DUAL世代の時間を奪う! ブラック上司にご用心

DUAL世代の時間を奪う! ブラック上司にご用心

2019/08/09

【新連載スタート!】休日深夜のメール、ムダな会議、時短勤務への無理解……部下からの歩み寄りもブラック化を防ぐのに有効

育児を抱える部下に理解を示し、両立のための環境整備に努める「イクボス」と呼ばれるリーダーが増えています。一方で、ムダな資料作りや会議で部下に余計な仕事をさせ、現場を疲弊させる「ブラック上司」に悩まされている人も少なくありません。この連載では、ブラック上司に出会った場合の対処法や、自分自身が「ブラック上司化」しないためにはどうすればいいかを、識者への取材や、企業への取材などを通じて考えていきます。

66%が「ブラック上司に出会った経験あり」

 目的がはっきりしない資料作りや会議、深夜や休日に送られてくるメール……。パワハラ上司とまではいかないが、部下を振り回す迷惑な「ブラック上司」に出会ったことはないだろうか。日経DUALが実施したアンケートでは、回答者の実に66%が「ブラック上司に出会ったことがある」と答えた*。その一例を紹介すると――。

ブラック上司の例1:勤務時間外のメール送信

「勤務時間外のメールは社内で禁止になっているのに、退社後に部署の全員にメールを送り、『翌朝は早く出社して、研修に使う資料を各自印刷しておくように』と命じてきた上司。なぜもっと早く指示を出さないのか?とモヤモヤした」(41歳・女性・市場調査・専門職)

ブラック上司の例2:ムダに長い会議や打ち合わせ

「月例会議の冒頭で1時間話すのは恒例。終業時刻を過ぎても部下を自分の机の前に呼びつけて1時間くらい話している。方針説明や指導ではなく、内容のほとんどが根性論や、自分がいかに頑張ったかの自慢話なので、役に立たない」(49歳・女性・製造業・マーケティング)

ブラック上司の例3:時短勤務者への理解不足

「私が時短勤務ということが分かっているはずなのに、業務終了の少し前に仕事を振ってきて、いつまでにできるかを宣言させられる。処理しきれないので、家でこっそり仕事をしていると『遅くまで仕事をしてはいけない』と言われる。業務量がオーバーしているのだが、上司からのフォローは一切なし」(49歳・女性・情報・調査)

 これらの上司にはいずれも、「部下の時間を奪っている」という共通点がある。この「時間を奪う上司」こそが、子育てで多忙なDUAL世代にとって最もつらい相手だ。どのように対処すればいいのだろうか。

休日・深夜にメールを送ってくるブラック上司も


子育て中の上司もブラック化する可能性はある

 「子どもの送り迎えなどで忙しい子育て中の社員は、時間の使い方に関して特にセンシティブにならざるを得ません。ところが、それに気付かない無神経さから、部下に余計な仕事をさせたり、ダラダラ拘束したりして、貴重な時間を奪ってしまう上司は少なくない。当人にブラック行動の自覚がないだけに厄介です」。そう指摘するのは、マーサージャパンやカルチュア・コンビニエンス・クラブなど数々の企業の経営に携わり、リーダー育成に詳しいIndigo Blue代表取締役の柴田励司さんだ。

 ブラック化する傾向は、昇進が早い上司に多く見られるという。「仕事に対する優先順位が高く、率先して休日出勤や深夜残業をし、そんな自分の基準を他の人にも押し付けてしまいがちです。また、たとえ上司が同じ子育て世代の場合でも、理解されるとは限りません。『子育ての主役は母親で、父親はヘルプ』といった考え方を持つ上司だと、特に男性の部下に対して、育児より仕事を優先するのが当たり前、といった考えを押し付けてくる可能性があります」

 以下は、「時間を奪う上司」の行動の例をリスト化したもの。あなたの上司など、身近な人を思い浮かべてチェックしてみてほしい。ひとつでも当てはまったら、ブラック上司の可能性がある。すでに管理職の人は、自分自身の行動を振り返ってチェックしてみよう。

あなたの身近にも?「時間を奪うブラック上司」の行動

□深夜や休日に「確認したい点があるんだけど……」とメールを送ってくる
□平日に送ったメールの返事を、週末になってまとめて返してくる
□指示が1度で終わらず、途中でどんどん注文を追加してくる
□「ちょっといい?」と部下に声を掛け、30分以上拘束する
□目的がはっきりしない会議に同席させる
□PC操作などをヘルプデスクのように聞いてくる
□事前説明もなく、その日の夜の会食に同席させようとする
□率先して休日出勤をしている

柴田さんの著書『もしかしてブラック上司?』(ぱる出版)をもとに編集部で作成
緊急のメール以外はスルーする選択肢も

 柴田さんによれば、ブラック上司の代表的な行動が、休日や深夜などの「勤務時間外のメール送信」だという。最近では多くの企業で、自宅や外出先でもリアルタイムでメールをチェックできる環境が整いつつある。「上司は『翌日や週明けに読んでもらえばいい』というつもりで送っているのかもしれないが、優秀な部下であるほど『夜間や休日もメールをチェックし、来たら即レスをしなければ』と身構えてしまい、常に拘束されているような気分になるのです」

 迷惑な行動ではあるものの、真正面から抗議をすると角が立つ。どう対応するのが有効なのだろうか?

