号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由

号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由

2017/07/11

居心地いい職場を飛び出すと「自分に何が向くのか」が見つかる

 これをご覧になっているあなたはどんなお仕事をしていますか。
 入社何年目ですか。
 仕事は順調ですか。
 悩みはありますか。

皆さんは、仕事は順調ですか? (C) PIXTA

 今回から5回にわたり、キャリアを築く上で大切にしたいポイントを紹介します。何かのご参考になればと思います。よろしくお願いします。

 まず、自己紹介をします。私は1988年に創刊された「日経WOMAN」創刊メンバーで、日経WOMAN編集長を5年、発行人を2年務めて、現在は日経BP社で執行役員をしています。皆さんが読んでいる「日経ウーマンオンライン」は2009年にスタートしましたが、その初代編集長を務めました(毎日ご愛読ありがとうございます!)。

 私には息子と娘がいます。夫婦とも東北出身なので東京に実家がなく、仕事と育児の両立はまさに綱渡りの日々でしたが、それも今や昔。子どもたちは社会人となり、キャリアを歩み始めています。遠方で働いている20代の娘からは、よく、LINEで仕事の相談が送られてきます。その度に「大丈夫だから、心配しないで」「きっとうまくいくよ」と励ましたり、アドバイスしたりしています。私が若かった頃とは、だいぶ働く環境は違ってきましたが、働く女性の悩みは今も昔もそんなに変わらないなと思ったりします。

 日経WOMAN編集長から発行人に昇格した50歳のときに、法政大学大学院経営学研究科修士課程に入学しキャリアデザイン学修士となりました。現在も複数の学会に所属し研究活動をしています。この連載では、これまでの取材や自分の経験、また研究から得た知見などから、働く女性の皆さんに知っていただきたいことをお伝えしたいと思います。

ブルゾンちえみは正しい。まさに「女に生まれてよかった!」の時代

 さて、最初にお伝えしたいのは、「働く女性にとって今の時代はとてもラッキー!」ということです。まさに、今、ブレーク中の芸人ブルゾンちえみのフレーズ、そのまんま、「女に生まれてよかった!」と思います。

 30年以上、働く女性とその環境を見続けてきた私が断言します。働く女性にとって今は大きなチャンス! このチャンスをどんどん生かしていってほしいと思います。チャンスは長くは続きません。期限があるものです。よく、「幸運の女神は前髪しかない」といいますよね。後ろ髪はないから、通り過ぎたらもうつかめない。ここぞ! というときにチャンスをしっかりつかまないといけません。そして、今、チャンスはゴロゴロ転がっている、まさにあなたのすぐ横にある! と私はお伝えしたいのです。

 それはなぜでしょうか。皆さんもご存じの通り、昨年4月に女性活躍推進法ができました。これは女性活躍を成長戦略の中枢に置く政府の肝煎りでつくられた法律で、301人以上の企業は、女性活躍に関する数値目標を掲げ(例えば、2020年までに女性管理職比率20%にするなど)、それを実現するための行動計画を作って社内外に公表することが義務付けられました。17年5月現在で義務付けられた99.9%(つまりほぼ100%)の企業がそれに対応しているのです。あなたの企業が301人以上ならば必ずそれに対応しているはずです。

 私は企業の経営トップや人事担当役員など経営層に取材したり会ったりすることが多いのですが、業界問わず、「優秀な女性を採用したい」「女性を育成したい」「女性管理職に登用したい」という意欲はかつてないほど高まっています。こんなこと、日本の働く女性史上初めてではないでしょうか。

新しい部署に異動してくれないか? 昇進試験を受けてほしい

 あなたの周辺でも「女性活躍」でザワザワと騒がしくなっていませんか。

 「これまでと違う仕事をしてほしいんだけど」
 「新しい部署に異動してくれないか」
 「ぜひ、昇進試験を受けてほしい。君を管理職に登用しようと思う」

 そんなオファーがあなたのところにもやって来ていませんか。これぞあなたにとって大きなチャンス! だからどんどん受けていただきたいのです。

 こんなオファーがきたら、あなたはどんな気持ちになりますか。

 「え……新しい仕事? 違う部署に異動? 面倒くさいな。今のままでいいよ」
 「昇進しろ、管理職になれ? 冗談じゃない。大変そうだし、できるわけないし、なりたくもない」……なんて、思ってしまうと損をすることになります。

 これまで、日本の企業では、女性は一つの職場で同じ仕事に従事することが多かったと思います。たとえ、女性のほうから異動したいと願い出たとしても、これまでは、「キミはこの部署が合っているよ。ずっといたほうがいい。他の部署なんか行ったら、キミは潰されるよ」(by上司)なんて、訳の分からない理由で留め置かれることがよくありました。

 3年から5年で部署異動してさまざまな職務を経験することで、キャリアの幅を広げスキルを深めるのが、日本の企業の人材の育成パターンでした。ほとんどの男性はそのように育成されてきました。でも、女性はそうではありませんでした。それを改めて、いろいろな仕事を経験させて育成しよう、登用しようというのが、今のオファーにつながっています。

 新しい仕事や部署異動は大変ですよね。慣れないうちは苦労するでしょう。だったら、今の仕事、職場のほうが勝手も分かるし、居心地もいいので出たくないと思うかもしれません。

