小島慶子さん「実は専業主婦になりたい」の相談に回答

小島慶子さん「実は専業主婦になりたい」の相談に回答

2018/09/27

やっぱり、働いたほうがいいでしょうか

 「そんなこと自分で考えろ!」と言われることは分かっている……。だけど、モヤモヤと考えてしまうささいなことを、小島慶子さんにぶつける本連載「小島慶子さんにこんなコト聞いちゃいました」。今回は、「専業主婦」について、小島さんに聞きました。

Q.実は専業主婦になりたいんですが、どう思いますか?

 育休を早く切り上げて仕事復帰しちゃったくらい、私は専業主婦に向いていなかったなあ。特に第一子の時は子育ての経験も知識もないなか、周りに頼る人もおらず、それでも朝から晩まで絶え間なく家事はあって。「これやったら休んでいいよ」って誰かが言ってくれるわけじゃないし、完璧にこなしたとしても評価もされず給料も出ない。つらかったですねえ。

 それでも育休を取った時には、毎日家の中をきれいに掃除して、栄養バランスを考えたおいしい料理を出そう、完璧に家事をやろうと思っていたんです。でも今考えればそれは、「私も母のようにきちんと家事をやらなければいけない」という刷り込みだったのかもしれません。

スーパー専業主婦だった母の刷り込み、最近やっと解けました

 私の母は海外転勤もある商社マンを夫に持つ専業主婦でした。母の母は教師として忙しくしていたし、兄弟も多くて貧乏暮らしをしていたそうなので、ずっと家族の愛情に飢えていたんでしょう。母は満たされなかったものを満たす場として、自分の手で理想の家庭をつくりたかったのだと思います。だから結果として、「理想の娘」や「理想の家庭」といったイメージを私と姉に押し付ける過干渉になってしまったんですけど。

 私よりよっぽど優秀だった姉は働こうと思えばいくらでも働き口はあったと思いますが、数年だけ働いた後、25歳で一流サラリーマンの主婦に納まりました。それはやっぱり、母の考える女の幸せ=大企業に勤める夫の妻、という刷り込みのせいではないかと今でも思います。

 片や妹の私は、経済力のなさから父に頼るしかない母の姿を見て、絶対に自分は経済的に自立しようと思っていました。

 自分が大黒柱として働くようになったここ数年は、時々仕事に疲れてセレブ専業主婦はいいなあなんて思うこともありますけど、そんな現実逃避をしていては暮らせない。四の五の言わずに働かなくちゃ生きていけないので、女の幸せとは家庭か仕事か? とか悩む暇がなくなりました。

 それまで共働きの間は、子どもに対しては「母親が働いているのはよくないのかな」、夫に対しては「家のことをなんにもやらない妻だと思ってるんだろうな」と、誰にも何も言われていないのにもかかわらず、背後霊のように被害妄想や自分を責める気持ちがついて回っていました。

 やっぱり自分の母の姿と比べてしまっていたのかな。もしも母が働いている姿を見て育ったら、そんなふうには思わなかったのかも。

専業主婦はスーパーリスキーだと心得ておく

 もしかすると世代的に読者の皆さんのなかには、「専業主婦」という生き方が、昔から存在しているように思う方もいるかもしれません。でも実際はそうではなくて、専業主婦というのは1950~60年代、高度経済成長期に男たちを24時間会社に縛り付けておくためのシステムとしてつくられたものなんです。

 でも2018年の日本では男一人で家族全員を養う賃金を得るのは難しくなってきているし、そもそも24時間働いたら人は死ぬ、ということにも気が付いた。若い世代の男性は、結婚するなら相手にも働き続けてほしいと思っている。時代が変わったんですね。

 にもかかわらず、「女の幸せ=家庭に入ること(できれば一流企業の正社員の)」という母親世代から刷り込まれた価値観だけが根強く残っている。だから皆さん、もうお母さんの言うことを真に受けなくていいんですよー。というか、もはや真に受けてると危ないかもしれませんよー。

 もちろん、専業主婦になるな! と言ってるんじゃないです。なりたい人はどうぞ。生き方は個人の自由ですからね。ただ、リスクを知った上でやってほしいと思うんです。

 というのも、専業主婦というのはリスクが高いんですね。何がそんなにリスキーかというと、特に子どもがいる場合、ある日突然シングルマザーになる可能性があるからです。

 なぜなら夫はロボットではないので、一生働き続けてくれる保証なんてないからです。旦那さんが亡くなるとか浮気されて別れるとか会社が倒産するとか鬱になるとか、本当にいつ、何が起こるか分かりません。社会から手厚く守られた専業主婦も、伴侶を失ってしまったら、弱い立場になることが多いシングルマザーになってしまう。母子世帯の8割が生活苦を訴えている(*)という調査結果もあり、悲しいかな、今の日本社会では女一人で子どもを育てることは極めて厳しいのが現状です。

 この構造自体、男性のお世話係をする女性を厚遇し、それ以外の女は自力でなんとかしろと言わんばかりですね(怒)。

*平成28年 国民生活基礎調査より
「専業」でなく「兼業」、いろんなことに首を突っ込んでおこう

 そんな中で今よく言われているのが、「1本の太いつながりより、10本の細いつながり」という生き方です。

 滅私奉公で会社とだけつながっていれば家庭をおろそかにしても生きていける時代はとうに終わっています。そんなサラリーマンの生き方が変わったのと同様に、専業主婦も子育てに専念するのではなく、月数回だけ働いたり、いろんな友達とつながったり、気が向いたときにボランティアをしたりと、細く、多種多様なつながりを持つことがリスク回避になり、ひいては幸福度もアップするという考え方です。

