阿川佐和子「損得は使い分け」結婚に大事なのは寛容さ

阿川佐和子「損得は使い分け」結婚に大事なのは寛容さ

2018/03/16

阿川佐和子 結婚相手が「この人かも」と見極めるヒント

 3月8日は国際女性デー。苦難を乗り越え、権利を勝ち取ってきた女性をたたえる日として、1975年に国連で定められた記念日です。日経ウーマンオンラインでは、特集「女性に生まれて、よかった?」と題して、各分野で輝く女性たちにインタビュー。第4弾は、25年も続いている「週刊文春」の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」や、トーク番組「サワコの朝」(TBS系)で多種多様な方に話を聞いて貴重な言葉を引き出す「聞く力」の達人、そして昨年には結婚もされた阿川佐和子さん。アラサー女性の分析に長けている稲田豊史さんが、阿川さんに気になることを次々に質問。笑いがたくさん詰まった本音のメッセージをいただきました。(この記事は後編)

前編 「失敗をたくさんした人は老後は人気者」阿川佐和子


阿川佐和子
エッセイスト、作家。1953年生まれ。慶應義塾大学文学部西洋史学科を卒業後、織物職人を目指してさまざまなアルバイトを経験。その後、報道番組でのキャスターを務め、「ビートたけしのTVタックル」の進行役に抜てき。軽快な進行と鋭いツッコミで人気を集める。「サワコの朝」(TBS系)などのトーク番組や討論バラエティー番組のほか、映画やドラマなどでも活躍。著書の「聞く力」(文春新書)は170万部のベストセラー。近著は、脚本家の大石静との共著「オンナの奥義」(文藝春秋)。

稲田さん(以下、――)阿川さんは2017年5月にご結婚されましたが、ズバリ生涯のパートナーはどういう決め手で選べばよいのか、アドバイスをいただけますか。

阿川さん(以下、敬称略) それは私自身ずっと問い続けてきたし、いろんな人に聞かれましたけど、分かんないんですよ。だって最初から趣味や考え方がぴったんこ合うなんて、あり得ないですから。

 逆にいろいろな点で二人の趣味がズレていても、相手にそれより好きなところがあれば、だんだん嗜好が近づいてくる。相手が履いている靴を見て、「私、こういう靴の趣味ないなあ」って最初は思っていても、その人が好きだったら徐々に「悪くないかも」に変わってくるでしょ。でも、そんなふうに「あばた」が「えくぼ」に見えてくる根拠なんて、理屈で分かるようなことじゃないですからね。

――出会ってすぐ見極められるものではない?

阿川 逆に、最初は特に思わなかったけど、時間がたつにつれて「どうしてもここが嫌だ」となることもありますし。昔、アメリカに在住の日本人の友人が教えてくれた「ニューヨーク・タイムズ」の記事が、今でも忘れられないんです。高齢になってから離婚したある夫婦の妻側の言い分が、「夫が皿の目玉焼きの黄身を口でじかにすすり上げるのが、気になってしょうがない。もうこれ以上は我慢できない」って。

 私、この話を自分のお見合いが続いていた時期に聞いちゃったんですよ。いずれ離婚するほど我慢できないものに膨らんでいく毎日の習慣を、どうやってお見合いの段階で見極めればいいんだ……と(笑)。

――でも、何かしら「この人かもしれない」の当たりをつけるヒントはないものでしょうか。

阿川 あるとすれば、「なんとなく、この人と一緒にいてもつらくない」「激しく面白いかどうか分からないけど、心が和む」「この人といると自分の嫌な性格が弱まる」とか。私の夫で言うなら、私には嫌な性格がいっぱいあるんですけど、それを「まあいいんじゃない」って分かってくれている人だってこと。

 以前、クリントン元大統領の印象的な言葉があって。アメリカにもいじめがあるという話の中で、彼はこう言ったんです。「いじめられている不幸な子どもにとって、周囲の全員が彼の理解者である必要はない。何があっても彼を理解する大人が地球上に一人だけいれば、それで十分だ」って。結婚相手もそれと同じ。「最後の最後に残るのはこの人。この人だけは私のことを嫌いにならない」。そういう安心感が、生きていく上での支えになるんだなと思いました。


「寛容さ」があれば人は変われる

――では、いざ結婚して一緒に生活するとなったときに気を付けるべきことはなんでしょう。

阿川 自分の中の引き出しに「寛容さ」を持っておくことですね。例えば、「私は極力シンプルな部屋で、物を置かない生活をするのが理想。それが一番心地よいと感じる人間なんです」なんて先に決め込んじゃうと、それ以外のスタイルを排除しちゃうでしょう。

――さっきのお話(「失敗をたくさんした人は老後は人気者」阿川佐和子)でいうと、条件が「狭い」状態ですね。

阿川 だけど、相手がごちゃごちゃした部屋を好む人だったとして、試しにごちゃごちゃした部屋で生活してみたら、自分が変わるかもしれない。変わることで何か別のチャンスに出合えるかもしれない。自分が求めるライフスタイルをぎちぎちに決め込んで、死ぬまでそうしていたいなら、どうぞ一人で生きていってください。だけど、他の誰かの人生と融合して生きていきたいなら、最初からぴったり合う人なんているわけないんだからね、って思いますよ。

