パートからニトリ正社員に 専業主婦をやめた後の人生

パートからニトリ正社員に 専業主婦をやめた後の人生

2018/07/05

復職したら夫の家事能力が開花 やりがいも待遇もアップ

 出産を機に退職して、念願だった専業主婦になった。ところが、いざ直面してみると思い描いていたものとは異なる日々で、「産後うつ」一歩手前の状態に。そして「自分は専業主婦には向いていない」と痛感し、保活と就職活動を始めたものの……。前回の記事「念願の専業主婦 なってみたら私には向いていなかった」に続き、ニトリで勤務している2児の母、宮澤千絵美さんにお話を伺います。

――実際に、保活と就職活動を始めてみて、いかがでしたか?

 就職活動をするには、子どもを預けなくてはいけない。でも、保育園には入れない……という無限ループに陥りました。それなら、保育園に入りやすい場所に思い切って引っ越そうということになったんです。「保育園を探すこと」が第一優先課題でした。

 夫の通勤圏内で待機児童が多くない地域を中心に探して、今の住まいに引っ越してきました。保育園にかたっぱしから電話して、「働くつもりがあればいいですよ」という無認可保育園が無事見つかり、そちらに預けて就職活動を始めました。

 前回、派遣会社に登録をしたらすぐにオファーがあったことを思い出して、登録してみたのですが、子どもがいるとオファーが全く来ませんでした。履歴書もかなりの数を送りましたが全滅。「お子さんがいる方はお断りしているんです」と電話で言われたこともあります。たった10年前の話ですが、当時はまだ子育て中の女性が働ける環境がそれほど整っていなかった時期でした。

 心が折れそうになっていた頃、たまたま娘と一緒に散歩をしていたら、ニトリを見つけたんです。はい、今勤務しているニトリです。

 私は北海道出身で、北海道に本社があるニトリは地元でかなり有名な企業。でも私自身が東京に出てきてから十数年、見る機会がなかったのですが、この散歩の時に初めて見かけました(笑)。「東京にもあるんだ……懐かしいな」と、家に帰ってホームページを見たら、貿易関係の仕事の求人がありました。正社員ではなく、契約社員だったのですが、これまでの経験も生かせそうだし、ご縁のようなものを感じて応募してみると、面接に進めたんです。

――これまでの再就職活動で、「面接」に行かれたこともありましたか?

 いいえ、書類選考の段階で苦戦が続いて、実際に面接に行ったのはニトリが初めてです。正社員と契約社員とでは採用のステップが違うと思うのですが、私の場合は、面接中に採用が決まりました。こんなこともあるのだと驚きました。

 「子どもがいて保育園に通わせているので、残業はできないかもしれません。でも働けるなら、部署はどこでも構いません!」と素直に相談しましたね。子どもがいる女性社員が当時少なかったので、最初の半年間はパート契約になり、商品部に配属になりました。

 勤務時間は9時~17時。仕事をすることが、ものすごく楽しかった。そして、「子どもが本当にかわいい」と思えるようになりました。もちろん、これまでも子どもはかわいい存在でしたが、仕事に復帰する前は、いつも私はイライラして子どもにも夫にも怒ってばかりでしたから。

夫の家事能力も開花 子どもがかわいくなった

 働き始めて、「子どもってこんなにかわいいんだ。保育園でこんなに楽しくやっているんだね。私も頑張ろう!」と前向きな気持ちになり、家庭がうまく回るようになりました。昼は仕事、夜から朝までは子どもに集中するというメリハリがあるほうが、私には向いていると実感しました。

――働き始めて、旦那様はいかがでしたか?

 精神的に落ち着いてきた私を見て、「働いているほうがいいんだね」と。そして家事に協力的になりました。家事の時短のために私が「食洗機を買おうよ」と提案したら、「そんなの買わなくていいよ。俺が洗うよ」と、毎晩洗ってくれるように。洗濯乾燥機の乾燥機がうまく使えないという話をしたら「それなら俺が干すよ」と毎日干してくれる。「ルンバを買おう」といったら、「そんなの買わなくていいよ、俺が週末掃除機かけるから」といって、実際かけてくれています(笑)。

 よく考えたら、夫も一人暮らし経験が長く家事が得意なんです。これまで私が人に上手に頼ることができず、家族で分担ができていなかったんだと反省しました。

――お仕事は、どんなことをされていますか?

