社会人の家計やりくりの盲点 まず必須出費をチェック

社会人の家計やりくりの盲点 まず必須出費をチェック

2018/05/02

手取りのやりくり、お給料を使う前に意外な出費に要注意

 お給料が入ってくると、つい振り込まれた金額をそのまま日常の生活費に充てようと思いがちですが、実はそれ以外にも「払わなければならない出費」があるのです。

 社会人になり自分の収入が得られるようになると、生活費のやりくりも自分の収入から管理するようになりますよね? 基本的には、入ってきた収入から自分が暮らすための生活費を工面するわけですが、実はそれ以外にも「払わなければならない出費」があるのです。きちんと払わないと、将来困ったことになる恐れも……。

 それが、奨学金の返済や国民年金の未納分です。今回は、つい忘れがちな支出のことも知っておきましょう。



学生時代の奨学金は社会人になったら利息が付く

 今、日本の大学生のうち奨学金を受給している割合は約半数※。国内で最も利用者が多い日本学生支援機構の貸与型奨学金は、卒業すると返還が始まります。学生時代には「受け取る」お金だった奨学金が一変して、「払う」お金に代わるわけです。当たり前のことではありますが、いざ返すタイミングになるまでそのことを忘れていた、頭では分かっていても実際にお金が出ていく段階になって初めて実感が湧いてきて、びっくりする人も少なくありません。

※日本学生支援機構
平成26年度学生生活調査」(PDF)

 日本学生支援機構の貸与型奨学金には、利息が付くタイプと付かないタイプがありますが、付くタイプであっても、学生の間は借り入れ期間中でも利息が付きません。卒業する時点で利率が決まり、その後に元金とともに利息を支払います。例えば仮に年間100万円、4年間借りていたとしたら、貸与された総額は400万円。これを20年間で返すと、返還額は月に約1万7000円、うち500円弱が利息部分にあたります(第二種奨学金、貸与利率0.27%、定額返還方式、利率固定方式、返還期間2018年4月~2038年3月(20年)の場合)※。

※日本学生支援機構
奨学金貸与・返還シミュレーション

 借りた奨学金は、原則として卒業したらすぐに返還を始めます。基本的には、卒業時に返還用の銀行口座を指定し、毎月(または半年ごとと併用)、自動で引き落とされます。お給料が入ってきてすぐに使いきって残高が残っていないと、奨学金の返還分を引き落とせず延滞と見なされてしまいます。

 万が一延滞すると、年5%の割合で延滞金が課され、本人や連帯保証人、保証人に文書や電話で督促されます。さらに、3カ月以上延滞すると個人信用情報機関にその旨が登録されます※。信用情報とはクレジットカードを作ったり、携帯電話を契約したり、住宅ローンを借り入れたりするときの審査に関わるもの。ここに延滞の情報があると、いわゆる「ブラックリスト」扱いになる恐れもあり、さまざまな契約で不利になるかもしれません。

 このように、「奨学金」という名前ではあるものの、仕組みはほぼ借金と同じ。ですからお給料が入ってきたら、使ってしまう前に奨学金を優先して返すようにしたいものです。

※日本学生支援機構
個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」「返還のてびき」(PDF)

 とはいえ、勤続年数が短く、お給料がまだあまり高くない時期、特に一人暮らしなら、家賃や通信費、光熱費、食費などをやりくりするのでも精いっぱいかもしれません。そこで、収入が所定の額を下回る場合には、返還期限を最長10年間延長できる「返還期限猶予制度」や、月々の返還額を半分、または3分の1に減らす「減額返還制度」を利用することもできます※。いずれも審査が必要で、延滞していると利用できないことがありますので、早めに検討しましょう。

※日本学生支援機構
減額返還・返還期限猶予リーフレット」(PDF)
学生時代に特例を受けた国民年金は「免除」じゃない

 20歳以降、学生時代に国民年金の特例を受けていた人も要注意です。学生の間に国民年金保険料の支払いが猶予される制度のことを「学生納付特例制度」といいますが、「納付特例」は「免除」とは違います。「在学中には保険料を支払わなくてよい」というもので、「払ったことになる」わけではないのです。卒業すれば原則としてその年から年金保険料を納めなければなりませんし、在学中に納めなかった期間分の保険料を払わないままにしていると「未納」状態になります。

 ではなぜ学生の「特例制度」と呼ばれるのでしょうか? それは、保険料を納めていなかった学生の期間を、年金の加入期間に含めることはできるためです。

 通常、老後に受け取る老齢基礎年金を受け取るためには、国民年金の保険料を10年以上納めることが要件です。納めた期間が10年に満たないと、将来の年金は1円も受け取れません。しかし学生納付特例制度を利用した期間については、保険料を納めていなくてもこの「10年」に含められるわけです。

 ただし、将来に受け取る年金の金額は、あくまでも納めた保険料に基づいて決まります。満額を受け取るためには、学生だった期間も含めて20歳から60歳までの40年間分の保険料を納める必要があります。もし、学生だった期間分の年金保険料を納めないままにしておくと、その分、将来に受け取る年金額は少なくなるのです。

 老後に満額の年金を受け取るには、卒業後に学生時代の保険料を遡って納めることになります。これを「追納」といい、10年以内なら過去の保険料を納めることができます。

 追納する場合、3年度以内ならば過去の保険料額をそのまま納めますが、3年度を過ぎてからは加算額が上乗せされます。例えば平成25年度に納めるはずだった保険料は月額1万5040円でしたが、平成29年度中に追納すると1万5120円を納めないと、払ったことになりません。

 なお、お勤めの方なら、社会人になると厚生年金に加入し、年金保険料は原則として給与天引きになります。今の保険料は自分で手続きをせずに納付できているでしょう。だからこそ、学生時代の年金保険料のことはうっかり忘れてしまいがち。これまでの年金の加入・納付状況は、毎年届く「ねんきん定期便」で確認できますから、過去の未納がないかどうか、ぜひチェックしておきましょう。

※日本年金機構
学生納付特例制度

 お給料が入ってくると、つい振り込まれた金額をそのまま日常の生活費に充てようと思いがち。ただ、支払うべきものをあまり先延ばしにするのも、後に不利な結果をもたらす恐れがあります。まずは奨学金や年金保険料を優先してから、家計をやりくりする仕組みを作れるとよいですね。

文/加藤梨里 イラスト/とげとげ。

Profile
加藤梨里(かとう・りり)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者) マネーステップオフィス株式会社代表
保険会社、銀行、FP会社を経て独立開業。家計、保険などお金のセミナー、執筆、相談を行う。働く女性のライフプランと健康にも関心があり、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教も務める。監修を担当した最新刊は『ガッツリ貯まる貯金レシピ』『年金世代のしあわせ家計簿』
マネーステップオフィス株式会社:http://moneystep.co/

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/05/02掲載記事を転載
社会人の家計やりくりの盲点 まず必須出費をチェック