 「休日のメールは部下の時間を奪うブラック行動だということを、さりげなく気付かせるためには、『緊急性を問うこと』が有効です。明らかに緊急なメールの場合はすぐに返信すべきですが、それ以外のメールに対しては、あえて返信しないか、余裕があれば『すみません、こちらの案件ですが、緊急でしたでしょうか?』と返信してみる。それを何度か繰り返すことにより、『緊急性がないのに深夜や休日にメールすることは非常識な行為』だとにおわせることができます」

 また、あらかじめ「すみませんが、夜間や休日のメールはチェックできません」と伝えておき、「急には対応できませんので、次回からもう少し早くご指示いただけると、より的確に対処できると思います」などと、上司に対して改善策を提案してみるのも手だ。

 すでに管理職や現場のリーダーとして働く人は、「もしも休日や深夜にメールを送りたくなったら、緊急案件以外は下書きだけを保存するに留めて、送信ボタンを押すのは翌日や週明けの出勤後にするといいでしょう。それだけで、部下に余計なストレスを与えずに済みますよ」と、柴田さんはアドバイスする。

次世代リーダーの育成などを手掛ける柴田励司さん


「5W1H」で、部下が上司の思考を整理する

 「メールに次いで、ブラック行動が生まれやすいポイントが『資料作り』と『会議・打ち合わせ』です。例えば、上司から作成を頼まれた資料に、後からどんどん注文が加えられていき、作業が延々と続いてしまう。これは、上司がアウトプットのイメージを描けていないことや、指示内容を整理して伝えるという基本的なスキルが欠けていることが原因です」

 とはいえ、上司の能力不足を嘆いても、事態は解決しない。部下のほうから、資料の期限や目的を聞いて必要事項を整理してあげよう。

 「その際には、ビジネスの基本である“5W1H”のチェックを用いることです。Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)、という項目に照らし合わせて、質問を投げかけて確認することで、アウトプットのイメージを共有でき、ムダな作業を防ぐことができます」

 また、上司から「ちょっといい?」と声を掛けられ、そのままズルズルと長時間拘束される、というのもビジネスではよくあるシーン。PC作業などで分からないことをヘルプデスクのように部下に聞いてくる上司も、困りものだ。「すみませんが、今〇〇で手いっぱいです。△時から□分間でしたら時間が取れます」「〇時には帰らなくてはいけないので、それまででしたら大丈夫です」などと、あらかじめ終わりの時間を伝えることで、上司に「部下の時間にも限りがある」ということを認識してもらいやすくなるだろう。

 とはいえ、上司の側に必ずしも悪意があるとは限らない。「露骨なパワハラ上司は別ですが、ブラック上司と言われる人の多くは、仕事に一生懸命で、悪気がない人が大半です。上司自身も忙しく、部下の一人ひとりの状況をきちんと把握する余裕がないことが、ブラック化する一因にもなっているのです」と、柴田さんは指摘する。

 上司のブラック化を防ぐには、部下のほうからも、自分の状況をきちんと伝え、理解を促す努力をすることが大切だ。育児によって労働時間にどの程度制限があるのか、どのようなスタンスで仕事と育児を両立していきたいか、そのために仕事の進め方のどんな点を改善してほしいかを、具体的に提案してみるのも1つの解決策。一人で行動するのが難しければ同僚に協力を仰いだり、どうしても困った場合は人事・労務担当や、社内の相談窓口に相談してみたりする方法もある。

 「上司にとって最も怖いのは、優秀な部下の心が離れていくこと。部下がどんなことに困っているかを知り、そのための道筋が分かれば、上司も少しずつ行動を改善しようと思うはずです」と、柴田さんはアドバイスする。

 柴田さんは他にも、保身のためにコロコロ意見を変える「風見鶏上司」や、上への態度と部下への態度が違う「ヒラメ上司」などの存在を指摘。次回は、こうした上司への対処法を紹介します。

*2019年7月から実施中のアンケートの中間集計。回答者39人中26人が、ブラック上司に出会ったことがあると回答
柴田励司
Indigo Blue代表取締役。1962年東京都生まれ。85年上智大学文学部卒業後、京王プラザホテル入社。在オランダ大使館出向、京王プラザホテル人事部を経て、95年現マーサージャパン入社。2000年、38歳で日本法人社長に就任。その後、キャドセンター社長、デジタルハリウッド社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任し、現職に至る。著書に『もしかしてブラック上司?』(ぱる出版)、『入社1年目からの仕事の流儀』(大和書房)ほか。

文/西尾英子 写真/洞澤佐智子、PIXTA

Provider

日経DUAL

2019/08/02掲載記事を転載
DUAL世代の時間を奪う! ブラック上司にご用心