「ピンチに負けない強い人」が実践する失敗時の行動

「ピンチに負けない強い人」が実践する失敗時の行動

2017/08/01

失敗で心が折れたときに「人生を変えられる」振る舞い

第1回「 号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由
第2回「 『私はダメ』自虐の無限ループ あなたのせいじゃない
第3回「キャリアプラン不要「人生を変える偶然」との出会い方
第4回 「ピンチに負けない強い人」が実践する失敗時の行動」(今回はここ)

 あなたは失敗や逆境が好きですか? ピンチを好ましいと思いますか?

 もちろん、嫌いですよね。そんなことは起こってほしくないですよね。

 でも、成功する女性はちょっと違うんです。

 あるITベンチャーの女性社長は、「順調なときはつまらない。私はピンチが大好きなの」と言っていました。その言葉を聞いたときはびっくりしました。その女性の発言の真意はなんだったのでしょうか。

 今回は、「失敗したときの振る舞い方によって人生が変わってくる」というお話をお伝えしたいと思います。

失敗のたびにどう振る舞うかで人生が変わっていきます (C) PIXTA


ずっとチャンスに恵まれてラッキーだった人など一人もいない

 日経WOMANでは、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」受賞者など活躍した女性に、「キャリアチャート」を書いていただきます。皆さんも日経WOMAN誌上で見たことがあると思います。このキャリアチャートは、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の初期よりご協力いただいていた慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授の高橋俊介さんに監修していただいたものです。

 キャリアチャートは、横軸が年齢、縦軸がキャリアのハッピー度を表します。ハッピー度は、真ん中が「ゼロ」。一番充実していたときを「+100」、一番落ち込んでいたときを「-100」として、自分のこれまでのキャリアを思い出しながら、アップダウンを書き込んでいきます。

 これまで、たくさんの女性たちにキャリアチャートを書いていただきましたが、それが実に興味深いのです。皆さんはもしかすると、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」受賞者のように、大きな成果を上げた女性たちは「きっと、20代のキャリアの最初の頃からラッキーでチャンスに恵まれて、ずっとチャートは右肩上がりではないか」と思うかもしれませんが、そうではないのです。

 そのキャリアチャートはとてもジグザグしています。ずっと1本調子で右肩上がりという人は一人もいませんでした。初期キャリアである20代に高得点という人も少ない。「+20」くらいのところから始まってずっとそのあたりでとどまっていたり、異動した新しい職場で挫折や苦労をしてマイナスに急降下したりしている。20代は低空飛行の「模索期」だった人という人が多かったです。30代に入ると徐々に右肩上がりになっていきます。しかし、その後も、「ずっと順調」ということはなくて、またピンチが繰り返しやってきます。

ピンチを繰り返し大きくリベンジする

 せっかく上向いていたチャートが、また大きく落ち込みます。しかも、20代の頃よりもより深刻な出来事が生じます。さまざまな人間関係に悩みます。信頼する部下の離反に遭遇したり、会社の事業そのものがピンチになったりします。倒産や失業を経験した人もいます。

 しかし、共通するのは、その後、また反転をしていることなんですね。またグッとラインが上向くのです。しかも、その落ち込みが深ければ深いほど、急激に反転し、今度は、「ゼロ」を飛び越して、「+80」とか「+100」など高い位置に到達します。

 メディアに登場して賞賛を浴びるキラキラしている女性はラッキーな人たちで、チャンスだけが訪れると思われがちだけれど、決してそんなことはありません。

 そういう女性たちも失敗します。いや、普通の女性より数多く失敗しています。しかも、その度合いも周りの人に与えるインパクトもより深刻です。しかし、そこからリベンジできる女性たちであるということなんですね。失敗やピンチ、逆境といわれる局面は誰にでも訪れますが、振る舞い方によって、これもまたその後の人生が大きく違ってくるのだなと思いました。

「順調なときなんてつまらないわよ。逆境やピンチがいいわ。私はピンチが大好きなの」

 冒頭に紹介したITベンチャー企業の女性社長は、その言葉の意味するところをこう説明してくれました。ビジネスで順調なとき――例えば商品がよく売れたり、仕事の依頼が続いたりするときは、そこから学ぶべきことは案外少ない。しかし、ピンチになったとき――例えば商品が売れず、予算や前年の売上を下回ってしまった、事業が赤字になってしまったときこそ、学ぶチャンスなのだというのです。

 なぜ売れなかったか。競合商品と比べてどこの魅力がなかったのか。ターゲットのニーズと合わなかった? 価格が高過ぎた? タイミングが早過ぎた?