 例えば一つのママ友グループとだけ付き合っていると、何かのトラブルで気まずくなったとき、他に話のできる人が誰もいなくて即座に孤立してしまいますよね。でもママ友も細い10本のつながりのうちの1本でしかないっていうくらいの関係の持ち方を常日ごろからしていれば、何かあったときに逃げ込める場所が多いし、いろんな生き方の人と接することができる。それが自分自身の糧になるわけです。

 以前この連載で紹介したソーシャルセクターでの活動も、細いつながりの1本としておすすめ。ここからわらしべ長者的にさまざまな人脈が得られますし、私自身、自分の子どもが生きていく社会の手入れをしておく、という意味で参加しています。

*ソーシャルセクターを紹介した過去記事「小島慶子さんに質問 猫を飼う&家購入=結婚遠のく?

 専業主婦願望のある方は、そんなふうに10本の細いつながりを意識してもらいながら、それでもやっぱり一度は働いておくことをおすすめしたいなあ。というのも、社会経験が浅い人をなかなか企業は採用してくれません。万が一働くことになったときに就職できる環境だけ整えておいてはいかがでしょうか。

仕事で輝けなんて、余計なお世話だね

 「働く」というとどうしても「生きがい」やら「輝ける場所」やらって考えがちですけど、正直、お金が手に入ればそんなのどうだっていいですからね(笑)。生きていけるだけのお金があればいいだけで、仕事で輝かなきゃなんて思う必要ないんです。

 就職や転職ってなると脅迫のように自己実現とかやりがいとかって単語が出てきますけど、そんなものは仕事だけで達成するものではないし、働いている時、ごくたまーにそんなことが感じられたら万々歳くらいでいいんじゃないでしょうか。

 本題とそれていきますけど、そこがまだ女にとっての仕事がオプションだと思うところでもあって。

 「働かなくてもいいのに働いているんだから、キラキラ輝く仕事じゃなきゃ!」みたいな価値観って私が大学生だった25年前とかの話で、今はとにかく働かなきゃ食えない時代になっちゃってるにもかかわらず、一部のメディアや親の価値観はいまだに「働く女性はすてきだ!」だったりする。生きるための仕事なんて、すてきでも何でもなく、日常だわ。口を酸っぱくして言いますけど、別に輝くのは職場じゃなくたっていいですからね。女性が輝く社会より、男も女も輝かなくても安心して生きていける社会のほうがずっといいよ。

 それに、会社に就職することだけが仕事じゃないですよね。今は複数の仕事を同時並行的にやっている人も増えてきてるし、一つの組織や同じ場所に属したり居続ける必要もなくなってきている。

 働き方が昔みたいに会社に人生を捧げるスタイルじゃなくなっているのと同じように、主婦像も、家庭に入って夫と子どもに人生を捧げるという昔のスタイルから、いろんな活動をしているなかの一つが主婦、みたいな生き方が普通になってきてるんじゃないでしょうか。

資産家と結婚した場合のみ、本気の専業主婦ができるでしょう

 あと専業主婦と働いている女性って、互いにいがみ合ったりして、不幸なことに分断されてしまうことが多いですよね。それって「仕事 or 家庭」と二者択一を自分に迫るような気持ちがまだみんなの中にあって、選んでしまったら後に引けないから、「私のほうが正しい」と互いが主張し合うことによって起きているのではないでしょうか。

 でも本当はそうじゃなくて、人生のフェーズによってバリバリ働く時期もあれば、仕事をセーブして専業主婦になる時期もある。そうやって使い分けできるようになるのが一番いいですよね。

 理想の世の中は、男も女も働くときもあれば、働かないときもある。それで暮らしていける社会。辞めたいと思ったときは仕事を辞め、戻りたいときは戻れるように労働市場の流動性を高め、仕事に人生を合わせるんじゃなくて、人生の変化に仕事を合わせることができるように。だって誰の人生も何が起きるか分からないから。

 専業主婦願望がある方は、もしも働かなくちゃいけなくなったら? と常に想定して、ちゃんと手を打っておきましょう。だから結婚前にある程度キャリアを積んでおくことは大事ですね。

 ただし、桁外れの資産家と結婚できたら話は別です。夫が病気をしても治療費や生活費に困ることもないでしょうし、離婚や死別したとしても財産分与や慰謝料、遺産相続などがあるでしょう。なのでもしその線を狙うのであれば、法律と資産運用についてしっかり勉強しておきましょうね。

 私は、飛行機で隣の席に乗り合わせた資産家が「楽しかったから鉱山1個あげるよ!」とか言ってくれないかなと夢想しつつ、出稼ぎ大黒柱として粛々と働きます。

聞き手・文/小泉なつみ 写真/稲垣純也

Profile
小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。東京大学大学院情報学環客員研究員。放送局アナウンサーとして15年間勤務の後、現在はタレント、エッセイストとして活動中。高1と中1の息子あり。現在は家族の拠点をオーストラリアに移し、自身は仕事で日豪往復の日々。著書に「るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記」(講談社)、「ホライズン」(文藝春秋)など。
ツイッター:@account_kkojima

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日経ウーマンオンライン

2018/09/27掲載記事を転載
小島慶子さん「実は専業主婦になりたい」の相談に回答