書くだけで成長 キャスター小西美穂の2冊のノート

書くだけで成長 キャスター小西美穂の2冊のノート

2018/03/26

見返さない「発散ノート」と振り返る「改善ノート」効果絶大

 放送作家・山田美保子さんからは「最もお手本にすべき女性キャスター」と評される「news every.」キャスターの小西美穂さん。先日は「人生が変わる1分間の深イイ話」(日テレ系)でも密着取材され、特に働く女性、そして10~20代の若い層からも大反響。そんな小西さん自身のキャリアの軌跡にスポットを当てながら、挑戦し続けるコツについてじっくり聞いた。

第1回 小西美穂「仕事にガツガツ挑戦する人生も悪くない」

――スマートで完璧なキャリアを歩んだと思っていた小西さんが、実は30代まで「泥臭い」挑戦を続けていたというのは意外でした。その間、小西さんのステップアップを支えたものは何だったのでしょう。

 社会に出てすぐは上司や先輩が手取り足取り教えてくれますが、30代半ば以降は自分で自分を成長させていかないといけないんですよね。

 私の場合、2種類のノート習慣が、自分自身を前向きに成長させていくのに役立ってきたなと思っています。

苦しい時期を支えた2種類の「ノート習慣」とは?

 お話ししたとおり(小西美穂「仕事にガツガツ挑戦する人生も悪くない」、私はアナウンサーやキャスターの専門教育を受けた経験のない一記者でしたから、生放送の討論番組「深層NEWS」のメーンキャスターの職を拝命したときは、それはもう苦闘の連続だったわけです。

 放送後の反省会では、「愛の集中砲火」を浴び、歯を食いしばってました。番組スタッフは「いい番組を作りたい」という一心で厳しい意見もくれます。すべて建設的なアドバイスなのですが、私の未熟さゆえにそれをどう消化したらいいか分からず、悔しさを消化できない日もあったんです。

 その時に私が編み出したのが、自分の中に湧き上がったネガティブな感情を一気に吐き出して書く、という習慣です。誰かに見せる目的ではないので、飾らず、深く考えず、汚い言葉でも気にせずにとにかく書く!

 今日、実は現物を持ってきました。

――たくさんありますね! 持ってきていただいただけで10冊以上。

 ノートは2種類。まず、愚痴や不安といったネガティブワードも含めたありのままの感情を書く「発散ノート」。

 これはね、絶対に中身をお見せできません(笑)。そもそも私自身も書いた後に見直すことはないんです。「負の感情を吐き出す」ことが目的ですから。本当に悩んでいた時は、泣きながら何ページにもわたって書き続けていた夜もありました。

――デトックスしているイメージですね。

 そう。普段は鍵をかけてしまっておきたいくらい。今日はこのインタビューのために、「どんなこと書いていたんだっけ?」と久しぶりに開いてみたら、ビックリしました。負のオーラ全開で……。夫に見せたら、「美穂ちゃん、これは誰にも見せてはいけないね」と忠告されました(笑)。

 道で落とさないように細心の注意を払って持参しましたけれど、「書いた後はサッパリ忘れている」というのがポイントですね。


最大のメリットは「他人に愚痴らなくなること」

――ストレス発散の方法はいろいろあると思うのですが、なぜ「書き出す」だったのでしょうか?

 書くメリットとしては、感情を言葉に置き換えることで頭の中が整理されていくこと。文字という物理的なものに視覚化して「負の感情を自分の中から吐き出し、解放する」んです。

 嫌なことがあると、くよくよしたり、腹が立ったり。あーでもない、こーでもないと自分の中でぐるぐる回って、私の場合、苦しくて寝られなくなる。そういうとき、手で書き出すと負のスパイラルを断ち切ることができて、驚くほど気持ちがスッキリします。デトックス効果で、本当によく眠れます!

 実は、一番大きなメリットだと思っているのは、「他人に愚痴らなくなること」。自分で吐き出す作業をしているから、誰かに吐き出す必要がなくなるんです。大切な友達や彼の前で、嫌な自分を見せなくていい。「あんな自分を見せちゃって、どう思われているかなぁ」とかえって悩むこともなくなりますね。

――書いた後はどうするんですか?

 この「発散ノート」は、書いた後が重要なんです。私は、ほぼ破いて捨てています。見返すことはないですし、万が一誰かに読まれたことを考えるとぞっとしますね。私の闇が言語化されているので(笑)。だからこそ、いろんな紙に書くのは避けて、この「発散ノート」で厳重に一元管理して、最終的に処分します。

――なるほど。管理方法も肝なんですね。「発散ノート」が1種類目。もう1冊はどんなノートですか?