女の友情は復活する

――それは結婚だけでなく、人とのコミュニケーションを考える上でも大切なことかもしれないですね。読者世代はちょうど、仕事、結婚、出産と転機が訪れる世代。女性にはさまざまな生き方の選択肢がありますが、女同士の友情は、この転機によって関係性が変わります。

阿川 学生時代の友達とはどんどん疎遠になっていきますよ。私が仕事をしていて向こうが専業主婦だと飲みには誘いづらい。久しぶりに会えても、彼女は子どもに「静かにしなさい!」とか言いながらで、私の悩みなんて打ち明ける空気じゃないですし。悩んでいても、どう慰めていいのか分からない。「仕事大変ね」「育児大変ね」とお互い口では言うけど、それ以上の具体性はなくなっちゃう。うっかり「仕事したほうがいいよ」なんて言おうものならそれこそマウンティングになるから、アドバイスもできない。

――阿川さんは以前に「女は身辺が変化すると友情があっさりと薄れる」というようなことを書かれていましたね。

阿川 でもね、そうやって自分の選んだ道を歩むでしょ。何十年もたって、孫ができる人もいれば、離婚する人もいる。そうして60代も半ばくらいになると、また集まり始めるんですよ。家族がいても、子どもはもう手を離れてるし、夫中心の生活じゃなくなってるから。「夜、出られる?」「出られる、出られる!」って。今、私の女子高時代の友達連中6、7人は、そんな感じです。

――友情が復活するんですね。

阿川 それで互いを心から認め合うんですよ。疎遠だった間に、あんたいろんなことがあったんだね。仕事を続けるってそんなに大変なんだ。専業主婦で子どもを育てるってそんなに大変なんだ。そうか、あんたよく頑張ったね。あんたもね、って。

「女に生まれて、損も得もある」

――一人で気ままに生きたい女性が人生を楽しむ秘訣はありますか。

阿川 私も去年まで独り者だったわけですが、私のことで言うなら、年齢や地位が関係しない、素の自分でいられる場所を確保することですかね。私、51歳で初めてゴルフをやって夢中になったんですけど、最初は「グリーン」も「パー」も知らなかったんですよ。51歳なのに『新入生』。だからゴルフ友達の間では常に謙虚でいられたし、息子みたいな歳の人にも教えてもらって、ありがたやって感謝できた。いくつになっても「バカだな、お前は(笑)」って言われる、『新入生』みたいになれる場所さえ見つければ、若返ることができます。

 人間は、ある程度の年齢に達すると世の中で発見することが減るっていいますけど、そんなことはない。こんな所にこんな世界があったのか、ゴルフって自分の性格が露骨に出ちゃうんだとか、いろんな発見ができました。そういう場所を見つけることが、強いて言うなら秘訣かな。

――そんなふうに一人で人生を謳歌するにせよ、二人で人生を歩むにせよ、女性の人生にはいろんな喜びがありますよね。では阿川さん自身が女性に生まれてよかったと思えることって、なんでしょうか?

阿川 なんだろうなあ。うーん。えーと……。

――すみません、唐突な質問で。

阿川 「よかったと思える」が「意外と得した」ということだとするなら、まず大前提として「女が損」だとは思ってないんですよ。だって、女は職場で落ち込んだら男の人たちが心配してくれるけど、男が落ち込んでても多分ほっとかれるでしょ。その代わり、女が上司になったときに部下をどやしつけると「あのばばあ、ヒステリーだな」って言われちゃう。男はそうは思われない。

 だから損得は男女両方にあるんですけど、大事なのはそれを自覚して、損得をきちんと使い分けることじゃないですか。私は男のほうが長期的にものを見る力があるし、女のほうが細かいことに気が付く力があると思いますけど、そういう特性だって、持って生まれた損得の一つです。

 ただ、「女として取材してこい」と言われることには反発心を持ちました。「阿川として見てこい」なら分かるし、その阿川の中に生物学的な女の要素があるかといえば、まあ、ある。でも、その要素が女を代表しているかなんて分からない。ガールズトークもたまにはいいかなと思うけど、あんまり好きじゃないですしね。

 だから私、今、仕事で「女性の担当がいいですか、男性の担当のほうがいいですか」って聞かれても、分かんないんですよ。その人と気が合うかどうかがすべてですからね。……これで答えになってるかしら(笑)。

文/稲田豊史 写真/毎日放送


「サワコの朝」毎週土曜 7:30
http://www.mbs.jp/sawako/
3月17日はムロツヨシさんがゲスト。3月31日は『春爛漫! 聞けば幸せになれるトークスペシャル』で未公開シーンをお届け。

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日経ウーマンオンライン

2018/03/16掲載記事を転載
阿川佐和子「損得は使い分け」結婚に大事なのは寛容さ