女性はキャリアを手放さないで―女社長がそう語る理由

女性はキャリアを手放さないで―女社長がそう語る理由

2017/11/30

失敗してもいい 大切なのはチャレンジし続けること

 「今の仕事を続けていていいの?」「結婚や出産でキャリアが途切れるのが不安」「仕事と子育ての両立が心配……」など、働く女性に悩みはつきもの。一方で、この悩みを解消して前に進むためには、「決断力」を持つことも大切です。そこで、25歳のときから21年間、女社長として「働く女性の成功・成長・幸せをサポート」してきた川崎貴子さんに、決断力を磨くコツやポイントをうかがいました。

  前編はこちら⇒ 乳がんを経験した川崎貴子さんに聞く 決断力の磨き方

今の仕事を続けるべきか迷ったときには?


川崎貴子
1972年生まれ。リントス代表取締役。25歳のときに、働く女性のための人材コンサルティング会社・株式会社ジョヤンテを設立。以来、一貫して「働く女性の成功・成長・幸せをサポート」する仕事に携わり、人材紹介事業や教育事業、女性活躍支援コンサルティング事業などを展開。現在は、リントス代表、株式会社ninoya取締役、ベランダ株式会社取締役。2017年9月に、自身の乳がん体験を記した書籍「我がおっぱいに未練なし」を上梓。

 働く女性なら、誰しも「このまま今の仕事を続けていていいんだろうか……」と、キャリアに悩んだ経験があると思います。でもそんなときには、一度ゆっくり、自分の「欲望」を考えてみてください。「欲望」を知ることは、自分が人生の中で強く望んでいることを知り、人生の目的を明確にすることでもあります。

 自分の欲望が「登山」をすることで、人生の目的が「全国の山を制覇すること」だという場合は、仕事は登山をするための手段だと言えます。すると、登山費用を稼ぐために、割り切って仕事をするという決断もできるはずです。一方、人生の目的が「仕事で成功すること」だという場合には、「今の会社で働き続けて、自分が望む成功を手に入れる方法があるのか?」と考え、なければ転職をするという決断もできます。

「欲望」は書いて可視化し、どんどん口に出す

 「欲望」を見つけるときには、紙やノートに書くことがポイントです。頭の中で想像するだけでなく、可視化できるように「書く」こと。例えば「1年後にはこうなっていたい」という理想の姿をノートに書いて、そこから逆算して、今何をするべきかを考えてみる。また1年後だけでなく、10年後の理想の姿を考えるのもよいですね。続けていると、欲望もだんだんと明確になり、迷っていることを決断するための判断基準になります。

 そして欲望は言語化して、どんどん口に出してください。こんな人と結婚したいという欲望がある場合には、理想の男性像を周りの人に伝えてみる。「私は理系の眼鏡男子が好きです」と言い続けていたら、「そういえば、私の会社に独身の理系眼鏡男子がいるよ」と、紹介してくれる可能性も高くなりますからね。

結婚・出産後も仕事と子育てを両立するには?

25歳で起業してからずっと、女性のキャリアとプライベートの幸せを支援してきた川崎さん

 結婚や出産などでライフステージに変化があった場合には、「これまで築いてきたキャリアが途切れないか心配」「仕事と子育ての両立ができるのだろうか……」と、不安になることがあると思います。しかし私自身は、結婚しても出産しても、女性にはキャリアを手放さないでほしいと思っています。

 働くことは、「筋肉」と同じようなものです。いったん仕事から離れてしまうと、モチベーションや考え方、話し方、行動の仕方なども、仕事向きではなくなってしまいます。復帰したくても、働くための「筋肉」が衰えてしまうのでブランクが長ければ長いほど仕事に戻るのが難しくなるのです。また再就職は、景気によっても左右されます。配偶者の病気や離婚、子育てが落ち着いたことなどを機に、いざ再就職をしようとしても、景気が悪いとブランクのある女性は不利になってしまうのです。

身近な人に相談してリアルな声をお手本に

 私も病気になって実感しましたが、人生に絶対はなく、いつ何が起こるか分かりません。そのため、夫婦両輪で働いて、家事や育児も協力して行うことが、家庭としてのリスクヘッジにもなります。ですから今のキャリアを手放す前に、「どうやったら仕事と子育てを両立できるのか?」と考え、まずは両立するための情報収集をしてほしいと思います。

 例えば、「夫に育休をとってもらうことは可能か」「保育園の空きがある地域はどこなのか」など、事前に調べられることはたくさんあります。また会社の先輩とご飯を食べに行って、「どういうスケジュールで仕事をこなしていますか?」「夫がどんな協力をしてくれたら、仕事と子育ての両立が可能ですか?」と、リアルな声を聞いてみてください。睡眠3時間で、家事も育児も完璧にこなすスーパーウーマンをお手本にするのではなく、身近にいる人に聞くことがポイントです。そうすれば、結婚する前、子どもを持つ前に夫婦で話し合うことができ、どう行動すべきか決断しやすくなると思います。

 私も以前住んでいた場所が、「あまり子育てに良い環境ではないな」と感じていたことがありました。そのときに友人に相談すると、「あの場所が良いんじゃない」と、すぐに引っ越し先のアドバイスをくれたんです。確かにその場所には、社長をしている友人がたくさん住んでいて、助け合える環境が整っていました。ですから長女が小学校に入学する前に引っ越しをして、今ではお互いに協力し合い、非常に良い環境で暮らせています。

決断をしていくことで見えてくるものは?

「女性には、自分の弱みではなく“強み”に自覚的になってほしいですね」

 決断をしていくと、自分に関するデータがたまります。自分が失敗するパターン、間違えるパターンなどが分かってくるので、そのデータを基に、徐々に判断の精度を上げていくことができるのです。

 たとえ決断をしても、間違えるときは間違え、失敗するときは失敗します。これはもう、絶対にそうです。しかし大切なのは、失敗しないことではなく、バッターボックスに立ち続けること。立ち続けていると、どういうボールが来たときに自分が三振をするのか、パターンがだんだんと分かってきます。だから三振をしたとしても、毎回バッターボックスに立ち続け、バットを振る。挑戦し続けることが大事なんです。

いつもより楽観的になってバッターボックスに立つ

 迷いがち、悩みがちな女性は、非常に優秀であるにもかかわらず、バッターボックスに立とうとしないことが多いように思います。彼女たちは、10のことができて初めて、「1できます」と言う場合が多い。自分に課しているハードルが高くて、「あの子に任せたら完璧にこなすよね」と言われる状態を想定しているんです。でも、たとえ1しかできなくても、「10できます。やります」と言ったほうがよい。なぜなら、元が真面目で優秀なんだから、10できると言ったからには努力するでしょうし、背伸びをすることで、実力が追い付くこともあるからです。

 いつもより少しだけ楽観的になって、「失敗してもいいや。何事も経験、経験」とつぶやきながら、バッターボックスに立ってみてください。「この子は失敗しても大丈夫。すぐに起き上がって、またバットを振り始める」と周りに思われたほうが、きっとチャンスもたくさん巡ってくるはず。そしてバッターボックスに立ち続けると、自分の成功パターンや失敗パターンのデータもたまって、大事な場面での決断もしやすくなりますよ。

聞き手・文/青野梢 写真/小野さやか(インタビュー)


「我がおっぱいに未練なし」
 著:川崎貴子
 出版社:大和書房
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日経ウーマンオンライン

2017/11/30掲載記事を転載
女性はキャリアを手放さないで―女社長がそう語る理由