じわじわ違和感 31歳クリエーティブ転職の始まり

じわじわ違和感 31歳クリエーティブ転職の始まり

2017/09/04

大手に就職 手がけた作品もヒット だけど次第にモヤモヤ

 デザイナーといえば、クリエーティブな専門職というイメージですが、その転職事情はどうなっているのでしょうか? 今回は大手メーカーの広告部パッケージ担当から小規模なデザイン事務所に転職をした31歳デザイナー女子に、就職活動の話から、デザイナーの求人の探し方、ポートフォリオと呼ばれる過去の制作物をまとめた作品集作りなど、デザイナーならではの転職ストーリーを聞きました。

新卒入社で大手メーカーの広告部パッケージ担当に

 ふんわりと優しげな空気をまとった杏子さん(仮名、31歳)は美大卒業のデザイナー。1年ほど前に入社したデザイン事務所で食品や化粧品などを中心としたパッケージのデザインを手掛けている。「今の会社は小さいのですが、雰囲気もいいし、いろいろなクライアント向けのデザインの仕事ができて楽しいです」と、笑顔で語る。

今の会社は規模も小さいですが、新しいチャレンジができます 写真はイメージ (C) PIXTA

 前職では国内では名の通った大手メーカーの広告部でパッケージを担当していたという杏子さん。「大学卒業前、厳しい就職活動の中で途方に暮れていたのですが、偶然、大学にデザイナーの求人が入り、勧められるまま応募したところ、入社できたんです」。業界的にも、デザイン専門職の募集はわずかな枠しかないため、タイミングよく内定が出たのは幸運だったと振り返る。

 杏子さんが所属していた部門には、20代から60代まで各世代1~2名ほどデザイナーがいて、全部で10名ほど。勤続20年、30年という人もいて、比較的のんびりしたアットホームな雰囲気で、残業もほとんどなく、居心地のいい職場だったという。

3年目からヒット商品をデザイン

 仕事内容は自社製品のパッケージデザインや外部デザイナーとのやり取り。種類も多く、また次々と新商品や限定商品などが発売されるため、仕事は忙しかったが、「商品パッケージを一からデザインするというよりは、元のデザインに少しずつ修正を入れていくような細かな仕事が多かったです」。それでも、全国の小売店で扱われている商品のパッケージデザインに関われるということで、やりがいは大きかったという。

 印象に残っているのは、入社3年目に手掛けた新商品のパッケージデザインの仕事だ。

 「今までにないような画期的な商品だったので、先輩にサポートしてもらいながら、商品の魅力を感じてもらえるよう工夫してデザインをしました。すると、その商品が大ヒットしたんです。雑誌の取材が来たりもしました。自分が一からデザインした仕事が評価され、とてもうれしかったです」。また、パッケージデザインを担当した商品がロングセラーになるなど、結果を出せるようにもなり、やりがいを感じていた。

 一方で、いくつか気になっていたこともあった。

 一つは先輩デザイナーたちと仕事のスタンスが違うこと。デザイナー室には勤続年数の長い年配のデザイナーも多く、既存のデザインの小修整をするような地味な仕事も多いためか、「ヒット商品を作ろう」といった気概のない人が多かったという。

やりがいはあったが、次第にモヤモヤを感じ始めることに… (C) PIXTA

 中には仕事を振られないように忙しいフリをする人もいて、他の部署の人からは「デザイナーのみなさんは残業もなくていいですね」などと嫌みを言われることも。しかし、その原因はもっと別の根深いところにあった。

実は入社2年目から転職を決意していた理由

 先輩デザイナーたちのモチベーションが低い大きな原因となっていたのは、デザイナーたちの雇用形態だった。この会社のデザイナーたちは、実は杏子さんを含め、全員が契約社員や派遣社員の非正規社員だったのだ。

 そのため、昇進や異動もない。「なぜそうなったのかは分かりませんが、同じ会社の中にいながら、半分外部のような存在だったのです」

 交通費も支給されていたが雇用保険は払われないなど、なんとも中途半端な存在。ヒット商品を出せば評価が上がって給与が増えるというものではなく、給与は常に一般社員の基本給と同じ程度。残業代やボーナスは出ないため、副業をしていた先輩デザイナーもいた。

 しかし、そうした事情は一般社員には知らされていなかったため、「他の部署の社員からは、同じような働き方をすることを求められ、なんとも複雑な心境でした」。

 こうしたもやもやとした思いと共に、同一メーカーの商品パッケージだけでなく、もっと多様な仕事をしたいという思いが相まって、実は、入社2年目くらいから転職を意識していたというのだ。

 ちょうどその頃、杏子さんは彼との結婚が決まる。杏子さんの転職活動はその後どう進んでいくのか……。来週に続く。

文/井上佐保子 写真/PIXTA

◆変更履歴:本文を一部修正しました。(2017年9月4日)

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日経ウーマンオンライン

2017/09/04掲載記事を転載
じわじわ違和感 31歳クリエーティブ転職の始まり