流されキャリアは悪くない 価値ある人になれる思考

流されキャリアは悪くない 価値ある人になれる思考

2019/01/10

強みがないと嘆く必要はない 肯定すべきあなたの仕事の軌跡

 すずまり姉さんの的確なアドバイスで好評を博した本連載も、いよいよ見納め! 最終回となる今回は日々、頑張っている皆さんに向けて「自分のブランド化」と「キャリアデザイン」についてお話しします。すずまり姉さんの愛があふれるメッセージを、どうぞ受け取ってください!

幕を閉じた第一弾シリーズは
鈴木真理子のミスなし、ムダなし、残業なし 信頼の仕事術
(登場人物)
すずまり姉さん(45歳) & ひよ子(24歳) & やる子(32歳)


左:すずまり姉さん(45歳)/広報部長。社内を練り歩き、各部署の情報を巧みに収集しながら仕事術のレクチャーも行う。過去に数多の過ちをやらかした経験からミス、ムダ、残業を忌み嫌っている。
中:ひよ子(24歳)/入社2年目、やる子の後輩。女性活躍の追い風でキャリア意識が高く、やる気はあるものの失敗も多い。女子力高めのふんわりキャラだが若干不安定。悩んでは落ち込みを繰り返す。
右:やる子(32歳)/1年の間、すずまり姉さんの愛のムチを受けた結果、めでたくチームリーダーに昇進。しっかり者だが、中堅どころならではの悩みも多い。最近はキャリアに目覚め、日々精進中。
私、このままでもいい…? 漠然とした不安を払拭したい!

 イルミネーションが華やかにきらめく夜の繁華街。前回の「忘れ物やミスがなくなる『手作り仕事アイテム』3つ」で、すずまり姉さんに恋愛話の披露をねだったやる子とひよ子は、闊歩(かっぽ)する姉さんの後をちょこちょこと歩いています。

やる子 「すずまり姉さんの恋バナなんて、初めて聞くよ、私。何だかドキドキ」

ひよ子 「私もです! 最近、彼とイマイチうまくいってないから、アドバイスももらいたいなぁ」

 そんな会話を交わしながら、行きつけのダイニングバーに入った3人。景気よく乾杯した直後、すずまり姉さんへ質問が矢継ぎ早に浴びせられます。

やる子 「で、姉さん。今年の6月に何かあったみたいですけど、一体どんな出来事が?」

ひよ子 「お相手は? 私たちも知っている人ですか? ちょうどあの頃、よく出張で飛び回っていたけど、さては……?」

すずまり姉さん 「ちょ、あ~たたち、落ち着いて。もう最終回だってのに、恋バナで終わるつもり? 仕事に対しての悩みが全くないなら、それでもいいんだけど」

ひよ子 「あります! 実は最近、彼とギクシャクしちゃってて……」

やる子 「うぉい! ひよ子ちゃん、仕事の悩みじゃないじゃん。それより姉さん、私の悩みを聞いてください。最近、このままでいいのかなって思っていて」

すずまり姉さん 「あら、やる子、珍しく迷走しているわね。いえ、特に珍しくもないか」

やる子 「う、痛いところを……。でも確かに、何かこう、会社に言われるままでいいのか、とか、いつまで働けるんだろう、とか、いろいろ見えなくなってるんですよ、今」

すずまり姉さん 「ま、気持ちは分かるわ。あ~たに今、必要なのは『やる子ブランド』を築くことね」

やる子 「へ?」

ひよ子 「部長、どういうことですか? やる子先輩が起業するとか?」

すずまり姉さん 「要は、自分をブランド化するってことよ。まあ、お二人さん、まずはお聞きなさいな」


自分をブランド化することで、価値のある人になろう

 自分に自信が持てない、将来に不安がある……。そんな思いを抱えている人は少なくないはず。働く女性にはさまざまな悩みが付き物ですが、だからこそ自分を「ブランド化」し、高めていっていただきたいと思います。

人のブランド力って、どんなことで測れるもの?

