「失敗をたくさんした人は老後は人気者」阿川佐和子

「失敗をたくさんした人は老後は人気者」阿川佐和子

2018/03/15

死なない程度の失敗、不安、不幸は「後がおいしい」

 3月8日は国際女性デー。苦難を乗り越え、権利を勝ち取ってきた女性をたたえる日として、1975年に国連で定められた記念日です。日経ウーマンオンラインでは、特集「女性に生まれて、よかった?」と題して、各分野で輝く女性たちにインタビュー。第4弾は、25年も続いている「週刊文春」の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」や、トーク番組「サワコの朝」(TBS系)で多種多様な方に話を聞いて貴重な言葉を引き出す「聞く力」の達人、そして昨年には結婚もされた阿川佐和子さん。アラサー女性の分析に長けている稲田豊史さんが、阿川さんに気になることを次々に質問、笑いがたくさん詰まった本音のメッセージをいただきました。

稲田さん(以下、――)今日はさまざまな不安を抱えながら働いている女性の生き方について、働き女子の大先輩である阿川さんにご指南いただきたいと思っています。

阿川さん(以下、敬称略) 皆さん、好きに生きていってください(笑)。読者の皆さんはお仕事をされているの?

――はい、みんな働く女性です。

阿川 すごい時代になったね。

――阿川さんこそ、ずっとお仕事されてるじゃないですか。

阿川 する気はなかったんですよ。仕事を始めてからも、しばらくは専業主婦願望が強かったから。でも、もう子どもは産めないなと思い始めた30代後半くらいから、仕事を続けるのはやっぱり大事なことだなって。「この先もし結婚するにしても、仕事を一切やるなと命令する旦那だったら困る」という気持ちに変わっていきました。

――そのお仕事の中では、「聞き手」としての阿川さんの印象が強いです。25年も続いている「週刊文春」の連載や、トーク番組では、多種多様な方にお話を聞いて貴重な言葉を引き出されていますよね。それらのご経験から、多くの女性が苦労している男性上長とのコミュニケーション、「難しいおじさんの転がし方」を教えていただけないでしょうか。

阿川 転がしてませんよ(笑)。それに、まず申し上げておきたいんですが、私が人に話を聞くのは別に天性のものでもなんでもなくてね。そういうことが得意だとか、「これは天職だ!」なんて思ったこと一度もないんです。インタビューが好きかと聞かれたら、あんまり好きじゃない。

――それは意外です。

好き嫌いじゃなく「これが私の仕事だから」

阿川 だから「これ、仕事だから」に尽きます。対談であれ番組であれ、私にはそれらを面白くする責任があるから、必死になってやるだけ。ギャラを頂かないような場でも、もちろんそう。相手がおじさんでも誰でも、そこでの振る舞いは全部「与えられた場所で自分に課せられた役割の一部」。だから必死になるんです。だって家族の話、毎回真剣に聞いてたら、疲れますって。

――おじさんとうまくやり取りする「コツ」みたいなものはないのでしょうか。

阿川 昔ね、「自分の仕事を振り返ると、すべてがおじさんとの戦いだった」と言ってる女性編集者の知り合いがいてね。ある時、彼女の会社に新入社員の女性が入社してきたんですが、おじさんたちとすぐ仲良くなったんですって。色気で攻めてるわけでも、カマトトぶってるわけでもないのに。それで不思議に思った編集者の彼女が聞いたんですって。「どうすると、そんなに仲良くなれるの?」って。そしたら、新人いわく「簡単です。なんでもいいから褒めりゃいいんですよ」って。

――(笑)。分かります。(※注:インタビュアーは男性)

阿川 おじさんは職場でなかなか褒められませんからね。人間はある程度熟練した年齢に差し掛かると、言わなくても分かるだろうとか、面と向かって褒めるのが恥ずかしいっていう空気が、周囲の人々の間に出来上がってしまうので。だからおじさんはいつも褒められ足りない、褒められたくてしょうがない。褒めにくければ、なんでもいいから、目についたものを褒めればいいんですよ。(インタビュアーに向かって)あ、シャレた眼鏡ですね、とか。

――今、気分よかったです(笑)。

阿川 それから、男の人は社会的な上下関係をすごく気にするじゃないですか。組織内でどっちの肩書が上とか、どっちのほうが年上とか。男同士って、職場から離れた友達同士の飲みの席でも、それをすごく重んじるでしょう。だから女性としては、その上下関係を重んじてあげる一方で、あえて無視する態度をうまく織り交ぜるのがいいのかも。

――確かに、おじさんは偉くなると肩書を意識して振舞わなきゃいけなくなりますから、ヒエラルキーを飛び越えてフレンドリーに接してほしい気持ちがどこかにある気がします。

失敗が多いほど老後は人気者

阿川 さっき言ってた読者の皆さんの不安って、どうなりたくて不安なの?

