仕事を辞める時のお作法 円満退職はなぜ大事なのか

仕事を辞める時のお作法 円満退職はなぜ大事なのか

2018/11/14

辞める理由「ロールモデルがいないので」と率直に言うべからず

 終身雇用なんて、今は昔。よりよい職場を求めての転職は当たり前の昨今ですが、退職に当たって何をどうすればいいのか分からない人も意外と多いようです。辞意を伝えるのはいつまで? やっておくべきことは? 有休は消化していいの? 辞めるからこそ、隣の先輩に聞くこともできないし……。ああ、もう、分からないことはすずまり姉さんに聞くしかない!

幕を閉じた第一弾シリーズは
鈴木真理子のミスなし、ムダなし、残業なし 信頼の仕事術
(登場人物)
すずまり姉さん(45歳) & ひよ子(24歳) & やる子(32歳)


左:すずまり姉さん(45歳)/広報部長。社内を練り歩き、各部署の情報を巧みに収集しながら仕事術のレクチャーも行う。過去に数多の過ちをやらかした経験からミス、ムダ、残業を忌み嫌っている。
中:ひよ子(24歳)/入社2年目、やる子の後輩。女性活躍の追い風でキャリア意識が高く、やる気はあるものの失敗も多い。女子力高めのふんわりキャラだが若干不安定。悩んでは落ち込みを繰り返す。
右:やる子(32歳)/1年の間、すずまり姉さんの愛のムチを受けた結果、めでたくチームリーダーに昇進。しっかり者だが、中堅どころならではの悩みも多い。最近はキャリアに目覚め、日々精進中。
転職先がめでたく決定! さて、今の会社にはどう伝えればいい?

 営業部とのミーティングを終え、デスクへと戻ってきたひよ子。パソコンの画面を見つめながら物思いにふけるその様子に、やる子は心配そうな表情で声を掛けます。

やる子 「ひよ子ちゃん、ミーティングで何かあった? また営業部長に絡まれたとか……?」

ひよ子 「あ、やる子先輩、お疲れさまです。いえ、そんなんじゃないんですけど……。そうだ、先輩、会社を辞める時って、どうすればいいんでしょう?」

やる子 「えぇっ! ひよ子ちゃん、辞めるの? やっぱり営業部長が……。おのれ、許すまじ!」

 怒りに我を忘れ、思わず声を上げるやる子。そんな彼女の雄たけびをBGMに、カツカツカツ! とヒールの音でリズムを乗せて来たのは、お待ちかねのすずまり姉さんです。

すずまり姉さん 「ああもう、やる子ったら何を叫んでいるの? 思わずセッションしちゃったじゃない」

やる子 「すずまり姉さん、お疲れさまです。だって、ひよ子ちゃんが会社辞めるって言うから、もう動揺しまくっちゃって……」

すずまり姉さん 「あらやだ、ひよ子ちゃん、辞めちゃうの? 原因は営業部長とモメたとか?」

ひよ子 「すずまり部長まで、そんなこと言わないでください。違うんですよ、やる子先輩の早とちりで。辞めたいって言っているのは私の友達なんですが、辞め方がよく分からないみたいで」

やる子 「あぁ、そうなんだ。よかった……。でも、確かに辞める時ってどうすればいいのか、私も分からないや。上司に伝えればいいのかな」

すずまり姉さん 「最近は転職も当たり前なのに、あ~たたち、意外と知らないのね。今のところ、転職の意思はないってことかしら。ま、会社としては優秀な人材に残ってもらえたらうれしいだろうけど。んじゃ、取りあえず、ひよ子ちゃんのお友達のために、退職マナーをお伝えしようかね」

やる子 「姉さん、今、優秀な人材って言いました? それって私のこと? ねえねえ? エヘヘ」

ひよ子 「やる子先輩、喜び過ぎです。部長のお話が始まるから、ちょっと静かにしてください」

やる子 「うっ、すみません……」


何ごとも早め早めに! 辞めると決めたときにやるべきこと

 転職活動が実を結び、次の職場が決まったなら、退職の意向を会社に伝えなければなりません。直前になってバタバタと動けば、周囲に面倒がかかることは必至。立つ鳥跡を濁さず、各所への連絡や引き継ぎなどは早めに行うようにしましょう。

「今月で辞めさせていただきます!」はアリ? ナシ?

 プライベートでも仲の良い同僚でもいない限り、辞めると決めたら、まず報告すべきは上司です。伝えるのは早いに越したことはありませんが、退職日の3カ月前、遅くても1カ月前には報告するようにしましょう。法律上、退職の2週間前までに伝えればいいとされていますが、2週間前になって突然「辞めます!」と伝えると、会社や一緒に働いてきたメンバーも、急な仕事の引継ぎや後任を探す準備、調整を迫られ、困ることもあるでしょう。もちろん、会社規定で期日が決まっている場合は、それに従うようにしてください。

同僚と取引先への連絡は上司の了解を得てから

 退職日が決まり、上司に了解を取ったら初めて同僚や、取引先やお客様、関係者などの外部に伝えます。上司より先に話す人もいますが、話はどこから伝わるか分かりません。辞める本人以外から聞いて不愉快になる上司もいるので、わだかまりが残らないように振る舞いたいですね。特に取引先の場合は、担当者が変わることをイヤがる人もいます。契約が切られた、なんてことにならないよう、上司はしかるべき手を打っておきたいものなので、先走らないように気を付けましょう。