 ブランドとは、他者から見て価値を持つもののこと。例えばブランド品のバッグなんて、ボーナスをつぎ込むほどの価格の物も多いですよね。それでも売れるのは品質が確かで、手にすると気分が上がるから。アフターサービスが万全で、長く使い続けられるというメリットもありますね。

 そんなブランドバッグと同じように、例えば会社員の人なら、会社から「お金(給料)を払う価値がある人」と思われるには、何が必要だと思いますか? 大企業に属していること? それとも役職に就くことでしょうか? そう考える人もいるかもしれませんが、ここで言うブランド化とは、あくまでも社会でのあなたの価値を上げること。会社や配属先、上司といった環境は自分で変えられませんが、自身のブランド力は努力次第で高めることができるんです。

自分の味方となるメンターを見つけよう

 そのためには、以前、「『管理職じゃなくても価値ある人』になる3つのスキル」でもお話ししたように、さまざまなスキルを身に付けることが必要にもなるでしょう。

 また、利害関係なくあなたを応援し、高めてくれる味方をつくることも大切。仕事上の相談を持ちかけたとき、「あなたにはこういう強みがあるけれど、この部分が足りていない。だから、こういうふうにやっていくといいよ」と適切なアドバイスを与えてくれる人がいれば、自分を客観的に見る手助けにもなります。いわゆるメンターですね。

 企業によってはメンター制度を設けているので、それを利用するのもいいですし、自分で探しても構いません。ただし、あなたの仕事ぶりを知っている人であることが不可欠。そして、仕事に対する考え方があなたと似ていて、共感できる人がいいと思います。理解できない人や、言動に共感が持てない人だと、どんなに素晴らしいアドバイスをもらっても真摯に受け止められないでしょうから。

トライ&エラーで、信頼できるメンターを探す

 長く深く付き合えるメンターに出会えることは、あなたが仕事を続ける上での一生の財産。「相談したけれどちょっと違う」「この人に相談しなきゃよかった……」なんて思ったら、また別の人を探せばいいんです。自分の悩みを人に相談することで、伝える話し方もどんどん上手になれますよ。

 信頼できるメンターが見つかったら、相手に対してギブ&テイクの気持ちを持つようにしてください。相談に乗ってもらう代わりに、自分が貢献できることを探すのです。その人にとって役に立つ情報や、人物などを紹介するのもいいでしょう。

キャリアを考えるなら、今までの経験を肯定して生かすべき

 「自分に自信が持てない」という人は、まずは自身を振り返ってみてください。入社してからの経験の中には、必ずキャリアに生かせる強みがあるものです。「ルーティンワークだから、できて当然」なんて思うかもしれませんが、パソコンスキル、接客力、クレーム対応力、担当業務に関する知識、ビジネス文書やメールの作成力などは、これまでの経験から培った財産。たとえ失敗したことでも、確実にあなたのプラスになっているので忘れないでください。

歩んできたキャリアを振り返り、前進する力へ替える

 転職や再就職に当たり、自分に強みがないと嘆く必要はないのです。資格があっても経験がなければ、採用されないケースも少なくありません。私自身、再就職を目指した時は今までと全く違う分野を志し、関連資格の勉強なども行いましたが、経験者にはかなわないとつくづく実感したものです。結局、前職である保険会社の人事部で培った人前で教える力が自分の強みであり、今の職業につながっているわけですが、当時は思いもよらないことでした。

 キャリアの語源は、ラテン語で轍(わだち)の意味。馬車などが通った後の車輪の跡を表す言葉ですが、同じようにあなたの仕事の歩みにも軌跡が残っています。せっかく努力と苦労をして歩いてきた道ならば、何度でも振り返りながら進んでいきましょう。それこそが、あなたのブランドであり、差別化やオンリーワンになれる近道なのですから。


変化に任せた「流されキャリア」はアリかナシか?

 キャリアについてのお話を、もう一つしておきましょう。「キャリアデザイン」という言葉がありますが、これは自分でキャリアを描くということ。目標を持ったり、やりたい仕事を見つけたり、それを手に入れるために勉強したりといったことが挙げられます。一方で、自分の力でコントロールできないことがキャリアに影響する場合もあるもの。例えば担当替えや異動、昇格、リストラなどで、これらが起きたら、受け入れるか辞めるかを選択することとなります。

流されることは悪くない! その理由とは…?

