人生で大切なものを教えてくれる 小西美穂が選ぶ5冊

人生で大切なものを教えてくれる 小西美穂が選ぶ5冊

2019/01/16

キャスター小西美穂の七転び八起きを支えてきた5冊の名著

 皆さんには「人生を変えた本」はありますか? 社会に出るとき、仕事で行き詰まりを感じたとき、私はこのままでいいのだろうかと悩んだとき……人生の転機で、ふと出会った書籍の一節に支えられた経験、誰もがあるのではないでしょうか。今回は、日経ウーマンオンラインの連載でおなじみ、著書の「小西美穂の七転び八起き」でも数多くの働く女性の背中を押してきた、日テレキャスター・小西美穂さんに、人生を変えた5冊の本を紹介してもらいました。

 私の人生は、本と共にあるといっても過言ではないくらい、学生時代から今に至るまで、多くの本に支えてもらいました。キャスターという仕事を目指したきっかけも本でした。日経ウーマンオンラインの連載で何度もお話ししてきた仕事とプライベートの「暗黒時代」も、本が相談相手になってくれました。

 今回挙げた5冊の本は、古い本が多いと感じるかもしれません。ただ、初めて読んだ時に感じた本から得られるメッセージや心に響く言葉は、2度目、3度目と手に取った時に変化することもよくあります。何度読んでも「今の自分」に必要な栄養を与えてくれる。そして、私がこれからの人生でも大切にしていきたい素晴らしい本を5冊、厳選してみました。

人生の指針にしている一冊

「二十一世紀に生きる君たちへ」
司馬遼太郎著
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(リンク先は最新版の「対訳 21世紀に生きる君たちへ」)

 司馬遼太郎が数多くの著作の中で子どものために書いた、たった一冊の本。読むたびに背筋がピンとしたり、心が揺さぶられて涙が出てきたり、今の自分を見つめ直すために、かみしめるように読んできました。

 歴史を愛した作家だからこそ、歴史を見渡した上での言葉、一語一語に重みがあり、文章も無駄がなく、書き写して学びたいほどの名文ばかりです。一つ一つのメッセージが私の人生訓になっています。

 「子どもは何をしなくてはならないのか?」「人は何のために生きるのか?」――著者は子どもたちへ語りかけます。読んでいくうちにまるで私自身に語りかけてくれているような感覚になり、「私は何をしなくてはならないのか?」「何のためにこの仕事をしているのか?」と、自分に深い問いかけができるのです。

 「書き終わって、君たちの未来が、真夏の太陽のようにかがやいているように感じた」という最後の一文からは、「君は君のまま頑張れば大丈夫」と司馬遼太郎に背中を押してもらったような気持ちになりました。

 人生の門出などで、親から子へ贈るのもいいかもしれません。仕事で壁にぶつかっているときや人生に不安や迷いがあるとき、生き方を見つめ直したいときにオススメです。

まさにバイブル 付箋だらけです

「野心のすすめ」
林真理子著
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 私の本棚の中で、貼った付箋が一番多いのはこの本かもしれません。具体的なエピソードが満載で、心にとどめておきたい言葉にあふれていて、一気に読める。まさに働く女性のバイブル! 5年前、「深層NEWS」のメインキャスターという大きな仕事にチャレンジする節目に読みました。

 特に「人生には、ここが頑張り時だという時があります」からの一節は、何度も読み返しました。

 『例えば仕事や勉強を必死でやらないといけない時に、いいかげんにやっている人と、努力している人を、神様はちゃんと見ていて、『よし、合格』となったら、その人間を不思議な力で後押ししてくれる」――つまり、強運というのは、ここぞというときにちゃんと努力を重ねている人にやって来るもの。著者の林真理子さんは、その「ここぞという機会」をつくり出すのが野心なのだ、と説きます。

 全編を通して、林真理子さん自身の成功体験に基づくアドバイスがストレートに表現されています。ウソがなく、遠慮がない。だからこそ、強い説得力があるのです。

 今、人生100年時代です。野心を持って人生を切り開くことが大切なのは、決して若い世代だけではありません。40代、50代、60代であっても、自分は「終わった人」と諦めずに何かを始めたい。チャレンジし続けたい。そんな気持ちにさせてくれる一冊です。

 これから社会に出る人、社会に出たものの停滞気味の人、自分のやりたいことが見つからなくてモヤモヤしている人には、心に響く言葉がたくさん詰まっていると思います。

自ら運命を切り開く勇気を与えてくれる

「だから、あなたも生きぬいて」
大平光代著

 この本のあとがきを私が書いています。著者の大平さんと出会ったのは、私が読売テレビに入社して8年目、司法を担当していた記者時代でした。大平さんを長期取材してドキュメンタリー番組を制作しました。すると放送後、自殺を思いとどまった女性など、全国各地から感想の声が寄せられるほどの大反響。翌年の2000年に書籍化され、たちまち250万部を超えるベストセラーになりました。

 弁護士の大平さんが少年院に行くところを同行取材したり、韓国のいじめの現状を取材したり、私がロンドン特派員をしていた時に大平さんがイギリスでの不登校問題対策の現状を取材に来たりと、長期にわたって彼女と子どもたちの問題を取材するきっかけにもなりました。

 特に心に残っているシーンは、人生のどん底にいた大平さんが、ある日、喫茶店で知人の男性に立ち直るよう大声で説得されるところ。「道を踏み外したのは、あんただけのせいやないと思う。でもいつまでも立ち直ろうとしないのは、あんたのせいやで、甘えるな!」――大人を信用しようとしなかった大平さんのささくれだった心に、知人男性がしっかりと寄り添ったことで、大平さんの心が開いていく。人生のターニングポイントを迎えた瞬間の場面です。

