BBC大井真理子 制約あるからこそ目標は「五輪」

BBC大井真理子 制約あるからこそ目標は「五輪」

2019/11/20

多くのヒットより数本のホームランを狙う。数十年かけて進んだBBCの改革、日本も変化の時

「思い切り働けない」という悩みに直面するママは少なくありません。シンガポールで働きながら妊娠・出産を経験し、BBCワールドニュースでキャスター・レポーターを務めている大井真理子さんは、いわゆるマミートラックをどう乗り越えたのでしょうか。

私から「報道」を取ったら、何が残る?

 「Who am I?」自分が自分自身じゃなくなっていくような気がして恐ろしくなった夜のことを、今もはっきり覚えている。

 2人目を妊娠中、娘をシンガポールに残し、1人で日本に出張していた時、毎週金曜日に送られてくる社内の求人メールに、数年前の私だったら「絶対に応募したい」と思う仕事が3つ掲載されていたのです。

 以前、それぞれ半年間ずつ短期転勤で勤務した、ニューヨーク経済特派員とロンドンキャスターの正式なポジション。そして娘を妊娠していなかったらチャレンジしたいと思っていたワシントンDC特派員。

 応募したい。

 でも、娘を出産後、子連れで出張したニューヨークとロンドンは、出産前に一人で勤務した時と同じ街とは思えませんでした。シンガポールと比べると国内での速報が多く、ワーママ記者には決して働きやすい環境ではない。ましてやシンガポールのようにヘルパーさんを雇えるわけでもありません。

 そしてアメリカで頻発する学校などでの銃撃事件のニュース。「私は果たしてアメリカで子どもを育てたいのか」と考えた時、私の答えはNoでした。

娘と二人でニューヨークに出張、モニターに写ったオフショット

 アメリカの首都ワシントンDCで記者として働くという長年の夢を、こんなにも簡単に諦められるのか。そんな自分に、自分自身が一番ショックでした。

 「報道が趣味」といつも言っていた私から「報道」を取ったら、一体何が残るのだろうか?

 「長女の美空や産まれてくる子の母親は私しかいない」。そう思っていても、これまでの「自分自身」が少しずつ失われていく気がしたのです。

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日経DUAL

2019/11/12掲載記事を転載