貯蓄2200万円、400万円の読者 それぞれの幸せ

貯蓄2200万円、400万円の読者 それぞれの幸せ

2018/06/29

「お金があっても充実はない」「幸福だけど、安心はない」

 「貯蓄は多ければ多いほうが、幸福度が高いのでは?」と考える人も多いのではないでしょうか。ところが、そうとも限らないようです。ある女性は、貯蓄が2200万円で人生幸福度が50点、もう一方の女性は、貯蓄が400万円で人生幸福度が90点。そして、金額と点数に差がありますが、二人にはある共通点がありました。

 今回ご登場いただくのはお二人。どちらも一人暮らしで、Mさんは貯蓄総額が2200万円・人生幸福度が50点、Tさんは貯蓄総額が400万円・人生幸福度が90点。考え方や背景をじっくり伺いながら、貯蓄と幸福度の関係について探ってみました。

貯蓄総額が2200万円で、人生幸福度が50点のMさんMさん(32歳) 独身、一人暮らし
仕事:IT関連・企画
手取り年収:500万円
資産総額:2200万円
人生幸福度:50点

 現在2200万円の貯蓄があるMさん(32歳)は、新卒時は貯蓄が0円だったそう。

 「学生時代に一人暮らしをしていて、結構ギリギリな生活でした(笑)。働き始めてからは奨学金返済があり、新入社員時代はお金を切り詰めて奨学金の繰り上げ返済に回し、1円でも多く返済し貯金をしようとがむしゃらでした。でも、そのおかげで5年ほどで奨学金は完済。奨学金返済がなくなったのでお金にゆとりはできましたが、出費を増やすことなく、低い生活コストのままでいこうと思い、極端なぜいたくをしないように気を付けました」(Mさん)

 当初は毎日家計簿を付けていましたが、面倒になりやめてしまったMさん。今はエクセル管理に変更し、費目ごとに予算をざっくり設定。1カ月で集計して予算内に収まればグリーン、予算オ-バーならレッド、中間ならイエローと色分けをして、イエローとレッドの場合は、振り返りをして翌月に改善するようにしていきました。すると、みるみる貯まるようになったのです。「家計簿を付けるだけでは効果があまりなく、振り返りをすることが大事だと痛感しました」(Mさん)

 でも、ふと振り返ってみたら「楽しい」と感じる思い出がなかったとMさんは話します。「奨学金を返済していた頃は、お金を貯めるために、我慢して、耐えて、つらい思いをして……そんな思い出ばかり」。Mさんは、せっかく頑張って奨学金を完済したんだから、もっと自分を楽しませてあげたいと思い、大好きな舞台観賞やスイーツ代だけは惜しまないようにしました。

 「舞台は、多い時は月に5回行くこともあって、演目次第では地方公演に行くこともあります。非日常をナマで3時間程度味わえるというのは、何物にも代え難い経験ですね。

 また、スイーツも大好きで、カフェ巡りをしています。カフェのおしゃれな内装やサーブをしてもらう雰囲気というのは一人暮らしでは味わえませんから(笑)。友人と夜に飲みにいくよりも、休日のアフターヌーンティーや平日夜のスイーツビュッフェを堪能しています。飲み会の費用をスイーツ代に回していると考えると、満足度は高いのに安上がりです」(Mさん)

 すると、日々の満足度が高まり、貯蓄も楽しくできるようになったそうです。

貯蓄が500万円を超えて、ふと気づいた

 そうして、資産が2200万円に到達したMさん。既に投資もスタートしていて、投資信託が1200万円程度、預貯金が1000万円程度だそう。ところが、合計2200万円もの資産自体は、人生の幸福には直結していないと断言します。

 「貯蓄が、ある程度まとまった額の500万円くらいになったときに、『貯蓄額と幸福は比例しない』と気付きました。いくら貯めても心配が減るわけではなかったんですよね」とMさん。

 現在の人生幸福度は、まだ50点だというMさん。「貯蓄があるからといって、心の平穏が保たれているわけではありません。これから収入をもっと増やして自分ができる範囲で将来に備えていきたいし、また、貯め込む一方ではなく生活をもっと楽しんでいきたい。貯蓄は単に持っているだけでは価値はなく、何かに使って初めて効果が発揮できると思います。生きているうちに使って、お金の価値を感じていきたいです」

 自分は何にお金を使うと幸福を感じるのかを、しっかり分かっているMさん。今はまだ50点ですが、「これから収入口を増やして、そのお金は人生を楽しむために使っていきたい」とのこと。残りの50点は「伸びしろ」だと話してくれました。