――「どうなりたい」も含めてぼんやりしているんだと思います。この先仕事をどうしていくか。老後は大丈夫か。結婚はするのか、しないのか。するならどういう人がいいか。ただ相手を探すにしても、どういう方向性で探すべきか見えない、とか……。

阿川 老後!? そんな先のこと心配してるの? 悩みたくなるお気持ちは分かりますが、とりあえず明日までにやんなきゃいけないことがあったら、そんなこと考えてる暇なくなるからなあ。ごめんね、優しくないばあさんで(笑)。

――結婚相手の話でいうと、相手に求める条件がすごく細かい人もいるようです。

阿川 確かに私の友達でも、前もってはっきり条件を決めていた人は結婚が早かったですね。その後の付き合いがないから、いま円満かどうかは知りませんが(笑)。ただ思うのは、もしかして、条件が「狭い」んじゃないのかなって。

――狭い、ですか。

阿川 自分の今の価値観だけで狭い条件を設定してしまう人は、見たこともない世界、やったことのない経験に対して保守的なんじゃないかしら。例えば「私は朝コーヒーを飲まないことにしてるんです」って言う人がいるけど、いやいや一度飲んでみてよって。「私、海外旅行しない人なんです」……いやいや一回行ってみてよって。違う世界が広がるかもしれないから。自分の型を安全パイだけで作り過ぎ。あなたは一生、ずっとカプセルみたいなものに入っていたいのかって。

――阿川さんも、27歳の時に舞い込んだリポーターの仕事は突然の話で、それまでとは全く違う世界に飛び込んだんですよね。

阿川 いやだいやだと言いながらやってみて、続けてたら仕事になっちゃった。それまでは織物職人になりたくて修業してましたから。

――人生、計画通りにはいかなかった。

阿川 織物職人は好きだったけど、失敗でした。でもね、老後が心配だとか言うなら、死なない程度の失敗をたくさんしておいたほうが、老後は確実に人気者になります。他人の成功談なんて聞きたくないでしょ。佐藤愛子さんだって本当につらい人生を送ってこられたと思いますけど、あんなに本(「九十歳。何がめでたい」小学館)がめちゃくちゃ売れてる。

――失敗したとしても後からおいしいんだから、とりあえず何でもやってみればいい、ということですね。

阿川 そりゃ、私がこの年からプリマドンナやオリンピック選手にチャレンジするのは無理だけど、たいがいのことはできますからね。デヴィ夫人なんて、あのお年でイルカにも乗るんだから。「あたくしね、挑戦することが好きなの」って……。本当に尊敬しますよ。何事も遅すぎることはないし、間に合わなかったらその時に考えればいい。私は20歳の時、30歳なんておばさんだと思ってたけど、60歳過ぎたら30歳、40歳はまだまだ若い。あなたたち(読者)は、すっごく若い。

 だからね、若いうちは不安でも、今から達観なんてしなくていいと思う。達観しちゃったらそれこそ視野が狭くなるから、そのまま不安に思っていればいい。不安も不幸も楽しむ、笑う、喜ぶ。「どうやったら笑い話になるかな、この不幸」くらいでちょうどいいんですよ。


阿川佐和子
エッセイスト、作家。1953年生まれ。慶應義塾大学文学部西洋史学科を卒業後、織物職人を目指してさまざまなアルバイトを経験。その後、報道番組でのキャスターを務め、「ビートたけしのTVタックル」の進行役に抜てき。軽快な進行と鋭いツッコミで人気を集める。「サワコの朝」(TBS系)などのトーク番組や討論バラエティー番組のほか、映画やドラマなどでも活躍。著書の「聞く力」(文春新書)は170万部のベストセラー。近著は、脚本家の大石静との共著「オンナの奥義」(文藝春秋)。

文/稲田豊史 写真/毎日放送


「サワコの朝」(TBS系)毎週土曜 7:30
http://www.mbs.jp/sawako/
3月24日は浅田真央さんがゲストで登場。3月31日は『春爛漫! 聞けば幸せになれるトークスペシャル』で未公開シーンをお届け。

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日経ウーマンオンライン

2018/03/15掲載記事を転載
「失敗をたくさんした人は老後は人気者」阿川佐和子