念願の専業主婦 なってみたら私には向いていなかった

念願の専業主婦 なってみたら私には向いていなかった

2018/07/04

専業主婦願望があったのに、なってみたら違う現実が待っていた

 「専業主婦に向いている人と、向いていない人がいることがよく分かりました」と話すのは、出産を機に子育てに専念したいと思い、専業主婦になったという二児の母、宮澤千絵美さん。宮澤さんは、念願の専業主婦になったものの、自分は向いていないと痛感。引っ越し、保活、再就職活動を経て、現在はニトリの商品部でシニアデリバリーとして働いています。そのキャリアの道のりについてお話を伺いました。

――結婚後、旅行会社を退職され、職業訓練校で貿易実務を学んだと伺いました。

 旅行会社の仕事はとても楽しかったのですが、月の半分くらいは海外で過ごし、日本で働くときは毎日終電までという生活だったんです。ツアーの企画やパンフレット作りから、アフリカや中南米、チベットなど世界各国の旅行の添乗までを担当。今後、結婚して子どもを育てることになったらこの生活を続けられないかなと思い、27歳の時、結婚を機に退職しました。

 ハローワークに行くと、職業訓練を受けられることが分かりました。海外に興味があるという話をすると、貿易実務という仕事があると教えてもらって、3カ月ほどの集中講座を受けて資格を取りました。そして、人材派遣会社に登録をしたら、すぐに化粧品会社からオファーを頂いたんです。当時、ロンドンに支店がある化粧品会社だったのですが、派遣社員として貿易事務を行う他、少しずつ翻訳や通訳などの仕事も任せてもらうようになりました。

 勤務時間は9時半~17時半だったのですが、夫婦二人の生活で家に帰っても時間を持て余してしまいまして……(笑)。「もっと仕事をしたい」と職場に伝え、頼まれるとつい受けてしまうという私の性格もあって、21時、22時まで働くようになりました。

「専業主婦願望」が強い私 周りは反対

――そんな折に、第一子を妊娠されたんですね。

 はい、数年後に妊娠が分かって、仕事を辞めました。私は当時、「子どもは3歳まで自分の手で育てたい」という「専業主婦願望」が強かったんです。退職する旨を上司に伝えると「正社員になってほしい、ぜひ戻ってきて」と言っていただいたのですが……結局、退職を選びました。私自身、一人っ子で両親が共働きで育ち、家でさみしい思いをしていたので、「いつか子どもを産んだら、家で見てあげたい」という気持ちがずっとありました。

 ところが、周りからは止められました。「あなたは専業主婦に向いているタイプじゃない。絶対にやめたほうがいい」と。その時私は聞く耳を一切持たず、「いやいや、私、専業主婦でも絶対にうまくいくから……」なんて思っていたんです(笑)。

――実際に専業主婦になってみて、いかがでしたか?

 出産前は「なんて自由なんだろう!」と思いました(笑)。つわりもなく、出産に向けてじっくり準備していく時間もあって、ものすごく快適でした。

 ところが……いざ生まれてみたら、いきなりどん底に突き落とされました。

 赤ちゃんはずっと泣いているし、おっぱい欲しがるし、でもおっぱいが出ないし、乳腺炎になるし。ミルクにするとミルクを飲まないし、でもおなかがすいて泣くし。自分は眠れないし、産後の傷は痛む……。「子どもってなんで思うようにいかないんだろう。こんなに大変だとは思わなかった。こんなの聞いてない……」なんて思うことの連続。

 夫は、当時はその大変さが分からなかったようです。産後に実母が3週間ほど来てくれていたので夫婦で母に頼りっきりだったんですよね。夫はおむつを替えるくらいはしましたけど、それ以外は仕事中心の日々。私は精神的、体力的に追い詰められていきました。


生後3カ月で「産後うつ」 夫ともけんか

 生後3カ月くらいには、いわゆる「産後うつ」の状態になっていました。自分で「専業主婦になる!」と言った以上は、家事も育児も完璧にやりたい。でも、どれもうまくいかなくて、なぜだか涙が止まらない。離乳食もしっかり作りたいけれど、頑張っても全然食べてくれない。夜中じゅう立って抱っこして、どんどん疲弊していきました。

 出産直前まで仕事をしていたので、近所にママ友もいませんでした。出産している友人も少なく、気軽に相談できる人がいない。産院で知り合いになった人とは連絡を取っていたのですが、そのうちメールの文面を考えること自体も面倒になりました。人と接することに疲れてしまったんです。

 産休・育休中なら「春になれば仕事に復帰する」というめどが立ちますが、専業主婦でいる限り、育児・家事に向き合うのが一生続くという錯覚が生まれていました。後になってみれば、新生児期の大変さは、1歳~2歳くらいになれば落ち着くと分かるのですが……当時は、この生活が一生続くのではと思い込んでいたんですよね。長い長いトンネルの出口が見えませんでした。

――そんな時に、旦那様と大ゲンカをしたと伺いました。

 はい、ついに限界がきてしまい……。夫の仕事が相変わらず激務で、「今日こそ早く帰ってきてね」と伝えても、「ごめん、今日も遅くなる」「ごめん、今日も飲み会」の連続。もう無理だ、これ以上やっていけない。そして大きなケンカをしまして(苦笑)、ようやく夫がハッと目覚めてくれました。私と向き合って、真剣に話を聞いてくれるようになりました。子どもが6カ月くらいの頃です。

 「やっぱり自分は専業主婦には向いていないんだ」と思い知らされました。

 私の場合、家事と育児だけに向き合っていると、家族がうまく回らなくなる。それなら、少しでも早く仕事に復帰しようと思いました。

――そして、再就職活動を始められたんですね。気持ちはすぐに切り替えられましたか?

 「仕事に復帰しよう」と思い立ってからは、その目標に向かってまっしぐらでした。目指すべきゴールが設定できたので、不思議と「仕事と家庭の両立はできるんだろうか」という心配もありませんでした。現実的には、そこまで考える余裕がなく、とにかく現状を打破したいという一念でした。

 専業主婦になって、自分でお金を稼げなくなったというのも私はストレスに感じていましたね。何を買うにしても「これ買おうと思っているんだけど」と夫に相談することになる。自分でお金を稼いで、もっと自由になりたいなと思いました。

 もし子どもを保育園に預けて、少しでも一人になる時間をつくって、仕事を再開して自分で少しでも稼げるようになったら、状況はきっとよくなるはず。その状況をひたすら思い描きながら、保活と就職活動に力を入れました。

(後編に続く)

聞き手・文/西山美紀 写真/村田わかな

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/07/04掲載記事を転載
念願の専業主婦 なってみたら私には向いていなかった