AI時代の働き方 恩恵を受けながらどう生きる?

AI時代の働き方 恩恵を受けながらどう生きる?

2018/02/06

単純作業はAIにお任せ、その分、人ができることが増える

 こんにちは、著述・翻訳家の上野陽子です。連載「社会のデキゴト」では、知っておきたい最近のニュースやキーワードを私たちの身の回りの出来事から考えていきます。

 今、原稿を書く机の周りで、お掃除ロボットが上手に椅子の足をよけながらくるくるとお掃除をしています。計算して部屋全体をくまなく動き、段差があれば落ちないように考えてくれるから、ほっといても大丈夫。これはすべて、お掃除ロボットにプログラムされた「AI(エーアイ)」のおかげです。


<知っておきたい!>
「AI」って何?
AIとは、「Artificial Intelligence アーティフィシャル・インテリジェンス」の略で、人工知能のこと。人間の知的な行動の一部をコンピューターを使って人工的に再現することが目的。コンピューターがたくさんの事例を経験として学んで、人間のように柔軟にタスクをこなしていきます。

 トランプ大統領就任の少し前、アメリカ政府の報告書には、こんな研究結果が引用されていました。

――今後時給が20ドル(約2000円)以下の仕事の83%ではAIが優勢になり、時給40ドル(約4000円)以上の仕事ではその割合は4%にとどまる――。

 そう、AIの技術革新が進んだ結果、コンピューターがこなせる作業の範囲が広がり、人の仕事を肩代わりをできるようになったんです。

 例えば最近は、「セルフレジ」をスーパーで見かけるようになりました。文字通りお客が自分で精算をする、無人のレジです。レジを通した確認も支払いも機械で済ませることができます。6台くらい並ぶレジコーナーには、トラブル対応の店員さんが一人立っているだけ。

 こうしたレジには、「お客が画面の前に立ったら、商品をスキャンし精算する」といった行動がプログラムされています。お客がバーコードをスキャンしたら、購入金額が登録され、購入済みのバッグに入れるまでを感知。スキャンしていない商品がバッグに入った場合は、異常を知らせます。すべてのアイテムのスキャンとバッグへの投入が済んだら、カードや現金など支払い手段をお客に選ばせて精算をします。これ、今までレジの店員がやっていたことです。AIのおかげで、すべて機械がやってくれるわけです。

 他には、無人で運営するコンビニエンスストアの実験も始まっています。ドローンでの荷物配送の構想もあり、配送先は機械が仕分けています。小売や物流以外では、税務処理やローンの査定もAIの恩恵を受けるかもしれません。過去の蓄積データがあれば単純作業化ができるので、こうした事務作業もやがて自動化できるとされています。

 AIがさまざまな作業をこなし、人の仕事を肩代わりする……なんだか便利そうですが、問題もありそうです。AI時代、私たちの働き方がどのように変わるかを少し見ていきましょう。

10年後には約半分の仕事が自動化されるかも

 AIの研究を行うマイケル・A・オズボーン博士は、「今後10~20年程度で、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化される可能性が高い」としています。

 つまり自動化されて便利になった分、省力化を実現できます。先ほど紹介したスーパーの例では、6台のレジがセルフレジになり、レジ担当の店員を減らすことができます。配送員もドローンの活躍で減らせます。税務処理やローンの査定に関わる事務作業員の人数も減らせるというわけです。

 一方で、セルフレジの精算システムやドローンの配送システムなど、自動化システムを作ったり管理したりする人は必要になります。つまり、より専門性の高い人が必要とされる可能性が高まるわけです。

 こういった流れを受けて、特に、「STEM」と呼ばれる職業が強くなるだろうといわれています。STEMは理工系のハイテク産業で必要とされる分野で「Science(サイエンス=科学)」「Technology(テクノロジー=科学技術)」「Engineering(エンジニアリング=工学)」「Mathematics(数学)」の頭文字から取られています。つまり、多くはAIを作る側です。

 例えば、私たちが1週間かけて読み調べてまとめる資料があったとします。これがAIの手に掛かれば、資料をスキャンして記憶して数分で終了します。さらにパターンを記憶させておけば、必要な部分を自動的に会議資料にアウトプットすることだって可能です。多量のデータを処理したり、単純なパターンで繰り返したりする作業は、AIのスピードにはとてもかないません。つまり、こういった作業はAIに任せて、人を減らせます。

 では、コンピューターが代われる職種の人は皆、失業するかというと……人が必要とされる場面は必ずあるもの。「やっぱりこの人がいい」とされるのは、どんな場面で、どんな人なのでしょうか。

AI時代に「必要とされる人」になるには

 コンピューターはデータを蓄積して解析する作業は得意。でも、今までなかったことを生み出すこと、何かを発想して新しいことに応用すること、人の気持ちを感じ取ることは、まだ人間にしかできません。

 ただ事務的に作業をこなすなら、素早くできる機械はこの上なし。でも、「寝ているから起こさないように」といった人間同士の心遣いだって必要です。データを集めて分析した商品企画はAIで実現できますが、例えば「かわいいニュアンスにこだわる」「なんかイイ」といった微妙な発想や細かい部分に生きるセンスを発揮して企画できるのは、人間ならでは。

 こうした時代の流れの中で、2020年の大学入試改革に伴い、学校の試験がさま変わりしています。機械でもできるマークシートや暗記の答えをただ書くのではなく、例えば、「なぜそこに水田を作るのか」という理由を、川や地形を地図から読み取りながら、気候や時代などさまざまな事象を掛け合わせて記述するといったものに変わってきました。

 AI時代に求められる人材は、「柔らかく論理的な発想」を持った人と、その場に合わせた「臨機応変な対応」ができる人。簡単にいえば、「かゆいところに手が届く発想、応用力、気配りを持つ人」といったところでしょうか。機械にできない発想と気遣いをこれからのキーワードにすれば、AIなんかに負けない人になれそうです。

文/上野陽子 写真/PIXTA

Profile
上野陽子(うえの・ようこ)
著述家、翻訳家、コミュニケーション・アナリスト。カナダ、オーストラリアに留学後、ボストン大学コミュニケーション学部修士課程でジャーナリズム専攻、東北大学博士前期課程人間社会情報科学専攻修了。通信社、出版社をへて、コラム連載や媒体プロデュースを手がける。仕事と趣味で世界50カ国以上を周る旅好き。著書に『コトバのギフト―輝く女性の100名言』(講談社)、『スティーブ・ジョブズに学ぶ英語プレゼン』(日経BP社)『mini版 1週間で英語がどんどん話せるようになる26のルール』(アスコム)ほか多数。ツイッター⇒https://twitter.com/little_ricola

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/02/06掲載記事を転載
AI時代の働き方 恩恵を受けながらどう生きる?