BLM運動 目をそらさずに、私たちが今できること

BLM運動 目をそらさずに、私たちが今できること

2020/09/07

現代のアメリカで黒人として生きることを描いた映画『ヘイト・ユー・ギブ』

2020年5月25日に米・ミネアポリスで起きた、ジョージ・フロイド氏殺害事件に端を発したBlack Lives Matter(BLM)運動は、大きなうねりとなって世界中に広がり、今もなお続いています。現代のアメリカで黒人として生きるということについて、一人の女の子の目線から描かれている作品『ヘイト・ユー・ギブ』をご紹介します。

あなたがくれた憎しみ

 5月下旬、米ツイッター社がトランプ大統領のツイートに対し「暴力を賛美し、ルールに違反している」として表示制限をかけました。その内容は、激化する抗議活動に対して「(抗議をしている)『THUGS』は、ジョージ・フロイドの名誉を傷付けている。(略)略奪が始まれば、銃撃が始まるだろう」というものでした。

 これに対してテイラー・スウィフトをはじめ多くの人が抗議し、中でもビリー・アイリッシュ(米国の歌手)は「なぜ黒人は黒人であるだけで殺されるの? なぜ無実の黒人が殺されて、それに抗議をすると『THUGS』と呼ばれなくちゃいけないの?」と怒りを爆発させた長文をインスタグラムに上げました。

 「THUGS」とは「THUG」の複数形で、強盗・極悪・ギャングという意味を持つスラング。白人が黒人に対して使うのは、「ニガー(一般に黒人を指す蔑称として用いられるスラングの一つ)」と言うのと同じく、非常に侮蔑的な表現です。

 「THUG LIFE」とは「わが道を行く、ギャングスター人生」といった意味のフレーズですが、これはもともと、1990年代半ばにギャング同士の抗争によって早世した2PACという伝説のラッパーのリリック、「The Hate U(=You) Give Little Infants, Fucks Everybody(お前が小さな子どもに与えた憎しみが、何もかもを破壊する)」の頭文字をとったもの。そしてこの言葉は、映画『ヘイト・ユー・ギブ』のタイトルでもあり、テーマにもなっています。

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現代のアメリカで、黒人として生きるということ

 主人公スターは黒人で、ゲットー(低所得層の黒人や有色人種の居住地)で生まれ育ち、白人の生徒が多い私立高校に通う女の子。学校では白人の友達ヘイリーや、白人の彼氏もいる。けれど、自分に「怖い黒人」のイメージがつかないように、校内で黒人のスラングは使わず、笑顔を絶やさず、本当の自分を隠して過ごしています。

 ある週末、地元で開かれたパーティーで、偶然再会した幼なじみのカリルに車で家まで送ってもらう途中、二人は白人警官に車を止めるよう求められます。しかし、取り調べ中、カリルは丸腰だったにもかかわらず、警官に射殺されてしまい……という、ティーン向けの小説が原作の作品です。

 映画の冒頭、スターのお父さんが11歳の兄セブンと10歳のスター、1歳の弟セカニの前で「警官に車を止められたら、悪いことをしていなくても、両手をダッシュボードの上に出して、決して動かさないこと。そして、反抗せずに聞かれたことにだけ答えなさい」と教えるシーンがあります。

 この場面は、警官は困ったときに市民を助けてくれる存在だと無邪気に思っていた私には、かなり衝撃的でした。映画の中の話だけでなく、インターネット上にも黒人の親が小さな子どもたちに警官への接し方を教える動画が実際にあります。これが黒人として生まれ、アメリカで生きていく上での現実なのだと思うと本当に悲しく、胸が締めつけられます。

 さらに興味深いのは、スターの通う高校の白人の生徒たちと、ゲットーに暮らす黒人の子どもたちの人生が、見事に対比して描かれているところです。

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日経doors

2020/08/27掲載記事を転載