 でも、ある外資系企業の女性役員がこう言っていました。

 「カンファタブルな(居心地のいい)状況になったら、そこを出たほうがいい」と。

 私もまさに同意見です。

 居心地がいい状況というと一見よい状態のように思います。私生活であればそうかもしれません。しかし、仕事の場面では違うのです。それではキャリア形成上ではマイナスです。居心地がいい――つまりプレッシャーもストレスもない仕事であれば、自分の成長は望めないからです。そこにやりがいや達成感がないからです。自分が簡単にできる仕事しか与えられなければすぐに飽きてしまうでしょう。それはキャリアの停滞につながります。

不本意な部署の異動内示に号泣。しかしその後…

 ここで私のケースをお話しします。一つのサンプルケースとしてお読みください。

 自己紹介で、日経WOMANの創刊メンバーで、編集長、発行人をしていましたと書きましたが、そうすると、「ずっと日経WOMAN編集部にいたのかな」と思われたかもしれませんが、そうではありません。

 私も5年くらいでいろいろな部署の異動を繰り返し、日経WOMAN編集部にも4度くらい出たり入ったりしました。日経WOMANが創刊された年に最初の妊娠をし、それを当時の編集長に告げると主婦向けの編集部に異動となりました。数年後、日経WOMAN編集部に戻り、2人目を妊娠すると、また異動になりました。29歳のときでした。

 今度は月刊誌編集部ではなく、企業のパンフレットなどを作る企画出版部門に異動となりました。今だから言いますが、その内示を告げられた夜に私は号泣したことをよく覚えています。なぜなら雑誌記者になりたくてこの会社に入ったのに、そうではない部門に異動になったからです。抵抗がありました。

 でも、入社して33年たった今自分のキャリアを振り返ると、その部門への異動がとてもよかったことが分かります。その部署で記者ではできなかったいろいろなことを経験できたからです。担当の営業マン(当時は営業職のほとんどが男性でした)と一緒になってクライアント訪問し、企画をプレゼンをします。時には接待もあります。クライアントの要望を聞き、いいものを作るとまた仕事を頂くことができます。受注できると売上が増えます。みんなで努力してコストを抑えれば利益率が上がります……。これはみんなビジネスでは当たり前のことですね。でも、一生懸命取材していい記事を書くことが一番の目標であった記者時代では分からなかったビジネスの「イロハ」をそこで学べたのです。

 一方で、こんなことも感じました。「売上や原価などお金のことを考えるのは苦手だと思っていたけどそうでもないな」「営業は経験がなかったけれど案外好きかもしれない」。つまり、思ってもみなかった想定外の自分、新しい自分の可能性を知ることができたのです。

異動すると、社内のネットワークも広がり、見える世界が広がります (C) PIXTA

 私の場合、不本意だと思った部署でのビジネス経験がその後役に立ち、いろいろな場面で自分を助けてくれました。大きな財産となりました。ですから、想定外の自分、新しい自分の可能性に出合える人事異動はどんどん受けてほしいと思うのです。

新たな仕事や人に出合えるよう自分で仕掛けよう!

 思えば、私たち女性は、「私なんてダメ」「自分はこの程度の力しかない」「この仕事しかできない」というように、自分の可能性に蓋をして、やり過ごしてしまう傾向があるのではないでしょうか。

 また、自分の力を正確に見積もることが苦手で低く評価してしまうことが多いのではと思います(この心理的なワナについては別の回で紹介しますね)。このようなことをしていては、千載一遇のこの時代に、チャンスを逃すことにもなりかねません。

 自分がどんなことに向いているか、どんな力があるか(または育つか)は、いろんなことを経験しないと分かりません。ですから、臆せずにいろいろな経験をしていただきたいのです。新しい仕事に挑戦できる人事異動はあなたにとって大きなチャンスです。

 もし人事異動のチャンスがないなら、新たな仕事や人に出合えるように自分で仕掛けましょう。興味のあるポストで社内公募があったらエントリーしてみましょう。もうすぐ上期の人事面談という人も多いと思いますが、そのときに、「こういう仕事もしてみたい、挑戦させてほしい」と上司に意思を表明しましょう。異動希望を伝える機会があるならそれも活用しましょう。また、異動ではありませんが、社内横断プロジェクトとかタスクフォースとか社内で広く人を募るケースもあります。そういう機会も利用して手を挙げてみましょう。

 「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の受賞者など成功した数多くの女性を取材してきましたが、そのキャリアの転機、成功の起点が、「勇気を出して一歩踏み出した行為」だったというケースが多いのです。

 5月に出した私の新刊『仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣』でも、自ら行動することで成功した女性のケースを多く紹介しています。これも参考にして、あなたの周りにあるチャンスをしっかり生かしてほしいと思います。

文/麓幸子 写真/PIXTA

『仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣』


働く女性を30年取材してわかったこと。考え方を変えれば、行動と習慣が変わる。あなたの人生は、きっと変わる。豊富な実例と詳細なデータ、最新の理論で成功した女性たちの共通項をやさしく解説。すぐできる、90のチェック&アドバイス付き
著者 : 麓幸子、日経BP総研 マーケティング戦略研究所 編
出版 : 日経BP社
価格 : 1728円 (税込)
Profile
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研マーケティング戦略研究所長
日経BP社執行役員。1984年筑波大学卒業。同年日経BP入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年日経BPヒット総合研究所長を経て現職。法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府研究企画委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書に『女性活躍の教科書』『就活生の親が今、知っておくべきこと』など多数

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日経ウーマンオンライン

2017/07/11掲載記事を転載
号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由