 10年前に入社した時から今までずっと商品部でデリバリーをしています。デリバリーは、海外に発注した商品を輸入し、日本各地の倉庫に入れて、お店に納品するという商品調達と在庫管理をする職位です。

 最初は、正社員のサポート業務で、布団やマットレス、枕などを扱うチームで、帳票作成などの事務的な仕事を行いました。慣れてくると事務作業だけでは物足りなくなってきて、社員の方に「どんな仕事をしているんですか?」と聞いて、「ぜひ、私にもこの仕事をやらせてください」と自ら志願して、社員の方の仕事の一部を行うようになりました。

 半年間のパートの時期が過ぎると契約社員になり、正社員と同等の仕事を任されるようになりました。職場では思ったことを自由に言える雰囲気があり、「こうしたほうがいいのでは?」と私が言ったことも気軽に耳を傾けてくれ、取り入れてくれました。

 会社によって、やり方の違いってありますよね。以前勤めていた会社のやり方のほうが効率的だと思って提案をすると喜ばれたこともありました。また当時は社員に女性が少なかったので「女性のお客様はこういう視点で選ぶと思います」と伝えて意見を採用してもらうことも増え、大きなやりがいがありました。

――そして、第二子を妊娠されたんですね。

 はい、次の子どもを産むまでは、「3年はしっかり働こう」と考えていました。3年くらい働かないと一人前の力はつきませんし、周りからも認めてもらえないと思って。働き始めてちょうど3年たったくらいで妊娠が分かり、産休に入りました。下の子の出産後は、前回のように行き詰まることはありませんでした。子どもが一人から二人に増える大変さはありますが、仕事復帰の時期が見えていますから。また、上の子のおかげで保育園のママ友ができ、一緒に遊んだり、情報交換したり、楽しい時間も持てました。

 春の保育園入園の時期に合わせて、出産後半年ほどで復帰。時短勤務で働き、18時に保育園に迎えに行く生活になりました。

正社員登用に挑戦し、バリバリ働くスタイルに

――その後、半年たって、時短勤務からフルタイムに戻られたと伺いました。

 生活リズムが整ってきて、チャレンジしようと。それに、以前よりもさまざまな制度が導入されて子どもがいる女性も増え、働きやすい環境が整っていました。少しでも多く仕事をしたいと思い、フルタイムに戻りました。

 そして、下の子が3歳になったのを機に正社員(エリア限定総合職社員)になりました。これは、転勤がない地域限定正社員のようなものですが、数年前に制度ができて、ぜひ応募したいと思っていたんです。試験や面接を経て、正社員になることができました。

 以前の契約社員の時代と勤務時間も勤務内容もほぼ変わらないのですが、給料やボーナスなどの待遇面が変わりました。研修にも参加できるようになり、ステップアップを目指せる環境が整ってきました。

 ただ、デリバリーという職位は、本来新卒入社で10年程度現場経験を積んだ社員が就く職位なんです。私は現場経験が乏しく、圧倒的に知識が少ないと感じて、社員の方が読んでいる本を教えてもらったり、店舗マニュアルを借りたりして勉強を重ねました。みんなと対等に話をするために、理解しておかなくてはならないことが山ほどある。経験が足りなければ努力で補うしかない。責任ある立場で働かせてもらっているので、それに値する仕事をしたいと思っています。現在は20人ぐらいの部署にマネジャーがいまして、私はその補佐をしています。マネジャーが不在のときは、代理で仕事をすることもあります。

――力があれば、どんどん仕事を任せてくれるような雰囲気があるのですね。

 学ぼうと思えば学べますし、結果を出せば認めてくれる会社ですね。パート勤務だった時も同じで、立場に関係なく言いたいことを言っても聞いてくれるし、やりたいことを率先して提案した人に「それならやってみれば」と仕事を任せてくれる。とても働きやすい職場です。

――バリバリと働かれている今、ご家族はどのように感じているようですか?

