小西美穂 41歳の一人誕生日と人生が好転する出会い

小西美穂 41歳の一人誕生日と人生が好転する出会い

2018/06/26

不安は頑張って生きている証拠 努力をしているから感じる

 「news every.」に出演中の日本テレビ解説委員の小西美穂さん。一見華やかなキャリアを築いてきたようにみえる小西さんでも「不安に押しつぶされそうな毎日を過ごし、都心をさまよう夜を過ごしていた」という。小西さん曰く「かなりヤバい状況」から、どうやって抜け出したのか。前編「 小西美穂 『居場所なくなる』不安で街をさまよった夜」の続きをお届けする。

――肩の力が抜けた今の小西さんからは想像できない暗い時代が、そう遠くない過去にあったとは意外です。

 その頃の私の寂しさを象徴するのが、41歳の誕生日です。40歳の誕生日が、白金のレストランに20人呼んでバースデーパーティーを華やかに開いたキラキラした日だった、という話は前回の記事「 小西美穂 『居場所なくなる』不安で街をさまよった夜」でしましたよね。

 その1年後の6月9日、私はたった一人で41歳の誕生日を迎えたんです。

一人で過ごした41歳の誕生日の出来事

 誰かが祝ってくれると言ってくれたかどうかは覚えていません。とにかくその日、仕事を終えて私は自宅近くの行きつけの定食屋さんのカウンターに座って、サンマ定食を食べていました。

 するとふと、目に留まったのが、いつも控えめでおとなしい女子店員が着ていたTシャツ。「ROCK」という大きな文字がデザインされていました。「え、ロック、6・9……?」と目を離せないでいると、彼女が気付いて小声で言ったのです。「小西さん、今日、誕生日ですよね」。ビックリしました。「来てくれるんじゃないかなって思ってたんですよ」とニコニコ笑いながら、彼女は手を動かしています。

 まさかここに私の誕生日を知って祝おうとしてくれている人がいるなんて。素直に「ありがとう」と伝えて、お会計を済ませた後、今度は「これ、店長からです」とお土産のシャンパンまで用意してくれていたんです。ささくれだっていた心が、ジンと、温まりました。

――すてきなエピソードですね。

 結婚した今でも、そのお店はよく夫婦で行くんですよ。

 そういう人の温かさに触れたものの、40歳と41歳の誕生日の落差が象徴するように、私の仕事人生が危機に直面していたことには変わりありませんでした。

 その後、私は「news every.」を離れて「ズームイン!! サタデー」、BS「ニッポンの大疑問」「深層NEWS」出演。政治部に異動して防衛省担当を務めた後、17年6月に「news every.」に復帰して今に至るわけですが、その当時は、長い長いトンネルの暗闇しか見えていません。「いつか乗り越えられるよ」と声を掛けられたとしても、絶対に信じられませんでした。本当につらいときって、先が見えないものだと思います。

 だから、私、不安や焦りを抱えている人に対して「大丈夫。いつかなんとかなるよ」と気軽に言うことはできません。「いつかっていつのこと?」と余計に焦りをかき立てるものだと身をもって知っているから。

暗闇にいたからこそ、言えることがある

 ただ一つ、長いトンネルから出られなかった経験した私が伝えたいのは、「不安になるというのは、自分の現実を直視できている証拠。一生懸命に生きている証拠だよ」ということ。

 自分をなんとかしたいという希望があり、努力をしたい人だから、うまくいかない時に不安が生まれるんです。テキトーに生きていたら不安さえ抱かないはずですよね。

 でも、どんなにつらくても潰れちゃったらダメだよとも言いたい。自分を追い込まないための方法をなんとか模索してほしいと思います。

 浮上することができた私が感じているのは、逆境を乗り越えた数だけ、強くなれる。ツルツルの人生だけじゃ手に入れられない強さを、デコボコ人生は与えてくれるってこと。

――自分を追い込んで潰れてしまわない術、身に付けたいものですね。当時の小西さんがやっていてよかったと思えるアクションはありますか?

