「仕事も私生活もうまくいく」女性が実践していること

「仕事も私生活もうまくいく」女性が実践していること

2017/11/13

生涯キャリアの花を咲かせるために、今からできること

 福岡国際会議場(福岡・博多区)で10月8日(日)に開催された「WOMAN EXPO FUKUOKA 2017」。日経BP社執行役員で元「日経WOMAN」編集長の麓幸子・日経BP総研マーケティング戦略研究所長の「新時代をつくる女性のキャリア戦略~仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣とは」は、開場前からズラリと長い列ができていました。ステージ上を歩きながら、集まった女性たちに熱く語りかける麓所長。皆さん真剣に聞き入り、示唆に富むスライドをスマートフォンで撮影する姿も多く見られました。

日経BP社執行役員で元「日経WOMAN」編集長の麓幸子所長

 今年、働く女性のためのキャリアの教科書として「仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣」を出版した麓所長。講演では、3つの立場から話を展開しました。一つ目は、88年に創刊した「日経WOMAN」の記者や編集長として30年以上にわたり「成功した働く女性」を取材する中で見えてきた共通項について。二つ目は、50歳から夜間大学院に通い、キャリアデザイン学の修士を取得する中で学んだ理論について。それから最後に、二人の子どもを育てながら働いてきた母としての立場から具体的なエピソードを踏まえて話をしました。

活躍したい女性にとって、かつてないほどいい時代が到来

 まず大切なのは、「この時代をどう見るかという認識」だといいます。なぜなら、時代の見方を誤ると、正しいキャリア戦略が立てられないからです。

 「今の時代は、意欲のある女性にとって千載一遇のチャンス。長きにわたって取材を続けてきましたが、優秀な女性たちを活躍させたいという企業経営層の意欲がこれほど高まったことはいまだかつてありません。皆さんはとてもラッキーな方々なのです。この時代の波をうまく活用して、どんどん自分の活躍の場を拡大してください」とメッセージを送ります。

 では、なぜ国や企業は女性を活躍させたいのでしょう。麓所長によると、一つは少子高齢化の影響で働き手が足りなくなるという量的な背景があります。さらに質的な背景として、例えば、経営メンバーが「50代以上・日本人・男性」というようなモノカルチャーであると、イノベーティブなことが起こりにくく、リスク管理能力や変化適応力も高まらないため、女性の活躍が期待されているとのこと。

 「女性が昇進して、意思決定の場にいること、多様な意見があることが、皆さんのキャリアはもちろん所属している組織にとっても、とても重要なのです。これまでの日本には、『男性は仕事、女性は家庭』という性別役割に基づく社会システムが根強くありましたが、それはもはや時代遅れ。時代が大きく変革していく中で、私たち女性が男性と一緒になってシステムを打ち砕き、『CHANGE MAKER』となることが求められています」

女性の健康寿命は74歳! 生涯キャリアをどう開発する?

 変革の時代には、どんなキャリア戦略を立てたらいいのでしょうか。

 「今までの成功体験が全く効かない時代に重要なのは、キャリアの自律。夫や会社など誰かに頼るようなメンタリティーではなくて、自分のキャリアは自分で考えて切り開くという主体的・自律的な行動が求められます。

 女性の健康寿命は74歳。それまでの自分のキャリアをどう構築するか、自分で考え行動を起こし、自律的に開発していくことが大切です」

 また、求められる人材のタイプについても解説。かつては一つの専門性を持つI型人材でよかったが、一つの専門分野に加えて幅広い知識を持つT型、二つの専門分野を兼ね備えたΠ(パイ)型など、求められる人材が高度化しているそう。

 さらにこれから注目のモデルとして、強い専門性が一つあり、他の専門性の高い人たちと横棒でつながっていくH型人材を紹介。「自分はどんな人材か、ぜひ考えていただきたい」と語りました。

「私は、40代後半に人生のミッションを立てました」

 自身は、「日経WOMAN」の編集長だった40代後半に、自分の人生をかけて成し得たいことを考え、「働く女性の笑顔を増やす社会づくりに貢献する」というミッションを立てたそうです。そして、74~75歳まで現役で働くために「体系的に学びたい」「理論を学びたい」と思い、50歳で大学院に入学。

 「それまで培った取材力と経験に、理論や知識を加えて自分の一生の強みとし、自分のミッションに向かって一生貢献していきたいというのが今の私の状況です。皆さんも74~75歳まで活躍するために、自分が何をしたらいいか考え、解を見つけましょう」と呼び掛けました。

