「元・専業主婦がキャリアを積む」が増えている理由

「元・専業主婦がキャリアを積む」が増えている理由

2018/05/15

市場急拡大 ブランクがあっても働き方を選べる時代がきた

 今、多くの企業で女性が出産後も働き続けられるよう、両立支援制度が整備されてきています。しかし、半数近い女性が第一子の出産をきっかけに仕事を辞めているのが日本の現状です(※参考 男女共同参画白書H29年度版)。自らの希望で辞めたのか、辞めざるを得なかったのか、理由は人それぞれですが、今も出産後に専業主婦となる道を選ぶ女性がいます。

 これまで「一度会社を辞めて専業主婦になったら、単純作業のパートの仕事しかできない」といわれてきました。ところが今、深刻な人手不足を背景に、専業主婦も積極的に採用したいと考える企業が増え、再度キャリアを積み重ねていこうと働き始める元・専業主婦が増えてきているといいます。

 果たして専業主婦から再びキャリアを築いていくことは可能になってきたのでしょうか。また、キャリアにブランクがあっても採用され、活躍する女性はどんな人なのでしょうか。急拡大している専業主婦からの再キャリア市場について取材してきました。

増える、専業主婦の再就職

 「キャリアにブランクのある主婦層の採用市場は、求人数、求職者数共に年々拡大していて、年代も40代、50代まで広がっています」。そう話すのは、主婦層に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関、しゅふJOB総研所長の川上敬太郎さん。

 背景には、有効求人倍率が1.59と歴史的な高水準となるなど、人手不足の深刻化により、求人数そのものが増加していることもありますが、採用した主婦の人が社内で活躍する姿を見て、その能力の高さに気付き始め、リピートする企業が増えてきたということがあるようです。

 とはいえ、主婦層の採用に積極的なのは、大企業よりも人手不足が深刻な、中小、ベンチャー企業が多いとのこと。業種、規模などは多岐にわたります。職種は意外と事務系が多く、求職者側も事務職を希望する人が圧倒的に多いそう。

 女性のキャリア支援を行うWarisで再就職支援事業を手掛ける小崎亜依子さんは、「女性に人気の事務職はベンチャーでニーズがあります。特に、経理や法務、人事などを一手に引き受けられる人材へのニーズは高いです。ただ、今は本当に優秀な人が採れないので、必ずしも高い専門性がなくてもポテンシャルの高い人がいたら採用したい、という企業が増えています」と話します。

 また、事務職以外では「コミュニケーションスタッフ」と呼ばれる仕事もニーズが高く、主婦層の活躍を求められています。

 「コミュニケーションスタッフとは、いわゆる接客や販売という職種の括り仕事ではなく、既存顧客との関係維持のためのルート営業や、マンションのコンシェルジュなど、高いコミュニケーション能力が求められる仕事を称してそう呼んでいます。一般的な営業職のイメージとは異なり、ノルマに追われるのではなく、比較的自分のペースで働けるので、実際、主婦の方も増えています」(しゅふJOB総研川上さん)。

 同様に、高度なコミュニケーション能力が必要なホテルなどの「おもてなし人材」も不足していて、主婦層への期待が高まっています。

働き方、仕事の選択肢が増えている

 市場の拡大に伴って、働き方の選択肢も増えています。人材不足の中、少しでも人材を確保したい企業は、時間に制約のある主婦層が働きやすいよう、柔軟な勤務条件を提示するようになってきています。

 「これまではフルタイム勤務を条件にしていた企業が、週4日10時~16時など、主婦層が希望する勤務条件を出して、歩み寄りを見せてきているのです」(しゅふJOB総研川上さん)。

 ビースタイルでは2018年1月より、「これまで培ってきたスキルや経験を生かしたい、キャリアを途切れさせたくない、でも子育てなどで一時的に仕事をセーブして働きたい」というハイキャリア女性に適した、時短の人材サービス「スマートキャリア」を開始。出産後、時短勤務となることで、仕事と子育ての両立はできるものの、これまでとは異なるキャリアを選ばざるを得なくなる「マミーズトラック」を回避し、スキル、キャリアを維持、継続するための選択肢の一つとして選ぶ人が多いとのこと。専門性の高いスキルや能力のある人は時給単価が高く、週3~4日勤務で時給3000~4500円の仕事の求人も少なくないそう。

 高い専門性やスキルのある女性は、フリーランスという働き方も選択肢の一つ。Warisは、人事・労務、経理・財務、広報・PR・マーケティングなど高い専門性を持ったフリーランス女性を企業にマッチングするサービスを行っています。

 「キャリアを積み重ね、高い専門性、スキルを持った人であれば、複数社から業務委託という形で仕事を受けたり、打ち合わせのみ出社して在宅で働いたりと、フリーランスとして自分の希望するスタイルで自由に働くことができるようになってきています」(Waris小崎さん)。

 しかし、5年、10年とキャリアのブランクがある人にとって、フリーランスはかなりハードルが高い働き方……。そこでWarisでは、2016年よりキャリアにブランクのある女性のための再就職支援サービス「Warisワークアゲイン」を展開。再就職を希望する女性向けにキャリアカウンセリングを行う他、仕事紹介、企業でのインターンシップなどを提供しています。

 「サイボウズで行ったキャリアママインターンではインターン参加者の8割が正社員として採用されました。10年以上のブランクがある女性でも十分に戦力になることを示すことができ、手応えを感じています」(Waris小崎さん)。

 仕事の現場を離れたブランクのある専業主婦がすぐに正社員に採用されるというケースはまだ少ないですが、このまま働く人の数が減り続けることを考えると、今後はそうした可能性も広がっていくかもしれません。

文/井上佐保子 写真/PIXTA

この人に聞きました
川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)さん
ビースタイル しゅふJOB総研所長。テンプスタッフ(現パーソルホールディングス)で新規事業責任者などを歴任。転職後は執行役員など管理職として、営業・経営企画・人事といった人材サービス事業のほぼ全てのセクションに携わる。2010年にビースタイル入社。2011年より現職。厚生労働省委託事業検討会委員、男女共同参画センターでの講演など、主婦人材の活躍推進や人材サービス業界のあり方について積極的な意見提言を行う
小崎亜依子(こざき・あいこ)さん
Waris ワークアゲイン事業 統括/Waris Innovation Hub プロデューサー。野村アセットマネジメントを経て、留学・出産育児で5年のキャリアブランク後、NPOのアルバイトで復職。2007年より日本総合研究所で企業のESG評価などを担当した後、2015年Warisに参画。キャリアブランクのある女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」を手掛け、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。著書に『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当)など

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日経ウーマンオンライン

2018/05/15掲載記事を転載
「元・専業主婦がキャリアを積む」が増えている理由