中林美恵子 バイデン、実力派マイノリティー採用の背景

中林美恵子 バイデン、実力派マイノリティー採用の背景

2021/01/27

政治学者・中林美恵子さんインタビュー【上】客寄せパンダ的な人事は一切なし。実力派のマイノリティーが集結したバイデン政権

2021年1月20日にジョー・バイデン氏が米国大統領に就任し、バイデン政権が発足。重要ポストに女性や黒人を置くなど、多様な人材を積極起用したことでも大きな注目を集めましたが、米国政治を専門とする早稲田大学教授の中林美恵子さんは、新政権や米国女性の政治参加、それが日本に与える影響をどのように見ているのでしょうか。【上】では、バイデン氏がここまで多様性を重視し実力派を集めた理由について聞きました。
※この記事は、2020年12月中旬に行ったインタビューを基に作成しました。

日経xwoman編集部(以下、――) 2020年11月3日に実施された米国大統領選挙では、民主党指名候補のジョー・バイデン氏が勝利しました。その後、バイデン政権の閣僚人事が徐々に発表されています。この顔ぶれの感想は?

中林美恵子さん(以下、中林) 実務にたけた、専門性の高い人が集まった布陣ですね。女性も多いですし、運輸長官には同性愛者であることを公表しているピート・ブティジェッジ氏を指名しています。「ただ有名だから」というスター人材がいないのが特徴。地味な人材が多いですが、誰をとってもかなりのテクノクラート(技術官僚的)と言えるでしょう。

人事に多様性を求める党内左派からの圧力も

―― ロイド・オースティン氏は黒人として初の国防長官に。内務長官のデブ・ハーランド氏は女性で、ネーティブ・アメリカンです。これほどまでにマイノリティーが閣僚入りすることは予想されていましたか?

黒人として初の国防長官となるロイド・オースティン氏(左)。ネーティブ・アメリカンの内務長官のデブ・ハーランド氏(中央)。LGBTQ公表者として初の閣僚となったピート・ブティジェッジ氏(右)。(写真:AFP/アフロ)

中林 マイノリティーを指名するのがバイデン氏らしさとも言えますし、「そうせざるを得なかった」という事情もあります。そもそも、新型コロナウイルスの流行が起きる前はトランプ政権は強かったのです。コロナ禍前は景気が良かったこともあり、敗因の一つはコロナによる混乱とも言えます。「2期目に当選しない人はほとんどいない」という米大統領。戦後に現職で再選を果たせなかったのはこれまで3人だけでしたが、今回の選挙結果を受け、トランプ氏はその不名誉な4人目になってしまいました。

―― バイデン氏がマイノリティーを指名せざるを得なかった事情とは?

中林 トランプ氏との接戦を制するに当たって、女性や黒人などのマイノリティーの票を集めたことは、とても大きかった。2016年にヒラリー・クリントン氏に投票しなかった民主党の人も、今回バイデン氏には投票しました。例えば、クリントン氏のときは黒人層の投票率が下がり、思ったほどの票が入りませんでしたが、今回バイデン氏は黒人層から十分に支持を得ました。そのため、「マイノリティーである有権者の気持ちに報いなければならない」というバイデン氏自身の気持ちはとても強かったはずです。

 また、中道派のバイデン氏に対して左派のバーニー・サンダース氏が若者から熱狂的な支持を得るなど、民主党自体が割れている状況のなか、「マイノリティーを採用しなさい」と、人事に多様性を求める党内左派からの圧力もありました。

ここから先は日経WOMANキャリアへの
会員登録(無料)が必要です。

Provider

日経DUAL

2021/01/20掲載記事を転載