 「終わりに」に出てくる「今こそ出発点」という言葉は、大平さんが人生をやり直すためにずっと大切にしていた言葉です。ぜひ、気になる人は全文を読んでほしいと思います。私の心にも深く刻まれていて、苦しい時にはいつも勇気づけてくれます。

 単なる「波乱万丈記」ではありません。彼女の人生が本を通して教えてくれるのは、自ら運命を切り開いていく人間の可能性です。どんな人生にも転機が訪れます。流されてしまいたくなる苦しい局面もあるでしょう。そんな中で、辛抱強く幸運をつかみ取っていく勇気を持つことの大切さを教えてくれます。

人間の心の優しさに触れ、とにかく泣ける本

「太陽の子」
灰谷健次郎著
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 子どもの頃、両親に薦められて灰谷健次郎さんの作品を読んでいました。社会人になって再び読み返し、泣けて泣けて仕方なかった名作です。「沖縄と戦争」という重いテーマを扱っていますが、戦争を「知る」ことの大切さを教えてくれると同時に、人間の心の優しさに触れられる作品です。

 主人公で小学6年生のふうちゃんが傷つきながらも、身近な人の苦しみや悲しみと向き合い、人の痛みを分かろうとする。心に寄り添おうとする。真っすぐで、強くて、美しくて、尊い。その心に触れて、後半から最後まで何度も何度も涙してしまいます。特にふうちゃんの手紙がでてくるあたりからはずっと涙がこぼれっ放し。

 心に残っているのは、沖縄戦で何があったのかを知りたいと、ふうちゃんが担任の先生に宛てた手紙の一節。「知らなくてはならないことを、知らないで過ごしてしまうような勇気のない人間に、わたしはなりたくありません」。自分たちの命は、亡くなってしまった人たちの苦しみの上に成り立っているという歴史をふうちゃんが懸命に学び、成長していくのです。

 「太陽の子」には、「肝苦りさ(ちむぐりさ)」という沖縄の言葉が出てきます。「私も胸が痛い」という意味で、人の痛みを自分のものとして胸を痛め、自分も一緒に悲しむときに使います。記者として「弱い立場の人に寄り添う」ことを信条にしている私にとっては、読むたびにその原点に立ち返らせてくれる大切な一冊です。

 戦争の記憶が薄れ、戦争を体験者として語れる人が少なくなっている今こそ、あらためて多くの人に、さまざまな世代の人に読んでほしいと思います。戦争というテーマではありますが、全編神戸の言葉で文章も柔らかくてとても読みやすいです。人間の心の優しさに思いっ切り触れたい人におすすめです。

雷に打たれたような衝撃を受けた「原点」の本

「若いあなたへ!」
千葉敦子著

 この本との出合いは、大学2年生の時。当時、私は日本に上陸したばかりのラクロスを普及するために一生懸命でした(詳しくは「小西美穂が『ラクロス界のレジェンド』と呼ばれる理由」)。当時の私は、大学卒業後の自分がどうなりたいのか、将来を描けておらず、立ち上げたラクロスをスポーツとしてどうやって日本に根付かせるかで頭がいっぱいだったのです。

 読んだ時は、雷がドドーンと落ちてきたような衝撃を受けました。ジャーナリストとして海外で活躍している著者の千葉敦子さんの「パイオニア魂」に心が揺さぶられました。当時(1990年ごろ)は、女性の総合職採用も少なかった時代。目指すワーキングウーマン像やロールモデルがなく、「なりたい自分」を全くイメージできませんでした。だからこそ「女性だって、志を高く持てば、道なき道も進めるのだ」という熱いメッセージが胸に染みました。「努力すれば可能性は広がっている」「志と目標を高く持ち、今できることから第一歩を踏み出すことが大事」という言葉に勇気をもらえ、私自身の「チャンスをつかむためには準備が大事」という信念の礎になっています。

 出版当時と今の働く女性の環境は全く違います。読者の皆さんには、もしかしたら雷が落ちるほどの衝撃はないかもしれません。ただ、女性の活躍が難しい時代に、フロントランナーとして国際舞台で活躍の場を広げていった女性がいる。そして、彼女の背中を追って、駆け抜けていった女性たちがいる(私もその一人です)。そんな、働く女性たちが歩んだ歴史を感じられる一冊かもしれません。

 この本に感銘を受けた当時、千葉敦子さんの他の著書を数冊買って読みました。生き方に共鳴できる人に書籍を通して出会ったら、同じ著者の本を読んでみるとさらに視野が広がります。これも、読書の醍醐味ですね。

文/日経ウーマンオンライン編集部 小西さん写真/稲垣純也

【働く女性の共感を呼ぶこの連載が書籍になりました!】
読者からは「お守りのような本」「読後のスッキリ感がすごい」と絶賛の声
 


一見キラキラに見えるキャスター小西さんのキャリア。でも実は、突然の辞令で出向、36歳で正社員→契約社員、初のキャスターで批判殺到、41歳で襲ってきたひとりぼっちの寂しさ…とデコボコ道でした。自分にしかできない仕事のつくり方やチーム力を高めるコツ、行き詰まるモヤモヤ期の脱出法、11歳下の男性との結婚に至った40代からの婚活術は、悩める女性たちから大反響。どんな立場の人でも、デコボコ人生を歩むためのヒントが必ず見つかります。
「小西美穂の七転び八起き」1400円/日経BP社
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Profile
小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ「深層NEWS」ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組「news every.」でニュースを分かりやすく解説。関西出身の親しみやすい人柄で支持を集める。著書に「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。インスタアカウントはmihokonishi69

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/12/19掲載記事を転載
人生で大切なものを教えてくれる 小西美穂が選ぶ5冊