめ

 今回の話をまとめると、次のようになります。

●リカレント教育(社会人の学び直し)が話題となっているが、学び過ぎは「じぶん商品化」の視点では弊害となりうる

●勉強のし過ぎの弊害は次の二つ
1.学びが深くなればなるほど、「自分には無理だ」と行動を制限されがちだから
2.「学校」で学べる情報は、既に過去の成功体験だから

●「自分はまだまだ病」への対策は二つ
1.現場から学びのタネを見つける訓練をしていこう
2.自分の仕事の「作業」を「価値」に再定義できないかを考えてみよう

 今の仕事の延長に「じぶん商品化」の道があると考えれば、新しく勉強するための時間をつくろう、と寝る時間を惜しみ「一人ブラック企業化」することを避けることができますし、今の仕事や環境を「じぶん商品化」にどうつなげるか? という視点を持つと、つまらないと思っていた今の仕事も、格段に面白くなっていきますよ。

文/池田千恵 イラスト/PIXTA

Profile
池田千恵(いけだ・ちえ)
株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や自治体の朝イチ仕事改善、生産性向上の仕組みを構築している他、個人に向けては、教えるプロ(講師・コンサルタント・専門家)として起業したい人が商品作りを学べるコミュニティー「教えるプロのための自分商品化実践会」を主宰。9年連続プロデュースの「朝活手帳」など著書多数。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/10/17掲載記事を転載
真面目な人ほど「自分はまだまだ病」でチャンスを逃す