退職の理由を正直に言うと、敵をつくる場合も…

 退職理由で無難なものは、やはり「一身上の都合により」でしょう。建前は避けたいと思う人もいるかもしれませんが、「イヤだから辞めます」や「もっと条件がいい会社に転職するので」では、周囲全員の気分を害してしまいます。「ロールモデルになる人がいないので」なんて、絶対NGですよ。

退職にまつわる業務と、退職日を迎えるまでの心構え

 各方面への連絡を済ませたら、すぐにでも始めたいのが引き継ぎ作業。日常業務と同時にこなすのは大変かもしれませんが、きちんとしておかないとあなたの評判にも関わってきます。

業務を滞らせないために。引き継ぎに必要なことって?

 引き継ぎが不十分では、後任者も困ってしまいます。他部署への移動ならともかく、退職の場合は基本的に連絡を取らなくなるので、分からないことを確認するのは難しいもの。余すことなく伝えるなら引き継ぎマニュアルを作成し、書面に残すようにするのが効果的です。関係書類やデータ、やり取りの分かるメールなども整理し、添えておくといいでしょう。社外に対しては、後任者の紹介や今後の連絡先を伝えておくこと。連絡先は後任者だけでなく、上司も加えておくと先方に安心感を与えられます。

残っている有休、退職日までに完全消化してもいい?

 有給休暇は当然の権利です。とはいえ、せっかくだからと残っている分を消化して退職日まで何週間も出社しない……となると、社風にもよるものの、反感を招くこともあるかもしれません。有休をまとめて取得するのはもちろんNGではありません。ただ、退職前はやるべきことも多いもの。それを投げ出して権利だけ主張するのは避けたいですよね。まとめて取るなら、引き継ぎや退職前の仕事の整理の計画を立て、上司や周囲に早めに報告しておく。また、普段から有給休暇を消化しておくようにしたいですね。

新天地に思いを馳せ、やる気が出ない…

 退職が決まったからといって、今の仕事へのモチベーションがダウンしてしまうと、周囲によくない影響を与えることがあります。送別会を開くなど、気遣いをしてもらっているのにそんな態度はいただけません。感謝の気持ちを忘れずに、退職日までプロとして業務にまい進してください。周囲の人たちと、退職後もいい人間関係が続けられればベストです。

円満退職を実現させるポイント


◆退職の意向を伝えるなら、まずは上司から
◆少なくとも1カ月前には報告しよう
◆退職の理由は「一身上の都合」で無難に
◆引き継ぎは迅速に、分かりやすいかたちで行うこと
◆最後の日まで、プロの姿勢を崩さずに

やる子 「なるほど~。意外と知らないこともある! 断片的に知っていても、順序立てて教えてもらうと頭に入りますね」

すずまり姉さん 「だしょ? 辞めるときは立つ鳥跡を濁さず、グループを卒業して次のステージに進むアイドルのように美しく、が鉄則よ。これなら、ひよ子ちゃんのお友達もスムーズに退職できるんでないかい? ところで、その子ってホントに友達? 彼氏だったりして?」

ひよ子 「やだ、部長ってば。友達ですよ。今のト・コ・ロ・は」

やる子 「マジっすか! ひよ子ちゃん、やるな……。それにしても、よかった、ひよ子ちゃんが辞めるんじゃなくて。さっきは営業部長のせいかと思って、ムダに怒っちゃったよ」

ひよ子 「そこはもう、ご心配いただかなくても大丈夫です。最近、営業部長の口グセに気付いてから怖いと思えなくなっちゃって。『ちなみに』とか『逆に』とか、よくおっしゃるじゃないですか。全然ちなんでも逆でもないタイミングで」

すずまり姉さん 「確かに言ってるわね。この前は『Aの売り上げが伸びていない、逆に言えばBもだ!』って会議で聞いたわ。逆じゃないのに」

やる子 「そう言えば私もそれ、聞きましたよ! 逆におかしいですよね、あれ……」

すずまり姉さん&ひよ子 「あんた/先輩 が使うんかーい!」

 すずまり姉さんとひよ子の華麗なツッコミに、思わずたじろぐやる子。ドキドキしながらも「最近、二人して何か仲良くないですか?」と軽いジェラシーを感じ、ひよ子への対抗心を燃やすのでした。

文/石川由紀子 キャラクターイラスト/小迎裕美子 写真/PIXTA

Profile
鈴木真理子(すずき・まりこ)
ヴィタミンM/代表取締役。三井海上火災保険(現三井住友海上)に事務職で入社し、約10年の勤務を経て起業。企業研修やセミナーで3万人以上に指導を行う。著書は10冊、累計20万部突破。近著は「仕事のミスが激減する『手帳』『メモ』『ノート』術」(明日香出版社)、「マンガでわかる!仕事で絶対ミスしない技術」(宝島社)など。数多の過ち経験を告白し、ミス、ムダ、残業を減らすヒントを提唱。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/11/13掲載記事を転載
仕事を辞める時のお作法 円満退職はなぜ大事なのか