35歳以上のフリーランス全員クビ…月収5万から挽回

35歳以上のフリーランス全員クビ…月収5万から挽回

2018/05/24

フリーランスの一寸先は闇…光はどこに?

 最近ではフリーランスとして働く女性も増えてきています。自分のスキルを生かして、好きな仕事をすることができる半面、収入が安定しないのが玉にキズ。今回登場するのは、フリーランスで順調にキャリアを積み上げてきたにもかかわらず、突然仕事がなくなってしまった女性の相談です。突然リストラされた女性を前に、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは、どんなアドバイスをするのでしょうか?


吉岡奈々さん(仮名) 35歳 フリーランスの編集者
年収700万円 一人暮らし
長所 美人で真面目
短所 ネガティブ思考
「35歳以上」だからリストラ!? 突然無職になる恐怖

 最近ではスキルを武器に、フリーランスという働き方を選ぶ人が増えてきているようです。ただ、マネーに関して、フリーランスの人たちに必要な知識はあまり知られていないのかもしれません。

 今回は、そんな「フリーランス女子」のお悩みがテーマです。

 相談者は、フリーランスで編集業務を請け負っている奈々さん・35歳。彼女は大手出版社の女性誌の編集部で働いていました。といっても社員ではなく、フリーランスという立場で業務を請け負う形で、その報酬は月60万円。ボーナスはありませんので、年収でいうと700万円ほどです。

 なかなかの稼ぎぶりだったのですが、私のもとにマネー相談に駆け込んだ時、彼女の月収はなんと5万円に!

 いったい彼女に何が起こったのでしょうか。

 奈々さんに話を聞くと、「編集長が代わって、ある日会社に行ったら、『契約は更新しません。2日後には新しい人が来るから、席を片付けてほしい』と言われちゃったんです!」と言うではありませんか。

 社員だったらこんなことはないかもしれませんが、彼女はフリーランス。この時、雑誌のターゲットとなる読者層を若くしたいから、35歳以上のフリーランス編集者は皆リストラされたのだとか。5年以上も働いたのに、です。

 もちろん、フリーランスなら、仕事がなくなったときのために貯蓄はしておくのが鉄則。奈々さんの貯金は普通預金で500万円あり、すぐに暮らしが立ち行かなくなるということはありませんでした。

 しかし奈々さんが悩んでいたのは、もっと深刻な、将来への悲観でした。

「この先、仕事がゼロになるんじゃないか…」

 奈々さんはもともと、東京大学を卒業し、「いつか文芸書の担当をしたい」と大手出版社に新卒で就職したことが編集人生の始まりでした。しかし、配属は女性ファッション誌に。ファッションや美容には無頓着だったため、懸命に勉強してなんとか追いついていったものの、「ダサい」「センスがない」と先輩たちにいびられ続け、耐えられず退職。以来、フリーランスの編集者になったという経緯がありました。

 女性誌経験があったことから、今までずっとその世界で生きてきた奈々さんですが、突然年齢のせいではしごを外されてしまったのです。若返ることはできないですから、自分がいったいこれからどうやって稼いでいけばいいのか、まるで見当がつかなくなってしまい、頭を抱えてしまったというわけです。

 お金の相談というのは、突き詰めると人生相談になるものです。

 フリーランスという生き方を選ぶと、会社員との違いから戸惑うことも多いのかもしれません。例えば、会社員であれば、月々雇用保険を支払っていますから、解雇の場合はもちろん、自己都合退職の場合も失業保険が一定期間国からもらえます。この期間に転職活動をしたり、資格を取ったりする人も多いですよね。しかし、フリーランスは雇用保険に入っていませんので、仕事がなくなれば即無収入になってしまいます。

 奈々さんはなんとなく不安があり貯金はしていたものの、仕事がなくなったときの生計の立て方を全く考えていませんでした。

 奈々さんは半泣きでこう話しました。
 「私、女性誌の編集スキルしかないんです……。これができないなら、もう他にできることはありません……」

 そんなわけはないのでは? と思いましたが、奈々さんはとにかくそれくらい追い詰められていました。

 仕事もでき、頭もいい奈々さんが、「私はダメな人間なんです」と打ちひしがれているなんて、もったいないですよね。きっとこのピンチを切り抜ける、別のやり方があるはずです。

 さて、貯金500万円を生かして起死回生を狙うために、奈々さんにはどんなアドバイスが有効だったでしょうか?

