「残念な人」がやりがちな、よくある質問

「残念な人」がやりがちな、よくある質問

2018/04/23

「できる」と「残念」を分ける境界線【大人の人間関係力】

 コミュニケーションがうまく取れず、人間関係にストレスを感じて、仕事や生活が何だかうまくいかない──。そんな人に向けて、明治大学文学部教授・齊藤孝さんによる「人間関係力」の鍛え方をご紹介します。今回は「質問力」がテーマです。


齊藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。累計部数1000万部を超える著書を送り出したベストセラー作家でもある。2018年2月に、ビジネスに役立つ実践的な“人づき合いのコツ”をわかりやすく解説した『大人の人間関係力』を上梓。(写真:平野 敬久)

 コミュニケーション能力は、「質問の質」で分かる。「聞きたいことを聞く」だけでは「残念な人」に見られることも…。「できる!」と思わせる「質問力」の鍛え方をお教えしよう。

 セミナーや講演会で質疑応答の時間になると、“困った質問者”に遭遇することがある。大勢の中で手を挙げて発言する勇気は素晴らしいが、発言時間がやたらと長い。それも自分の意見や経験を脈絡なく語り、結局何が聞きたいのか(恐らく本人も)分からなくなったりする。

 質疑応答の時間はだいたい予定より短くなりがちで、質問数はおのずと限られる。それを1人で占有してしまうのだから、他の参加者にもかなり迷惑がかかるのだ。

 とはいえ、これは仕方のない面もある。“質問の作法”というものを、体系的に訓練する機会を持ってこなかった。だから、我流にならざるを得ない。では具体的に、「質問の作法」とは何か。「基礎編」と「実践編」に分けて説明しよう。

「できる人」の質問

こんな質問、してもいいのかな……? (C)PIXTA

 まずは「基礎編」から。質問は、コミュニケーションの基本だ。例えば会議でも、主張を述べ合うだけでは議論にはならない。「問い」と「答え」を繰り返すことで焦点が絞られ、結論を得ることができる。これが会議の基本だろう。

 この時、議論をリードしたり、全員に新しい視点を提示するような質問をすれば、「できる人」に見られる。逆に的外れな質問をしたり、終わった議論を蒸し返したりすると、たちまち「残念な人」になってしまう。会議とは、「質問力」が問われる場でもあるのだ。

「今日はいい天気ですね?」が“残念”な理由

 「できる」と「残念」を分けるものは何か。実はその境界線となるポイントは、2つしかない。1つは、「本質的」であること、もう1つは「具体的」であることだ。両方ともクリアして初めて、「合格点の質問」になる。

 これは、「具体的―抽象的」を縦軸、「本質的―非本質的」を横軸とする座標軸をイメージすれば分かりやすい。自分の発する質問が、常に右上(第1象限)のスペースに当てはまるか、つまり、具体的であると同時に本質的であるかをチェックすることを、習慣づけてほしい。

 プロ野球のヒーローインタビューを例に考えてみよう。お立ち台の選手に対し、「あのホームランは狙って打ったのか?」と尋ねたとしたら、これは「具体的」かつ「本質的」な質問。ファンも聞きたい内容だろう。

 ところが、「今朝、何を食べた?」と尋ねたとしたら、「具体的」だが「本質的」ではない。「あなたにとって野球とは?」は「本質的」だが「抽象的」だ。「今日はいい天気ですね?」と尋ねたら、もはや「具体的」でも「本質的」でもない。選手は困惑し、ファンからはブーイングの嵐が巻き起こるに違いない。

 これは極端な例だが、日常でも同レベルの“愚問”を繰り出して悦に入っている人が少なくない。質問をする時は、ぜひ、座標軸を思い浮かべる癖をつけてほしい。

質問をする前に、ちょっと立ち止まって考えてみよう

他人の質問内容を5段階で評価する

 以上を基礎として、実践編に移ろう。質問力を高める方法は、大きく3つある。

 1つ目は、「他者の質問をチェックする」ことだ。会議でもいいし、テレビの対談番組でもいい。そこで繰り出される質問をピックアップして、自分なりに「A~D」のランクをつけてみよう。「具体的」「本質的」であることを前提として、さらに場を盛り上げるような質問なら、評価は高くなる。こうして“選球眼”を養えば、自分の質問の精度も高められるはずだ。

 2つ目は、「事前の情報収集」だ。頭の中だけでいくら考えても、底の浅い質問しかできない。私もよく「取材」の形で質問を受けるが、勉強不足、情報不足の記者は少なくない。どんなテーマであれ、基礎的な知識すらなければ、私はその説明から始めねばならなくなる。その状況で、いい質問などできるはずがない。

 今やネットを検索すれば、どんな情報でも瞬時に手に入る時代だ。もう少し知りたいと思えば、新聞や雑誌の記事を購入してもいいし、書店で関連書籍を探してもいい。いい質問をするため、つまりはコミュニケーションを深めるためと思えば、当然のステップだ。そのひと手間を惜しむようなら、いつまでも「残念なヤツ」から卒業できない。

「そもそも論」は万能フレーズ

 そして3つ目は、いささか姑息ながら、「具体的」「本質的」というキーワードを、そのまま質問に使うことだ。例えば抽象的な回答しかしない相手に対しては、「もう少し具体的に言うと?」とダイレクトに尋ねればいい。相手がうまく答えられないなら、そもそもその議論には意味がなかったということだ。

 あるいは議論が錯綜してきたら、「本質は何でしょう?」と、「そもそも論」を問いかけてみればいい。会議の場を“交通整理する”役割を担える。いずれも、ほぼ万能で使えるフレーズだ。

 ただし、既に「具体的」かつ「本質的」な議論が進行している時にこの質問をすると、たちまち「残念な人」「場の空気が読めない人」に転落するので、ご注意を。

質問力を高めるための3つのポイント
質問の内容を「座標軸」でチェックする
「いい質問」の条件は、「具体的」かつ「本質的」であること。質問する前に、この2点をクリアしているかどうかをチェックしよう。他人の質問内容を聞いて、自分の中で評価する癖をつけることで、質問の精度を上げられる。
情報収集は不可欠
基礎知識や常識的な内容を質問してはいけない。調べられるものは自分で調べ、相手のアイデアや意見の部分にのみ、質問を集中させること。新たな情報を提供し、それについてコメントを求めるのも常套手段。
「具体的」「本質的」な言葉に頼る
議論が錯綜してきたら、「具体的に言うと?」「本質的にはどういうこと?」と尋ねれば、たいてい本質的な回答に戻る。ただし新たな議論を呼ぶ効果はないので、軌道修正用の質問と考えよう。


「大人の人間関係力」
著者:斎藤孝
出版社:日経BP社
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聞き手・文/島田 栄昭

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/04/23掲載記事を転載
「残念な人」がやりがちな、よくある質問