夢を追って挫折。3年無職を経て資金調達に成功

夢を追って挫折。3年無職を経て資金調達に成功

2019/05/08

(下)伊藤宏美/借金500万円を1年で完済した「お金を使わない」仕事術

集客コンサルタント会社Smart Beを立ち上げて2年。代表の伊藤宏美さんは、講座とセミナーをビジネスの軸に年商5500万円、年間1000人以上集客するほど事業を拡大させています(ゼロから「ひとり起業」、SNSやメルマガはこう使う)。しかし、起業するまでは複雑な経過があったとのこと。後編はその道のりと資金調達、組織運営のポイントを伺いました。

2度の転職の末、3年無職に

 私は37歳で起業するまで、職を転々としました。学生時代は芸能事務所に所属して一時は女優を目指しましたが、芽が出ず、新卒でジュエリー会社に就職。でも、どうしても夢を諦め切れず、今度は舞台女優を目指して退社しました。それもうまくいかず、26歳で転職支援サービスの会社に就職し、さらに30歳でIT系企業に転職しました。

 IT系企業では、新卒や中途の採用を担当。平成生まれの新入社員が次々に入社するのを目の当たりにして、自分の居場所がなくなる恐怖感に襲われました。

 「このまま大きな組織でお局様になるのは絶対にイヤ」。そんな思いを抱きながら『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)や本田健さんのビジネス書を読みあさるうちに、永遠にラットレースを続ける会社員はスッパリ辞めるしかないと独立を決意したのです。

 しかし、34歳で会社を飛び出してみたものの、何をしたらいいのか分からず、3年間はアルバイト生活を続けました。昼は学生アルバイトと並んでコールセンターで働き、夜は銀座でホステス……。そんなときでも、本当にやりたいことを見つけるためにビジネスセミナーには参加していました。今考えてみると“前向きなプータロー”でしたね。

 ある日、不規則な生活と過労がたたり体調を崩しました。ベッドでぼんやりスマホの画面を眺める日々を過ごすうちに、SNSに毎日投稿する大切さや、新しいことを始めるには“友達”を増やしたほうがいいのではないか、ということに気が付きました。積極的にFacebookで友達を増やしてコミュニケーションを取るようにしたのはこの頃からです。


起業時は借金500万円。お金を使わない術を考えた

 私は、3年間のアルバイト生活で500万円の借金をつくっていました。そこから起業したので「いかにお金を使わず、ビジネスを成功させるか」を真剣に考えました。私が主催するセミナーを「お茶会」にしたのは、コスト的な理由でもあります。

 個人事業を法人化したのも節税対策ですね。ただし、法人化はそれ以上の効果があります。私が一企業の代表になることで、SNS上でいい印象を与えられますし、法人向けのセミナーでは個人事業より契約につながりやすい点も魅力です。

 会社は東京都品川区に登記しています。品川区は女性の起業に特化した区立の創業支援センターがあるなど、女性起業家にとても親切です。

 資金調達を始めたのは、借金を完済して事業が軌道に乗り始めた1年前から。今は、起業2年までなら結構な額を貸していただけるので、私は日本政策金融公庫から1000万円を借りました。

 事業の拡大に伴い、社員を一人雇用しています。税金や社会保険料といった負担はもちろん増えますが、ビジョンを共有する仲間が欲しかったためです。将来を見据えたとき、業務委託ではなく、一緒の船に乗る同志が必要だと思いました。

 社員は一人ですが、私には5000人のFaebook友達、3000人の無料サロン会員と、160人の有料講座受講生(塾生)といったネットワークがあります。これだけ大規模になると、ピラミッド型のヒエラルキーがあるように思われますが、私が大事にしているのはフラットな組織。特に女性にはそうしたスタイルが向いていると思います。

 フラットな組織運営をするために、特に意識している点が3つあります。SNS上での対応で偏りが出ないようにすること、メンバーと1対1での食事は避けること、そして実績を残した人とだけ食事会を催すといったことです。

 それでも、どうしても縦型の組織になりがちです。会社員時代の先輩に「組織づくりには、上司があれこれ言うのでなく背中を見せる“率先垂範(そっせんすいはん)”が大切」と教わり、今、実践しています。私自身もいろいろなセミナーに勉強しに行っていますので、同じく学ぶ側の立場で塾生を誘うようにしています。


イベントに参加できない男性から“クラファン”支援

 4月14日に品川区で主催した美容と健康をテーマにしたイベント「Smart Beauty EXPO」は、資金調達としてクラウドファンディング・サービス「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」を利用しました。開始から28時間後には目標金額の50万円を突破し、166万円を集めました。

 クラウドファンディングを利用したきっかけは、女性限定のイベントのため、応援したいという申し出のある男性に参加いただける機会をと思ったためです。当日会場に飾るスタンド花に名前を入れる、配布するチラシに名前を掲載するといった形で、男性も間接的に参加できたらいいのではないかという発想です。最終的に、104人の支援者のうち4分の1が男性でした。

 もちろん、何もしないで成功したわけではありません。クラウドファンディングでイベントの集金をするのは難しい。初めの1週間で目標金額の70%を達成しないとその案件は達成できないというセオリーを踏まえ、SNSやメールで協力を呼びかけました。その結果、大きな成果を上げられたのです。


ヒントを与えてくれるのは、いつも「他人」

 日経ARIA読者には、起業に興味のある方が多いと聞きました。「迷ったとき、答えは自分の中にある」と言う人もいますが、私は逆。答えは他人が持っているものだと思います。だって私自身、約40年生きてきて、自分ではまだ答えが見つけられないわけですから。

 自分のことがよく分からない状態では、才能を見つけるのは難しい。だからたくさんの人に会うことが大切です。正しいことも間違っていることもあるかもしれませんが、そうした経験を自分で受け止めると、気付きが得られます。

 今は情報があふれている時代です。家の中で悩んでいるのなら、「外に行く」「他人と話してみる」という気持ちで新しい人と出会うと、探している答え、起業のヒントも見つかるのではないでしょうか。

 私自身の次の目標は、2020年に女性のためのシェアオフィスを作ることです。起業しても、場所がなくて困っている人がたくさんいます。また、あったとしても高い。借りやすくて、さらに人脈の交流が図れる女性のためのシェアオフィス。みんなで支え合い、お互いの能力を生かしながら成長できる環境をつくりたいと思っています。

取材・文/阿部祐子 写真/稲垣純也

Profile
伊藤宏美(いとうひろみ)
合同会社Smart Be 代表
1980年生まれ、神奈川県出身。インテリジェンス、GMOペイメントゲートウェイなどを経て、2017年、「会社に雇われず自立したい」思いから個人ビジネスを起業。ソーシャルメディアを利用した独自の集客メソッドで、年間1000人以上を集客する。「賢女の集客アカデミー」を主宰し、250名の起業を支援。2019年4月には、多様な働き方や生き方を求める女性向けのイベント「Smart Beauty EXPO」を企画・開催し300人の参加者を集めた。

Provider

日経ARIA

2019/04/24掲載記事を転載
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