100万本売れたカラーシャープペン ユニカラー

100万本売れたカラーシャープペン ユニカラー

2019/08/09

カラフルに書きたい女性や学生の心をくすぐる使い勝手を追求

三菱鉛筆のカラー芯専用のシャープペンシル「uni Color(ユニカラー)」。発売から5カ月で100万本のヒットを記録し、カラーシャープペンシル市場を切り拓いている。勉強する際にシャープペンシルをよく使う学生や、手帳に親しむ働く女性たちを中心に支持を集めるこのアイテム。カラーシャープペンというニッチな筆記具がなぜこれほど人気を集めたのか、商品開発部の甲斐千春さんに話を聞いた。

ライバルがほぼゼロだったカラーシャープペン

 三菱鉛筆の「uni Color(ユニカラー)」は、カラー芯専用のシャープペンシル。黒い芯より硬度がやわらかいカラー芯をやさしくつかみ、傷つけない設計がされているのが大きな特徴だ。

 これまでもカラー芯は、絵を描く人やシャープペンシル愛用者に親しまれてきた定番商品だ。ユーザーは自身が持つシャープペンシルにカラー芯を入れて使っていたが、カラー芯は黒芯に比べて折れやすいという課題があった。また、シャープペンに入れてしまうと中にどのカラーの芯が入っているかわからない。そこで商品開発部で、自身もカラーシャープの愛用者という甲斐さんは「カラー芯専用のシャープペンシルを開発しよう」と思い至る。「カラー芯専用のシャープペンは他メーカーからもほとんど発売されていなかったので、ニーズはあると考えました」

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(1)カラー芯専用のシャープペンという他にない商品を思いついた

 さらに甲斐さんが考えたのは「カラーシャープペンシルはもっと多くの人に使ってもらえる可能性があるのではないか」ということ。同社のカラーシャープペンシルは書き損じを消しゴムで消せることや、ボールペンでは出せない濃淡の味が出せることも魅力だ。手帳に書き込んだり、ノートを取ったりする際にも使い勝手がいい。そこで、幅広い層に訴求するために試行錯誤を重ねた。

 まずこだわったのは、価格を抑えること。ユニカラーは、1本税抜き価格100円。7色展開していて、7本すべてそろえても700円だ。


Twitterや動画で簡単・かわいい使い方を提案

 低価格にこだわったが、使いやすさは譲れない。「コストと機能を両立させること」には頭を悩ませたという。「低価格の商品であれば、使用する部品なども限られてしまう。そこで別フロアにある技術面から商品の設計を担当する研究開発部門に出向いては、何度も話し合いを重ね、コストをできるだけ抑えて使い勝手のいい商品ができあがるよう試行錯誤を続けました」

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(2)多くの人に手に取ってもらえるよう低価格にこだわった
(3)開発担当者と顔を突き合わせて、ものづくりを続ける

 また、デザインも工夫した。0.5mm芯向けのユニカラーは、学生受けのよい、キラキラしたクリアのカラーにした。ユニカラー本体の色で、どのカラー芯が入っているか一目で分かる。「かわいいデザインにしたいけれど、かわいくしすぎると大人は手に取りにくい。男女に限らずいろいろな人に使ってほしいからもう少し大きくした方がいいか悩むけれど、できるだけコンパクトにしたい。そのバランスに悩みました。ですが、かわいくカラフルに書きたいと思うのはやっぱり若い女性が多いので、思い切って若い女性を意識したデザインにしました」

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(4)若い女性を意識したデザインで訴求

 発売のタイミングでの認知拡大にも力を入れた。商品に自信はあったが、カラー芯はボールペンや黒芯のシャープペンシルに比べるとニッチな市場。発売と同時に、Twitterでの情報発信や、メインユーザーである学生に人気のYouTuberとのコラボキャンペーンで、動画を配信してもらうなどの施策を実施した。ウエブサイトでは、ユニカラーをボールペンや蛍光ペンと組み合わせて使う方法を動画で紹介する「おしゃレシピ」を公開。手軽さをアピールしながら、ノートをかわいくカラフルに仕上げるポイントを提案した。


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(5)商品の魅力を動画で分かりやすく伝える

 「ただ、認知という点ではまだまだ発展途上。特にかわいいものを持ちたいとか、新しいものを試してみようという冒険心が一番ある学生さんにもっと知ってもらいたい。これからも商品をアピールする施策を続けてきたいですね」

顔を合わせたコミュニケーションを最優先に

 入社以来、約20年商品開発の第一線で活躍してきたという甲斐さんは、2度の産休・育休を経験。現在は時短勤務中だ。ユニカラーの開発も、限られた労働時間の中で効率的に働き、進めていった。周囲は時短勤務に理解があり、早く退社した後のフォローも快く引き受けてくれるという。

 「周りは大丈夫だよと言ってくれるので予定通りに帰ることができていますが、あとは自分との折り合いですね。打ち合わせも最後までいたいし、夕方になって仕事がのってくることもある。でも以前、トラブル対応のために残っていたら、仕事も最後までやり切れず子どものお迎えも間に合わなくて、どちらも中途半端になったことがあって(笑)。それからは、帰るときは帰ると割り切ろうと決めました」

 オフィスにいられる時間が限られる中で甲斐さんが最も大切にしているのは、顔と顔を合わせたコミュニケーションだ。チーム内で意見が食い違ったときも、周りのモチベーションを下げないことを意識する。同僚や部下が遠慮なく意見を入れる雰囲気づくりも欠かさない。別フロアの部署とのやりとりも電話で済ませずに、直接会いに行って話をする。「顔を見合わせれば、こちらが言ったことへの反応を見ながら話が進められるんです。話がかみ合っていないときも、調整がうまくいきます」。特にユニカラーの開発では、コストを抑えていかに使いやすい商品を生み出すか、開発チームとの膝を突き合わせた話し合いが不可欠だったという。

 会社にいる間は、人が関わる仕事などアウトプットの作業に注力する一方、通勤中や会社を出た後の時間は、アイデアや決断について考えるインプットに充てている。「商品を作る仕事は、自分の納得感との戦いでもあります。ここまででいいと思えば、それで終わりにすることもできる。でも私は、商品を生み出すためにはこだわりが重要だと思っています。これ以上なかったという自分のベストな判断に行き着くまで考えたい。ひとりで悩む時間も大事なので、それは会社の外でするようにしています」

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(6)ベストと思える判断に行き着くまで悩み続ける

 甲斐さんは、自身が開発に携わった筆記具を仕事道具として持ち歩いている。「もちろん使い勝手もいいんですが、自分が作った商品を使っていると励みになりますね。商品の発売日が決まると、時間がなくて追い込まれるし、しんどいと思うこともあります。でも実際に商品が発売されてヒットすると、やっぱり頑張って良かったなと思いますね」

ユニカラー ヒットの裏側
(1)カラー芯専用のシャープペンという他にない商品を思いついた
(2)多くの人に手に取ってもらえるよう低価格にこだわった
(3)開発担当者と顔を突き合わせて、ものづくりを続ける
(4)若い女性を意識したデザインで訴求
(5)商品の魅力を動画で分かりやすく伝える
(6)ベストと思える判断に行き着くまで悩み続ける

取材・文/川辺美紀 構成/飯泉 梓(日経doors編集部) 写真/小野さやか

Provider

日経doors

2019/07/29掲載記事を転載
100万本売れたカラーシャープペン ユニカラー