 こうしたキャリアデザインの対極にあるものを、キャリアドリフトと呼びます。キャリア研究の権威、神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏(としひろ)氏が提唱するキャリア理論の一つで、「ドリフト」には「流される」という意味があるそうです。そんな「流されキャリア」は一見、好ましくないように思われがちですが、実はとても大切なもの。ここには、自分では気付かなかった強みが隠れていることが多いんです。(参考:「働くひとのためのキャリア・デザイン」金井壽宏著、PHP研究所)

 前述した私の経験談も、この「流されキャリア」に当たるもの。異動で人事部へ行き、社員研修の裏方事務やインストラクターを任されたことが、今の仕事につながっているのです。要するにお伝えしたいのは、変化を受け入れればチャンスにつながるということ。変化には苦労が伴いますが、新しい仕事を覚えたり、人間関係を広げたりもできます。

 「私にはできない」と思い込まず、「よく分からないけれど、頑張ってみたいです。やらせてください」と言える人になってください。そうやって潜在能力が発揮できれば、毎日の仕事はもっと楽しくなり、あなたの存在価値もグンと上がります。ブランド化を実現するためにも、ぜひ変化を受け入れてチャンスをモノにしましょう!

自分をブランド化するポイント
◆信頼できるメンターを見つけよう
◆入社してからの経験は、すべて大切な財産
◆「流されキャリア」はアリ! 変化を受け入れて挑戦を

やる子 「そうか! 自分の意思だけじゃなくて、流されることも時には必要なんですね。何か、目の前のモヤが晴れた気分」

ひよ子 「環境が変わると不安だけど、キャリアにつながるって考えたらちょっと楽しみにもなりますね」

すずまり姉さん 「しょーゆーこと! あ~たたち、まだまだ若いんだから、そういうときは恐れずにドーンと飛び込みなはれ」

やる子 「肝に銘じます! ……で、すずまり姉さんの恋バナは?」

すずまり姉さん 「あー、それね。だから、6月がターニングポイントだったわけよ。ずっと前からすてきな人だって思ってたけど、あの時にほれ直したっていうか」

ひよ子 「キャッ! 何かドキドキします。それでそれで?」

すずまり姉さん 「で、しばらくはよく会えてたんだけど、最近はすっかりご無沙汰で……。仕方ないから、このハズキルーペをかけて気を紛らわしているわ。ちなみに新色のルビーカラーよ」

やる子 「何でハズキルーペ? その人にもらったとか?」

すずまり姉さん 「あらやだ、やる子ったら! あのCM見たことないの? 私なんて彼が『ハズキルーペ、好きだな』って言うたび、ドキドキしちゃうってのに」

ひよ子 「部長、それ……。もしかして舘ひろしさんのことですか?」

すずまり姉さん 「当たり前田のクラッカーよ。何だと思ってたの?」

やる子 「だって、6月に会ったって……」

すずまり姉さん 「ええ、主演した映画『終わった人』の公開が6月だったからスクリーンで会ったけど、それが何か? 彼にスクリーン越しに見つめられると、まるで目が合ったみたいで幸せだったわ」

やる子&ひよ子 「中学生か!」

 肩を落としながらツッコミを入れるやる子&ひよ子を横目に、「DVD買おうかしら」と浮かれるすずまり姉さん。最終回でも、やっぱりいつも通りかしましい3人なのでした。それでは、またお会いできる日を楽しみに。

すずまり姉さん&やる子&ひよ子 「皆様ごきげんよう!」

文/石川由紀子 キャラクターイラスト/小迎裕美子 写真/PIXTA

Profile
鈴木真理子(すずき・まりこ)
ヴィタミンM/代表取締役。三井海上火災保険(現三井住友海上)に事務職で入社し、約10年の勤務を経て起業。企業研修やセミナーで3万人以上に指導を行う。著書は10冊、累計20万部突破。近著は「仕事のミスが激減する『手帳』『メモ』『ノート』術」(明日香出版社)、「マンガでわかる!仕事で絶対ミスしない技術」(宝島社)など。数多の過ち経験を告白し、ミス、ムダ、残業を減らすヒントを提唱。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/12/25掲載記事を転載
流されキャリアは悪くない 価値ある人になれる思考