「ゆるい副業」が主流に? 収入以上のメリットとは

「ゆるい副業」が主流に? 収入以上のメリットとは

2017/09/26

副業が「原則容認」に 私たちのキャリアはどう変化する?

 副業に関する読者アンケートを行ったところ、副業経験者は約6割。その一方で、副業未経験者が踏み出せない理由の第一位は、就業規則で禁止されているからではなく、「何から始めたらいいのか分からない」というものでした。副業をはじめ、働き方のトレンドに詳しい求人サイト「エン転職」編集長の岡田康豊さんに、これからの「副業」という働き方について伺いました。

 【副業にまつわる読者アンケート記事】
「読者6割が副業経験者 平均月5万円稼ぐ 何してる?」
「読者がやってみたい副業トップ10 人気の仕事は」

副業がもたらす収入以上のメリットとは?

 副業経験者・未経験者に分けて行った読者アンケートでは、「副業をしたことがある」人は60.3%、副業未経験者でも「興味がある」と答えた人は79.6%に上りました。

 「収入のため」「本当にしたいことを副業で実現するため」「気分転換のため」など、副業を始めた理由はさまざまでしたが、実際に副業を体験した人が得たものは「収入」だけではなかったようです。

 副業経験者に「副業をする前と後で、変化はありましたか?」という質問をしたところ、興味深い答えがいくつも集まりました。

◆自己管理ができるようになった

「仕事のやり忘れを防ぐため、メモに書き出す、実施する日時を決める、などをルーティンワークにした。それを仕事にも取り入れた」(副業:アンケートモニター/30歳、会社員、製造)

「手帳を常に使うようになり、自分の中のタイムスケジュールを考えるようになった。以前は使うのに抵抗があったLINEでのやり取りが増えた」(副業:セミナー講師/35歳、契約社員、学術研究・技術サービス)

◆時間の使い方を工夫するように

「余暇を副業に充てているため、本業でも効率よく仕事を片づけて余暇を増やせるようになった」(副業:アルバイト/25歳、会社員、卸売・流通)

「時間を効率よく使えるようになった。本業ではパソコンに向かっていることが多いので無表情なまま仕事をしていたが、接客のアルバイトをすることで明るい気持ちになり、心に余裕ができた」(副業:飲食店でのアルバイト/27歳、会社員、学術研究・技術サービス)

本業と副業の両立には時間管理が必須です (C) PIXTA

「手帳をフル活用したり、自分の時間の使い方やお金の使い方を振り返ったりするようになった。本業と副業までの空き時間が限られていたため、集中して勉強に取り組むことができた。家事も仕事も、いつの間にか仕事をこなすスピードが上がっていた」(副業:アルバイト/27歳、派遣社員、情報通信)

◆生活が充実

「本業だと初心を忘れがちだが、副業の新しい職場で一から教わることで初心を学んだり、本業で嫌な気分になったときに息抜きができたりした。また、反対に今の本業にやりがいを感じることもできた」(副業:アルバイト他/33歳、会社員、不動産)

「趣味に使えるお金が増え、人生が豊かになった」(副業:アンケートモニター/27歳、会社員、建設)

「自分で考え、発信した情報が誰かの役に立ち、評価され、対価を得られるのだと分かった。やればできると自分に自信がついた」(副業:アフィリエイト/28歳、パート・アルバイト、学術研究・技術サービス)

時代は副業「原則、容認」へ

 他にも「お金を大切にするようになり、入出金を細かく管理するようになった」「本業の人間関係なんて一部の狭い世界だと思え、心がおおらかになった」といった変化を感じた人もいるようです。

 こうした「収入以外の効果」こそが副業のメリットなのだと、働き方のトレンドに詳しい求人サイト「エン転職」編集長の岡田康豊さんは言います。

 「副業が注目されたのは、景気が上向き始めた2012年ごろから。背景には、それまで『原則、副業禁止』だった政府の考えが、『原則、容認』へと変わってきたことが挙げられます。なぜなら、少子高齢化が進み、60歳で定年し、退職金をもらって悠々自適の生活を送るという昭和のモデルケースが破綻しつつあるからです。

 寿命が延び、年金の受給年齢も高くなり、生涯現役で働き続ける必要が出てきました。女性も長く働くことを前提にしたキャリア形成が求められるので、そのためにも副業がもたらすメリットは大きいと思います」(岡田さん)