新たなジャンルを開拓! 1年かけてキャリアを立て直す

 私は、奈々さんに聞きました。
 「どうしても女性誌じゃないとダメなの?」

 質問にキョトンとした奈々さん。
 「いえ、そんなことはないですけど、他の分野の仕事はやったことないですし……」
 「じゃあ今までのスキルが生かせるか生かせないかも分からないよね?」
 「確かに……」

 今まで奈々さんは、仕事にめぐまれていたため、特に売り込む必要もなく、それ以外の分野の仕事に興味を持つことがなかったのです。ここで奈々さんは一念発起! 当面の生活費を確保しつつ、自分のキャリアアップのために投資することに決めました。

 まず、もともと勉強が得意な彼女は、この時お金のことに苦労した経験から、まずマネーや金融の勉強を開始。ファイナンシャルプランナーの資格を取り、マネー系の企画にも対応できるよう知識を磨きました。

 ファイナンシャルプランナーの勉強と並行して、通い出したのが「占いの学校」。奈々さんが女性誌の編集をしていた時に知ったことだったそうなのですが、一番読まれていたのは実は占いのページ。そのため、前から占いに興味を持っていたのだそう。学費は20万円でしたが、これは貴重な投資。プロからの指導を受け、新しい技術を得ることができました。

 女性誌にいた彼女が、発注先から仕事を突然切られた時に一番ショックだったのが「35歳以上だから」と年齢で存在を否定されたことだったと、奈々さんは当時を振り返ります。「仕事もなくなり、今さら結婚もできないと思うし、細々と生きていくのかなあ……って絶望していたんです」

 ですが、何もかも失ったからこそ、新しい世界に飛び込んでいく勇気が湧いたわけです。

 そうして、1年ほどの自分磨きの期間を経て、少しずつ事態は好転。大手出版社の仕事が増えたわけではなく、自分で営業したことや、新しい分野の開拓が功を奏し、今まであまり声の掛からなかった中堅の出版社からいくつか声が掛かるようになり始めました。

 あれから3年、当時開拓した中堅出版社を中心に、今では男性誌で占いの連載コーナーを持つほどに活躍している奈々さん。収入は大手にいた時と同じく、年収700万円にまで引き上げることができました。加えて、月々のお金の貯め方も大きく改善。以前は銀行の普通預金に、ただお金を預けておいただけでしたが、フリーランスにはフリーランスに合った貯蓄のやり方があるとアドバイスしました。

 まず、フリーランスは厚生年金に加入していないため、年金額が少なくなります。その対策のため、iDeCoに加入して、自分の老後のセーフティーネットを作ることに。掛け金は月5万円に設定しました。次に、個人事業主などが加入できる小規模企業共済に加入しました。これは、加入者が廃業したり、65歳になったりしたときなどに、退職金代わりに貯めたお金を共済金として受け取ることができる制度で、退職金のないフリーランスなら入っていると安心です。こちらの掛け金は月2~3万円としました。これで年間100万円ほど貯めることができますね。

 そして、節税です。奈々さんは今まで税金の知識があまりなかったため、ここも勉強して、できる限りのことをやるようになりました。例えば先ほどお話ししたiDeCoや小規模企業共済も、掛け金の額に応じた所得控除があるため、課税所得が下がり、節税のメリットがあります。会社員の場合、自動的に「給与所得控除」という形で、必要経費分の金額が控除されますが、フリーランスは自分で経費をきちんと計算し、確定申告しなければいけません。奈々さんは経費として出すべきものも計上していないことも多かったため、ここをきっちりやるようにしました。

 奈々さんの当面の目標は、収入が安定してきたら、iDeCoは月額6万8000円、小規模企業共済は月7万円まで掛け金を上げること。どちらも掛け金のMAXの金額なのですが、頑張り屋の奈々さんならきっと達成できることでしょう。

 そして、カリスマ占い師として、想像もしなかった活躍をする日も近い!?

今回の学び

聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ

Profile
高山一恵(たかやま・かずえ)
Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性と女性FPのマッチングメディア「FP Cafe」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務も行う。著書は「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)、「1000円から増やす積み立て投資術」 (スタンダーズ・頼藤太希共著)など。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/05/24掲載記事を転載
35歳以上のフリーランス全員クビ…月収5万から挽回