専業主婦を辞めてよかった 理由は子どもからの手紙

専業主婦を辞めてよかった 理由は子どもからの手紙

2018/05/29

再就職後は「いつもごはんをありがとう」の手紙が変わった

 16年間の専業主婦生活を経て、2年前に45歳で仕事に復帰したサイボウズで広報を務める江原なおみさん。前回の記事「専業主婦16年を経て広報に 新しい働き方の見つけ方」に続き、復帰後の今についてお話を伺いました。

――専業主婦を経て16年ぶりの仕事復帰、ブランクを感じたりはしましたか?

 思ったよりブランクは感じませんでした。新卒時代に、「話を聞きながら、パソコンでメモを取る」といったことを経験していたので、専業主婦時代も自宅のPCで旅行の計画をエクセルで作るなど、パワポやエクセル、ワードも、一通り使い慣れていたので、苦になりませんでした。20代に疲れた……と言いながらも会社員として頑張っていた経験が、16年たっても生きてくるんだなと実感しました。

――仕事に復帰したとき、周りの友達の反応はいかがでしたか?

 働いている友達もたくさんいて、応援してくれましたね。ママ友は反響がさまざまで、「ずっと社会復帰をしたいと思っているけど、多分無理。自分にはできることがそんなにない」という声も多く聞かれました。私が少し前に、TOEICを受けようかな、インターンに行ってみようかな、と思っていた時と同じ状況です。

――専業主婦から仕事をするようになると、家族からの応援も必要になりますよね。

 実は私、夫と5年くらい前から別居しているんです。基本的に育児も家事もいわゆる「ワンオペ」です。こんな私でもなんとかなっているので、きっと皆さん、仕事と家事、育児の両立は大丈夫なんじゃないかと(笑)。今は、経済的にはこれまでと変わらず夫も支えてもくれますし、週に1回は子どもたちに会いに遊びに来ます。ママ友からは「不思議ないい関係だね」って言われます。

 子どもが大きくなってからはどうなるかは分かりません。もし仮に別れた場合、私が一人で生きていくすべがないと困る……ということも仕事復帰を決断したきっかけの一つですね。これから自立していく子どもたちには迷惑を掛けたくないですし。

――毎朝、お弁当作りもあるそうですね。

 そうなんですよ。長男の部活の朝練のためのお弁当作りがあり、私は毎朝4時半起きです(笑)。長年の経験で、私が時間のやりくりが上手ではないとよく分かっているので、土曜日に1週間分の食材の買い出しをして、日曜日におかずを作り置きします。平日心穏やかに過ごすために、週末頑張っています。

家事はアウトソース 時間はタダではないから

 子どもたちが率先して家事を手伝ってくれたらいいのですが、小さい時から仕込んでいないと難しいものですね(笑)。試しに洗濯物を放置してみたら、長男は全く気にせずその山から取り出す。シーツは何週間も取り替えない。結局、我慢できなくて私がやってしまいます。息子からは「ごめん、悪気はないんだけど気が付かないんだよね」って言われます。

――家事で、何か外注をしていたりはしないでしょうか。

 掃除だけは、外注で月に2回来てもらっています。やっぱり時間はタダではないですから、買えるなら買ったほうがいいと思っていて、実は専業主婦時代から、掃除は外注しているんです。海外だと当たり前で、経済的にすごく困っているわけでなければ、収支がトントンになったとしても、その時間に他のことができるのであれば、悪くないなと思って。次男が生まれた頃からプロの掃除代行を活用しています。

――今は、「広報」のお仕事をされていますが、ご経験はあったのでしょうか。

 全く経験したことがありませんでした。「私は広報をやったことがないし、無理かもしれません」と正直に伝えたら、「大丈夫だと思いますよ!」と笑ってアサインされました。私の経歴が少々ユニークだから、取材でお会いするさまざまな方と、雑談などで使えると思ってもらえたのかな……。

 同じ広報職の男性に、ゼロから教えてもらって学びました。いろいろな方にお会いできて、毎日すごく楽しいですね。最近は、「もう少し英語を使える仕事を」と、少しずつ法務や人事のサポート業務をさせてもらえるようになりました。

 私は法学部出身で、新卒でソニーに入った時は法務に行きたいと思っていました。当時はそれがかないませんでしたが、20年以上たって、もう一回法務の仕事にチャレンジできると思うとワクワクしています。ただ、毎朝4時半起きで、夜は23時就寝。勉強時間を捻出するのが課題です。

――仕事に復帰しておよそ2年。お子さんはいかがでしたか?