副業は「ゆるく始める」のがいい

 長寿化が進み、私たちは「人生100年時代」ともいわれる新たなステージに突入します。そこでキャリア形成に役立つのが副業……とはいえ、本業と副業、二つの仕事を持つのは大変ですよね。そこで岡田さんは、「ゆるく始める副業」を勧めます。

 「最初から『生涯にわたるキャリアを形成しなくては』と意気込んでしまうと、ハードルが高くなってしまいます。まずは自分が興味のある分野で、複数のコミュニティーに属して働いてみるとよいと思います。最近はプロボノといって、職務上の専門知識や知見を生かして社会貢献する動きも盛んです」(岡田さん)

 この「最初の一歩」を踏み出すとき、あくまで「仕事」として始めるのがいいそうです。セミナーや勉強会とは違い、仕事とは対価をもらって働くもの。おのずと働くモチベーションや、取り組む姿勢も真摯になり、得られるものが違うからです。ただ、副業が就業規則で禁止されている場合も多いので、「まずは自社の規定がどうなっているかを確認することが大切」だと言います。

 さらに、複数のコミュニティーに属していた経験は、長く働き続ける上で大いに役立つそう。身近な人の例として、岡田さんは自分の母親のエピソードを聞かせてくれました。

 歯科衛生士として働き、65歳で定年に。手に職はあるものの、70歳を過ぎると求人自体が少なく、実家で一人暮らしをされていたそう。ところが、家にいると近所の人からお茶を飲みに誘われるようになり、楽しい時間を過ごしながらも、それだけで時間をやり過ごすことに虚しさを感じ始めたそうです。

 「母はずっと働いてきたので、『仕事をしていない自分』に違和感があったんですね。その後、仕事が見つかり、契約社員として働き始めました。

 定年後の仕事ロスは男性のものと思われがちですが、女性にも起こるものです。特に女性のほうが長寿ですから、高齢になってからの一人暮らしが長く続くかもしれません。そんなときに副業があったり、会社以外のコミュニティーがあったりすると、自分の居場所が見つかって救われることもあると思います」(岡田さん)

人生100年時代、副業が将来の財産になるかも (C) PIXTA


収入アップが目的なら長期目線で考えて

 一方で、注意してほしい点もあるといいます。「副業=収入アップ」と考えがちですが、「むしろ収入目的の副業はどこかで破綻する」と岡田さんは警告します。

 本業の他に副業の時間を取るわけですから、当然、本業に専念していたときより働く時間は長くなります。そのときに、副業の目的が「収入のみ」だと、結局は長時間労働となり、モチベーションが保てなくなったり、場合によっては心身ともに疲弊してしまうことも。

 「あくまでも本業に支障のない範囲で行うこと、が原則です。 さらに、長期目線で考えると、時給1000円前後のアルバイトを週2~3回して月に数万円の副収入を得るよりも、本業でスキルアップ・キャリアアップして給与を上げたほうが収入アップの道としては堅実です」(岡田さん)

たった一つの視点がキャリアを広げる

 副業をするときは、「常に『本業にどう生かせるか』という視点を持つようにすると、本業・副業ともに活性化される」と岡田さん。例えば、週に一度のアルバイトの接客業を「コミュニケーションスキル」という視点で捉えれば、本業が接客業でなくても十分に生かすことができます。

 日経ウーマンオンラインの読者アンケートでは、副業経験者・未経験者共に「時間の融通が利く」「空き時間を充てられる」という点が重視されていましたが、たとえその副業を選んだ理由が「時間の都合がつきやすいから」であったとしても、視点の持ち方次第でいくらでもキャリアアップにつなげられる、ということです。

 私たちのキャリアを広げるきっかけになるかもしれない「副業」。とはいえ、今はまだ日本で副業を推進・容認している企業はとても少なく、2割程度(※記事末「参考リンク」を参照)だといわれています。企業には就業規則や守秘義務があり、副業で社員の労働時間が増えることや、他社への情報漏洩の対策などが懸念点として挙がっています。

 「就業規則などの改定は、政府の動きもあり、『まさにこれから』という状態。今は『副業』という呼び方をしていますが、将来的には複数のコミュニティーに属し、複数の業務をこなす『複業』という働き方が主流になるのではないでしょうか」(岡田さん)

 次回からは、そんな「複業」に率先して取り組む企業を訪問し、「イマドキ副業=複業」の実態をレポートします。

文/三浦香代子 写真/PIXTA

■参考リンク
「兼業・副業に対する企業の意識調査」(2017年 リクルートキャリア)

Provider

日経ウーマンオンライン

2017/09/26掲載記事を転載
「ゆるい副業」が主流に? 収入以上のメリットとは