 小6の娘は、母が働いていることが誇らしいようです。最初は「何をやっているの?」「なんでいつも家にいないの?」と不思議な顔をしていたのですが、ニトリの店舗に買い物に連れて行って、「お母さんは、こういう商品を海外から輸入しているんだよ」という話をしたら、「え~すごいね!」って、なんとなく理解できたようです。

 帰宅が夜遅くなるときも理由をきちんと説明すると、「じゃあ、頑張ってね!」と応援してくれます。先日は、仕事から帰るのが遅くなってしまったのですが、小2の息子と二人で冷蔵庫に用意しておいた夕飯を温めて食べ、お風呂に入り、歯磨きをして寝る準備をして待っていてくれたんです。「ありがとう!」と感動でした……。あの、「産後うつ」の暗黒時代を思うと、ここまで成長したことが奇跡のようです。

――バリバリと働いている宮澤さんを、旦那様はどのように見ていますか?

 変わらず、温かく見守ってくれています。今も変わらず、お皿を洗っていますし、朝は洗濯物を干し、週末は掃除機をかけています。料理や小学校のPTA関連は私、洗濯と掃除は夫、というふうにいい分担ができています。長期出張の際には、実家の母に来てもらうこともありますが、普段は夫と二人で協力し合っています。もう、大きなケンカをすることもなくなりました(笑)。

専業主婦は合わなかったけど、必要な失敗だった

――今後、どのように働いていきたいと考えていますか。

 将来的には転勤がある総合職になりたいと思っています。国内や海外の出張もどんどん行きたいですね。今は「ママ、ママ」と言ってくれますが、きっと子どもたちが自立して離れていく時が来るはずです。とにかく今は、目の前のことに地道に取り組んで、「いつか」のために準備したいと思っています。

 子どもが小学生になると、専業主婦をしているお母さんにたくさん出会います。私自身は専業主婦を楽しむことができなかったので、楽しそうで羨ましいなと思うこともあります。一方、専業主婦のママ友からは「子育てしながら働くなんてすごい」と言われる。でも、私にとってはこっちのほうが楽。専業主婦は、人によって向き不向きがあるんだと感じています。

 子育てをしたことで、仕事でも優先順位をつけるのが上手になりました。以前は、何でもやります! と残業もよくしていましたが、今は安請け合いはできません(笑)。「一人で完璧にこなさなくてもいい」「人に頼っていい」ということを、育児を通して、子どもたちに教えてもらえました。それに、「自分が選んだ道(専業主婦)でも、違っていたら方向転換していい」ということも。これは今、人材育成でも生きています。「分からない」と感じる人の気持ちも理解できますし、人によって感じ方が違うということを、身をもって知りましたから。

 以前、「あなたは専業主婦に向いていない」と反対してくれた皆さんには、「すみません、あなたが正しかったです」と伝えたいですね(笑)。でも、あの暗黒時代がなかったら、今のこの仕事には出合えていなかった。失敗はしましたが、必要な失敗でした。一度専業主婦を選んだことも全く後悔はしていません。

 社会的にも女性が働くことが推奨されていますが、「働きたい人」が働くのはいいと思いますが、「専業主婦になりたい人」や「働きたくても働けない人」に強いることはできないと思います。子育てに限らずさまざまな事情で働けない時期というものはありますから……。逆に「働きたい人」に、専業主婦の立場を強いることもできないと思います。

 さまざまな転機を経て、自分に合う生き方は人によって異なるし、ステージで変わっていくということを実感しています。自分のやりたいことを実現する道を探していきたいですね。

聞き手・文/西山美紀 写真/村田わかな

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/07/05掲載記事を転載
パートからニトリ正社員に 専業主婦をやめた後の人生