 そうですね。「素直に人のアドバイスに耳を傾けて、なんでもやってみる」という意識は持っていたと思います。

人のアドバイスのままに、何でもやってみた

 さっき話した自己啓発本しかり、「いいよ」とすすめられたことは取りあえずトライしてみる。合わなければ手放せばよし。効果があればラッキー、くらいの気持ちで。

 あと、いろんな立場の友達に積極的に会おうとしていました。会社のネットワークをあえて離れて、学生時代の友達とか、久しぶりに会う主婦の友達とか。自分が置かれている立場とは異なる状況にいる人に会って、悩みを聞いてもらうと、異なる世界で生きている立場ならではのすごく新鮮な視点で返してくれたりするんですよね。

 ある友達が言ってくれたこんな言葉も印象に残っています。「あのね、美穂ちゃん。キャスターとしてずーっと第一線でやってこられてる女性って、日本に今何人いる? ほんの数人だけでしょ? なれるわけないよ。いいじゃん、なれなくたって。それは全然恥ずかしくないし、今は休憩を与えられたと思って休めばいいよ」。そうか、そういう見方もできるんだと視界が明るくなりました。いつの間にか、自分で自分のハードルを上げていたんだと気付きましたね。

――人の話を積極的に聞くことで、自分磨きにつながって人生が好転したというお話は、以前のインタビュー「 仕事も結婚も 人の話を素直に聞いたらこんなに変わる」でも話してくださいましたね。

 そう。その最初のきっかけとなったのが、トモちゃんとの出会いです。

暗闇の中で、心に火が灯る出会い

 トモちゃんと出会ったのは、定食屋さんで一人でバースデーを過ごした6月から2カ月後のこと。その日は日曜日で時間を持て余して、「映画でも見て帰ろ」と六本木ヒルズにふらりと立ち寄っていました。何の映画を見に行ったかは覚えていません。そもそも本当に映画を見たくて行ってるわけじゃないですからね。

 上映まで少し時間があったので、セレクトショップに入ってアクセサリー売り場に近づいたんです。一人でいるところを誰かに見られたくなくて、帽子を目深にかぶって。これも、当時の私の「ええかっこしたい」見栄ですね。

 そしたら、「あれ、美穂さん!」とすぐ近くにいた店員さんが声を掛けてきたんです。「覚えてますかー! ラクロス部の西田ですー!」。私の青春、ラクロス時代のつながりでかつて知り合っていた他大学の後輩が、偶然にもアクセサリー売り場で働いていたんです。

 東京砂漠で寂しさに駆られていた私は、関西弁を聞くだけで心がほどけるような気分に。「じゃ、なんか買うわー」とフープピアスを手に取ると、「ちょっと待ってくださいね、美穂さん。アクセサリーを選ぶときは全身のバランスが大事なんですよ」とトモちゃんは、お店の端っこからガラガラと姿見を引っ張ってきました。「ほら、ここに立ってください。うーん、こっちのほうがいい!」。私はせっかく再会した後輩のためにとちょっと奮発して、2万円くらいのピアスを買うことにしました。

 商品を決めてお会計をしている間にトモちゃんが教えてくれた話によると、私は読売テレビ時代に、心斎橋の高島屋でもダイヤのプチネックレスを買ったそうです。すっかり忘れてたんですね。

――ご自分が周りの人にしてあげたことは、あっさり忘れてしまうタイプなんですね。

 そうなのかな。懐かしい会話を交わしながら連絡先を交換しようということになり、トモちゃんが自分の電話番号とメールアドレスを黄色い付箋に書いてくれました。

 何気なくその文字を眺めていた私は、突然、息が止まりました。「……!」トモちゃんのメールアドレスに「69」の文字。もしかして……。「はい、誕生日、6月9日ですよ」「ウッソー! 私もおんなじー」「ほんまですかー」。その数日後には一緒にご飯を食べる約束をしました。

 六本木で串カツをつまみながら(これも関西人ならではですね)、お互いに身の上話を交換し合う中で、トモちゃんが同じ大学のラクロス男子部の子と結婚したことを知って、私はとてもうれしくなりました。

自分がしたことが誰かの役に立っている

――「小西美穂が『ラクロス界のレジェンド』と呼ばれる理由」の記事で詳しく書いたように、小西さんは関西でラクロスというスポーツを切り開き、盛り上げていた張本人ですものね。

 私がやったことが、誰かの幸せを生むきっかけにもなったんやと。「私もちょっとは人の役に立ってたんやな」と、心にポッと火がともるような気持ちになれたんです。その頃、仕事面で「人に求められていない不安」に押し潰されそうになっていた私にとって、トモちゃんの笑顔は救いになりました。

 このトモちゃんとの出会いは、その後の小西さんの人生を大きく変えることになる。長い長いトンネルを小西さんをどのように抜けたのか。続きはまた来週。

聞き手・文/宮本恵理子 写真/稲垣純也

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Profile
小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ「深層NEWS」ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組「news every.」でニュースを分かりやすく解説。関西出身の親しみやすい人柄で支持を集める。著書に「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/06/26掲載記事を転載
小西美穂 41歳の一人誕生日と人生が好転する出会い