仕事も私生活もうまくいく女性の4つの習慣を紹介

 講座の後半は、多くの女性を取材した経験から見えてきた「仕事で大きな成果を上げ、私生活も幸せな方々の習慣」を披露しました。

1.「今、ここ」を大切にし、偶然の出来事を「チャンス」に変える

 クランボルツの「計画された偶発性理論」を紹介。「偶然こそがチャンスを生む。与えられた仕事に誠実に取り組み、積極的かつ主体的に行動を起こして、手に入れたチャンスを生かしてほしい」

2.よい人間関係を構築し、周囲にサポーターを増やす

 「成功する人のところには、いい人しか集まらないとよく言われますが、本当かなという疑問に対する一つの解を大学院で見つけた」といいます。それは1995年にアルバート・エリスが提唱したABC理論。ある出来事(A)があり、結果として生まれる感情(C)は、出来事をどう解釈するかという自分の考え方のクセや解釈(B)次第という理論です。

 「成功する女性は、不快な感情が生まれそうになると、自分で反論して不快な感情を消し去ります。成功する人の周りにいい人ばかりが存在するのではなく、その方が人物を解釈するのがお上手で、まわりの方々とよい人間関係をつくっているのです」

3.失敗や逆境から学び、成功の糧として自分を変容させる

 成功している女性は失敗も繰り返しているが、失敗したときの解釈や対処の仕方が違うとのこと。「成功する人は失敗しない人ではなくて、失敗からきちんと学び、自分を変えられる人。失敗したら原因を分析して、課題を解決するような手を打ち、ピンチになってもリベンジする女性が多いのです」

4.自分の可能性に蓋をせず、臆せずチャレンジする

 女性は十分にできる力があるにもかかわらず、「私には無理」と臆してしまい、チャンスを逃すケースが大変多い、とも指摘します。

 「ジョブローテーションという横の移動や、昇進という縦の移動など、皆さんにはチャンスがたくさんあると思います。私なんてと思わずにどんどん獲得してもらいたい。失敗を不幸な出来事と捉えずに自分を成長させてくれる糧と思えば、いろんなことにチャレンジできて、自信がつきます。前向きな気持ちや積極的な行動が、チャンスや幸運を引き寄せます」

子どもからの言葉やメモに勇気づけられて

 自身も「働く女性」と「お母さん」という二つの役割を担い、どちらかを一生懸命やると片方ができなくなる「役割葛藤」や罪悪感に悩んできたという麓所長。

 「女性活躍が叫ばれる今、家事や育児、介護などをすべて女性が引き受けて、なおかつ活躍なんてできません。

 自分の仕事に対する意欲をパートナーに伝えて、家事や育児に参加してほしいと訴えましょう。男性は言わないと分からないんです。育休を取得した男性を取材すると、パートナーから訴えられて『そうか』と目からうろこが落ち、育児をするようになったという男性が多い。パートナーに積極的に家事育児の機会を与えること。それが、家族が幸せになれる一つの方策でしょう」

 また、自身の子育てに関するエピソードも。保育園の後に二重保育のベビーシッターさんにお願いしていたことについて、大きくなった子どもたちが「(ベビーシッター先の)お兄ちゃんやお姉ちゃんが遊んでくれて、楽しかったよ」と言ってくれたこと。2006年に編集長になったとき、お子さんからのメモが玄関先に置かれていて「編集長になってよかったね、おめでとう。せっかくもらったチャンスだから、身を粉にして働きなさい」と書かれていたこと。

 「ダメな親だったけど、子どもは育つんですよね。大切なのは、時間の長さではなくて質。短くても一生懸命子どもと接する。何かあったら、その都度クリアしていくしかない。今、感じるのは、子どもにとって働くお母さんはとても誇れる存在だということ。ですから、子どもたちに胸を張って、お母さんはこんな仕事をしてるよ、こんなふうに社会に貢献してるんだよと伝えていただきたいと思います」

時に情熱的に、時に優しく語りかける


こんな考え方は捨てて、自分をリスペクトしよう

 女性が陥りやすい3つの考え方について、克服するためのポイントも教えてくれました。

 「私なんてこんなもの、こんな程度」と思いがちな女性には、「皆さんは素晴らしい才能と意欲にあふれています。自分の可能性に蓋をしない。何でもできます」。

 「きっと失敗するに違いない……」と思ったら、「ずっと成功し続ける人なんていない。失敗してもいい。そこから学べばいいのだから」というマインドセットを。

 そして、「もう年だから……」という考えが頭をよぎったら、「遅過ぎることはない。キャリアは生涯にわたって変化し、亡くなるその日まで発達する」と思えばいい、とのこと。

 最後は、来場者に向けて、優しく力強い言葉を贈りました。「皆さん、自分で自分を元気づけて、生涯のキャリアを花開かせていただきたい」

文/佐々木恵美 写真/長崎辰一

Provider

日経ウーマンオンライン

2017/11/13掲載記事を転載
「仕事も私生活もうまくいく」女性が実践していること