400万円で人生幸福度が90点のTさんTさん(39歳) 独身、一人暮らし
手取り年収:300万円
資産総額:400万円
人生幸福度:90点

 一方、貯蓄が400万円で、人生幸福度が90点というTさん(39歳)は、フリーランスの絵画講師をしています。

 「今の預貯金は100万円台後半で、投資をしている分を合わせて、資産総額は400万円くらいです。新卒で立ち仕事の接客業をしていたのですが、腰を悪くしてしまい、その後は派遣社員など、さまざまな仕事をしてきました。数年前に絵画という特技を生かそうと思って、絵画講師としてフリーランスになりました。

 昔から貯めるのが苦手で、新卒から10年ほど実家暮らしだったのに、お給料が入ったら全額使い切ってしまうので、貯蓄0円生活でした。30歳を過ぎて一人暮らしを始め、『これではいけない!』と思い、1年間で100万円を目標にして貯蓄を始めました。お小遣い帳を付けて、出費の要不要を意識するようにしたんです」(Tさん)

フリー開業に200万円使って、貯蓄はダウン

 そして33歳の時にフリーランスになると決め、開業資金として600万円を目標に貯めることに。無事600万円の貯蓄額に達成してフリーランスになった後は、小規模企業共済、個人型確定拠出年金、つみたてNISA、純金積立、養老保険などをスタート。「会社員に比べてフリーランスは社会保障が手薄なので、退職金や老後資金などを準備しなくてはと思い、いろいろ調べて実行しています」

 仕事関係の費用がかかり、現在の貯蓄は400万円にダウン。ですが、好きなアーティストのライブにはお金を惜しまないそう。「ライブハウス中心なのですが、行きたいものがあれば、積極的に行くようにしています。お客さんとして来ている異業種の方とも知り合いになりますし、好きな曲や演奏を運よく聞くことができると幸せな気持ちになります。ストレス発散にもなりますね」

「今は幸福、だけど安心じゃない、満足してはいけない」

 貯蓄総額が400万円で、人生幸福度が90点だというTさん。

 「貯蓄だけを考えたら不安はありますが、生活に困っているわけでもありませんし、家族や友人に恵まれ、好きな仕事ができているので『人生の幸福度』は非常に高いです。

 ですが、『幸福度』と『満足度』と『安心度』は、全く別だと思います。『満足度』が高くなったら、慢心してしまうので危険。モチベーションを上げていくために、現状に満足をしないように意識しています。

 人生の『安心度』でいえば、今は非常に低いです。貯蓄がもっと増えれば安心するとは思いますし、好きなことにもっとお金を使うことで、自分自身の幅が広がるとは思っています。でもそのことで、自分が幸福と感じるかどうかは、その場になってみないと分かりません。

 貯蓄は幸福になるための一つの手段だとは思いますが、それがすべてではありません。もし我慢をして貯蓄できても、万一早死になんかしてお金を使えなかったら、取り返しがつかないほどの不幸だと思います。でも、お金があって好きなことに使えるのであれば、幸福につながるかもしれません。無理がない程度に貯蓄を増やしていくことで、人生の満足度や安心度を高めていきたいと思います」(Tさん)

二人の共通点は、「体験型消費」

 さて、ここで、私たちの幸福度とお金は、どんな関係にあるのか考えてみましょう。

 以前の記事「貯蓄減っても後悔なし 脳科学的・幸せなお金の使い方」で、脳神経外科医の菅原道仁さんは「体験型消費をすることは、お金の生きる使い道」だと指摘しています。例えば、旅行やライブ、ゴルフレッスン、英会話スクールなどの体験型消費を選び、「自分でどのようになりたいかといったストーリーを描いて実行すること」で、満足度の高いお金の使い方になるのだと菅原さんは言います。

 今回登場した二人は、趣味を楽しみながら日々を過ごしていました。二人の趣味である舞台やライブは、まさに「体験型消費」です。

 「意外かもしれませんが、ムダ遣いか否かを判断するのに、金額はほとんど関係ありません。たとえ安価なモノでも、自分にとって必要がなければムダだし、何年かのローンを組んだとしても、ストーリーを描いていたなら『いい買い物をした』と思えるでしょう」というアドバイスもありました。

 特に、後半で登場した貯蓄400万円のTさんは、将来のお金として、小規模共済や個人型確定拠出年金など、具体的な目的を持って貯めているのが特徴的です。お金を使うだけでなく、お金を貯める際にも具体的な目的やストーリーを持つことが、幸福度を左右する一つのポイントといえそうです。

 貯蓄額をやみくもに増やそうとすると、やりたいこともできず、疲弊していくでしょう。目的を持ち、ストーリーを描きながら、お金を使い、そして貯めていきたいですね。

文/西山美紀 写真/PIXTA

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日経ウーマンオンライン

2018/06/29掲載記事を転載
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