 私がインターンの1カ月間は大丈夫だったのですが、正社員で働き始めたら、次男が寂しさのストレスで、最初の半年間は何回も熱を出したんです。当時は小4だったのですが、テレビで待機児童の話が出ると「お母さんは、子どもが小さい時は家にいたほうがいいと思う」と全力でアピールしてきたりして(笑)。

 もちろん、かわいそうだなと思って悩みました。その一方で、中学生になっていた長男は親なんて気にせず毎日を謳歌している。きっと今はお互いの踏ん張りどころなんだなと感じて、なんとか乗り切っています。

――江原さんご自身は、復帰前に心配していた「自分の体力」などの面はいかがですか?

 私自身は今のところ大丈夫そうですね。子どもが熱を出そうが、インフルエンザになろうが、私は元気に出社できています。専業主婦時代は、家に1日中いるタイプではありませんでした。PTAだ、習い事だと外に出掛ける忙しい毎日で体力がついていたようです。また、子どもの帰宅時間までに逆算して家事を片付ける時間のやりくりが身に付いていたのかもしれません。

 ただ、働き始めてからは頭の中だけでスケジュール管理ができなくなってしまいました。やることが多く私の脳のキャパを超えてしまい、子どもの歯医者の予約を何度も忘れたり、授業参観だと思って休みを入れていたら翌週だったり、塾の日程を振り替えたら、振り替えた先の日を忘れて電話がかかってきたり……。今は、予定をすべてスマホに入れるようにしています。

復帰後の思ってもみなかった「いいこと」とは

――以前、仕事を辞める時に、お母様に反対されたとおっしゃっていましたが、復帰してからはいかがでしたか?

 母はすごく喜んでいます。母はずっと専業主婦でした。私が子どもの頃、母の日やお誕生日に「おいしいごはんを作ってくれてありがとう」というメッセージカードを贈っていました。でも、私が高校生くらいの時に「そうよね、私はごはんを作る人なのよね」って、ぽろっとこぼしたんです。あまりうれしそうな様子ではなくて、「なんでだろう?」と思っていたのですが……「ママ、いつもごはんをありがとう」というメッセージを私が息子からもらうようになって初めて、母の気持ちが分かったんです。「お母さんってそういうふうに見えるかもしれないけど、もっと他にできることもあるのよ」と。

 最近、働き始めてから、子どもたちは違うことを書いてくるようになりました。「いつも仕事も大変なのに、おうちのことも頑張ってくれてありがとう。応援しているよ!」って。働いている母親を見てくれているんだな、とうれしい気持ちでいっぱいになります。

――お子さんとの会話も変わりましたか?

 これまでは「学校どうだった?」と、親から一方的に質問してばかりだったんですよね。でも、私も仕事でいろいろ学んできたから、自分のことを話したい!と思うようになって、「こんな人に会って、こんなことを聞いてきたよ」「社会はこんなふうに変わっていくから、将来のことを真剣に考えたほうがいいよ」なんて、社会のいろいろなことを伝えられるようになりました。

 働いていると話題が豊富になるから、子どもも親の話を興味津々で聞いてくれます。再就職してからは、子どもの進路の悩みに答えてあげられるという自信も出てきました。

 働き始める前までは、16年間のブランクがあって不安ばかりでしたが、いざ働くようになってみると、思ってもみなかった、いいことがたくさんありました。通勤は日々大変ですし、早起きもつらいですが、育っていく子どもたちといい関係を築けています。そして何より、仕事をすることが本当に楽しい。16年間の専業主婦生活を経て、ちょうどいい場所にたどり着いたように思います。

文/西山美紀 写真/鈴木愛子

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/05/29掲載記事を転載
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