 発散した後の次のステップが大事。悔しさや怒りの感情が生まれた理由を書き出していくんです。「どうしてこうなってしまったのか?」という原因分析を自分なりにして、書いていきます。そして、「どうしたらよかったのか」「次はこうしていく」という改善ポイントまで書くのです。

 気持ちに余裕がなくてそこまでできないときは、発散止まりで寝ちゃってもよし。翌朝起きて気分が少し落ち着いたところで、通勤中の電車の中で書き出してもいいと思います。

 このとき、「発散ノート」とは別に「改善ノート」を用意するのがコツです。「改善ノート」は何度でも見直したいものですが、目を覆いたくなる愚痴が交ざっていると、見返す気が失せるので(笑)、気に入った色やデザインを選ぶといいと思います。

 自分で気付いた改善点の他、人から指摘してもらったアドバイスもここに。日付と話者も添え、できるだけ具体的に、言われた通りの言葉を書き留めておきます。

 そして、時々見返して、「あ、ここはまだ全然できてないわ」と思った箇所には色ペンでラインを引いて強調。そうやって、自分だけの参考書を作っていくんです。

――人からもらったアドバイスも全部書き留めていくんですね。

 はい。すごく大事なことだと思って、「改善ノート」を書く習慣は今でもずっと続けています。

 これは著書にも書いたことなのですが、いくら親切な方でも同じことを2度、3度と教えてくれることはありません。1度目は「こうしたほうがいいよ」と教えてくださって、2度目は「前にも言ったけれど、このほうがいいよ」と言ってくださるかもしれない。でも、3度目はありません。アドバイスは一度きりだと思って、いただいたらすぐに書き留めておく。


改善ノートに実際に書いている内容は…

――実際にはどのように書いていくんですか?

 いくつか例をお見せしましょうか。

 例えば、ここ。元日本テレビキャスターで参議院議員の真山勇一さんからいただいた、生放送の番組の最後を締めるコメントについてのアドバイスです。

 まずアドバイスをくださった日付とお名前があって、「言葉の引き出しを持ってきて」と。「最後の30秒は一番視聴者の心に残る。本番では考える余裕がなくなってしまうので、最後のコメントは別に用意しておくといい」と書き留めています。

――日付と話者を書いておくというのもポイントですか?

 いつ、誰から言われたかもセットにしておくと、その人とのコミュニケーションにも生かしていけるんですよ。

 そのアドバイスを実践してみた後でその人に再会できたときに、「あの時、○○さんにこんなふうに言っていただいたのがすごく役に立ちました。ありがとうございました」って感謝をお返しできるでしょう。するとまた、関係性が深まっていく。

 直接いただけるアドバイスだけでなく、「まねしたいテクニック」を書き留めることも多いんですよ。

 ちょっとお恥ずかしいんですが、ここには古舘伊知郎さんがご自分の番組に日産のゴーン社長(当時)を招いた時のやりとりをそのまま書いていますね。

 こちらには、フリーアナウンサーの荒川強啓さんのラジオ番組でCMに入る前の言い回し。「Aさんはこう言った。Bさんはこういう意見。それを受けてコマーシャルを挟みまして、ではこの先どうしていくかについて展開していきます」と。話のプロが言うと何でもないセリフのように聞こえるかもしれませんが、記者上がりの私からすると、パッとは出てこない言い回しなんです。だから、一字一句書き留めて自分の中に浸透させて、言葉の選択肢を増やします。

――それを実践していたのが40歳前後の時で、今も続けていると。誰から言われるわけでもない、自発的な学びの習慣なんですね。

 話が長い相手の話の止め方とか、相手を尊重する相づちの打ち方とか、細かいテクニックを何でも書いてきました。その蓄積をまとめたら、1冊の本(著書「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」)になりました。

 最近は、「news every.」で出演中のコーナー「ナゼナニっ?」は放送後に番組ホームページに動画がアップされるので、セルフチェックして「最後が早口になっていたな」「猫背になってるやん」と「自分反省会」をします。そして翌日の放送中に、テレビカメラに映らない所に「早口注意! 姿勢注意!」と書いた付箋を貼っておきます。


自分を受け止められるのは自分だけだから

――すごく地道な努力をサボらず続けていらっしゃるんですね。

 私、不器用なんですよ。これくらいちゃんとやらないと付いていけないんです。

 でも、こうやって十数冊になったノートを見ていると、「私の苦闘の歴史」が積み上がっているようで、愛着を感じますね。

 結局、自分を成長させてくれるのは自分の行動だし、年齢を重ねるにつれて生き方は人の数だけ分岐して、自分と全く同じ立場の人は見つからなくなると思うんです。自分の素直な感情をぶつけられて受け止められるのは自分自身だけ。

 見返すのはちょっと怖いけど(笑)、苦しかった時の私を助けてくれた大事な存在です。

――ちなみに小西さん、今でも「発散ノート」のほうは……?

 はい、今でも一応持っていますよ。でも、おかげさまで滅多に付けることはなくなりました(笑)!

 その言葉にホッとした取材陣。ハードな職務をこなしながら、いつも周りを明るくするゆとりを備える。そんな小西さんの魅力の陰にあったノート習慣に、深く納得した一同であった。

聞き手・文/宮本恵理子 写真/稲垣純也

Profile
小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ「深層NEWS」ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組「news every.」でニュースを分かりやすく解説。関西出身の親しみやすい人柄で支持を集める。著書に「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/03/26掲載記事を転載
書くだけで成長 キャスター小西美穂の2冊のノート