 何がこのピンチを招いたのか。それを客観的に分析する。そしてその原因が分かれば、既にこっちのもの。その原因を取り除いたり、解決したりする施策を打てばよいのですから。失敗することによって、いつもは気付かなかった事業や組織の課題が分かるのだから、それを改善する好機となるということなのです。

次は絶対、打ってやる! (C) PIXTA


失敗すると他人のせいにするか自分の運命を呪うか

 失敗やピンチが生じると、「これは上司(または部下)のせい」「環境が悪かっただけ」と誰かに責任を負わせがちです。そのつらさから一刻も早く逃げ出したくて目をそらしがちです。私も多分にそういうところあります。時には、「ああ、私ってなんてかわいそうなんだろう」と「悲劇のヒロイン」ぶったりします。または、前回も書きましたが、「だから自分はダメ、何をやってもうまくいかない。全部自分が悪いのよ……」と無限の自虐ループに陥ります。どちらも失敗から目をそらして逃げていることに変わりないですね。

 女性と男性とでは、失敗に対する振る舞い方が違うなと思った経験があります。ある会社の女性管理職たちと打ち合わせをしていたときのことです。

「予算を達成できないと落ち込みますよね、嫌になりますよね」
「そうですよね。夜も眠れなくなるくらい悩みますよね」

 何かの拍子で「予算達成」の話になりました。決算期が近づいていた時期だったのかもしれません。そのとき、同席した男性が次にこのようなことを言ったのです。

 「え? 予算を達成できない? そんなことで悩むんですか? 私なんて入社以来一度たりとも予算を達成したことありませんよ」

 しかも、「So What? (それが何か?)」という口ぶりでした。

 「え、そうなんですか?」とその女性管理職は聞き返します。私も心の中で「マジ?」と思いました。女性二人で目を見合わせました。

 その男性は決して仕事ができない人ではありません。いや、ある会社の本部長級のポストにいますから、仕事ができるということは証明されています。だから、予算を達成したことは一度もないという話が本当だとしても、前年比は高いレベルで達成し続けたに違いありません。しかし、予算を達成しなくても悩まないんですね。それは、予算未達に対して何もしないという意味ではなく、未達の原因は分析するけれど、「さあ、分かった。じゃあ、次にいこう、次年度はガンバロウ」という切り替えが早いということです。

 それに対して、女性陣のほうは、「なぜ、私はできないの?」「なぜ、自分はダメなの!」と自分を責め続ける。「自責の念」にかられて、自分の運命を呪うレベルまでいってしまいそうな雰囲気なのです。

ピンチとは悪い出来事ではなく、むしろチャンス

 でも、そういう態度では、人生は何も変わらない、その後も好転しないということなんですね。失敗したりすると心が折れてしまいそうになりますが、そこはグッとコラえて、冷静な頭で、失敗やピンチを客観視してそれを招いた原因を明らかにするということが必要なのです。

 高橋俊介教授は、女性たちのキャリアを分析してこう指摘しました。

 「成功する人というのは、失敗しない人ではないんですね。失敗からきちんと学ぶ人が成功するのです。失敗からどれだけ学んだかが重要です。失敗はするけれど、軌道修正をする。しかも軌道修正が早いんですね。また失敗はしますが、同じ失敗はしない。そこで学ぶわけです。失敗から学んで成長するというプロセスが重要です。失敗から学んで自分を変容させることができるかどうかでその後が違ってきます」

 人生、いいことばかり起こってほしいと願います。でも、そんなことはありえません。自分が起こってほしくないと思う事態にもたくさん遭遇します。そのときに他責に逃げるのではなく、自分の運命を呪うのでもなく、そこから学ぼうとすること、そして自分を変えることが大切なことであり、自己変容をできる女性が大きな成果を上げているのです。

「ピンチはチャンスである」

 よくいわれる言葉ではありますが、それは、ピンチのときにこそいろいろ学ぶことができる、自分を変えることができる、学びの場にも成長の糧にもなるということなんですね。私たち女性は、失敗、ピンチ、逆境、または人事考課のネガティブなフィードバックなど、そういうことに少しナイーブ過ぎないでしょうか。

よし、気持ち入れ替えてもう一度! と思えたら景色は変わる (C) PIXTA

 でも、失敗や挫折、ピンチを――本来は起こってほしくない出来事をそのように前向きに捉えることができたら、極論すると、この世界に、「悪い出来事」はなくなると思いませんか。自分の人生から、失敗やピンチ自体が消えると思いませんか。なぜなら、それは学びの場、自分が成長する好機なのですから。そう解釈を変えるとタフになれると思いませんか。挑戦すること、リスクを取ることに対するハードルが低くならないでしょうか。

 失敗することを恐れ、挑戦に尻込みしてしまう女性たちにお伝えしたいです。

 あなたが仕事で失敗しても(たいていの場合)たいしたことにはならない。会社にも特段影響はない。そう思えたら、どんどんいろんなことに挑戦できると思いませんか。だって、チャレンジしてたとえ失敗したとしても、それは悪い出来事ではない。そこから学んで自分を変えることができる好機なのですから。

文/麓幸子 写真/PIXTA


「仕事も私生活もなぜかうまくいく
 女性の習慣」
 著者:麓 幸子
 出版社:日経BP社
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Profile
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研マーケティング戦略研究所長
日経BP社執行役員。1984年筑波大学卒業。同年日経BP入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年日経BPヒット総合研究所長を経て現職。法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府研究企画委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書に『女性活躍の教科書』『就活生の親が今、知っておくべきこと』など多数

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日経ウーマンオンライン

2017/08/01掲載記事を転載
「ピンチに負けない強い人」が実践する失敗時の行動