小西美穂 数値化できない貢献でもチームに必要な人

小西美穂 数値化できない貢献でもチームに必要な人

2018/05/15

ラクロスで学んだ 温度差が生まれたチームに大事なこと

 夕方放送の「news every.」に出演中の日本テレビ解説委員兼キャスターの小西美穂さんは、関西弁を交えて語る柔らかな人当たりと、ツボを押さえた信頼感のあるコメント力で、初対面でも信頼関係をつくってしまうコミュニケーションの名手だ。

 小西さんは学生時代に、日本に上陸したばかりで無名のスポーツだったラクロスを関西の大学に普及するため、たった一人の活動から体当たりで粘り強い運動を続け、見事にそのカルチャーを根付かせた。その功績から「ラクロス界のレジェンド」と呼ばれている。当時やってきたことはすべて今の仕事に生きていると振り返る小西さんに、ゼロからプロジェクトを生み出しチームをつくっていく極意を聞いた。

――現在は競技人口が男女合わせて1万7000人を超えるそうですが、ブレークスルーとなった転機はなんだったのでしょうか?

 私がラクロスに出合って4カ月後の9月に、世界女子ラクロス協会から7人のコーチ団が来日したことです。日本への普及が目的で、本格的な指導者を送り込んだんですね。関西にはカナダ人とイギリス人のコーチが二人、来てくれました。

 本場の指導を受けられるチャンスはめったにないと、3大学合わせて25人の選手全員が合宿に参加して、基礎からテクニックを教わりました。それまで試合すらしたことがありませんでしたが、合宿最終日には紅白戦で締めくくり。コーチから「グッジョブ!」と褒めてもらえた瞬間、全員がグラウンドに立ったままボロボロと泣いていました。

 それまで「ラクロスやって、本当に楽しいの?」と半信半疑だったメンバーも、ほとんど練習に参加したことがなかったメンバーも一緒になって、全員の胸に「ラクロスの灯」がともった瞬間でした。

 この後、順調にメンバーも増えて、大学対抗のリーグ戦を開催できるほどの規模へと発展していったんです。

規模が大きくなると多様な人が集まり、課題も生まれる

――何か新しいプロジェクトを始めようとするときに、メンバー間の意欲に温度差が生じることは、職場でもよくあることだと思います。その状況を打破したのが、本場のコーチにラクロスが何たるかを教わるという共通体験だったんですね。

 チームの雰囲気をまとめるには、皆が心から面白いと思うことが不可欠だと思うんです。本当に「これをやってみたい」と思わないと、人は動かない。だから、仲間を巻き込みたいときには、自分の情熱をアピールして「やりましょう!」と呼びかけるだけでは足りない。相手にもそう思わせる材料やきっかけをつくらないといけないのだと、この経験から私は学びました。

 私がどれだけの情熱を注いでいるかは、外国からやってきたコーチ二人にも伝わったようです。合宿の前後の滞在場所として私の実家に泊まっていただいたのですが、家の至る所にあふれるラクロスの資料の塊に驚いていました。

 カナダ人コーチのパティ・スコットさんが全員のクロスにメッセージを書いてくださったのですが、私のクロスには「Hard Work Pays Off」という一言が。つまり、「頑張っただけ報われる」。うれしかったですね。ちなみに、ややボケキャラでムードメーカーだった子に書かれたメッセージは「No problem!(大丈夫!)」。そのまんまでオッケー! ってこと(笑)。これは今でも当時のメンバーが集まった時に誰かが引っ張り出すネタで盛り上がりますね。

――規模が拡大していってからは順風満帆でしたか?

 部員が100人以上に増えてからは、大人数をまとめるだけのリーダーシップが問われるようになりました。会社も同じだと思いますが、組織の規模が大きくなると、いろんな人が集まってきます。

 私のような初期からガツガツやっているコアメンバーは化粧っ気もなく、日焼け止めさえほとんど塗らずに練習に明け暮れ、練習時間以外もあちこちラクロスのために走り回っているのですが、ロッカールームで顔に粉をはたき続ける子や、ハイヒールに高級ブランドのバッグをぶら下げてやってくる子、タバコを吸う子など、いろんなメンバーが入ってきたんです。

 内心、「ちょっとちゃうやろ」と思うけれど、ちゃんと練習して結果も出していれば、彼女たちを排除する理由もないわけですよね。それに、ヘビースモーカーだった子は意外にも走らせると早くて、試合に出すとめっちゃ活躍したりしますから(笑)。

 実際、そのメンバーで全日本選手権で優勝することもできましたしね。

――結果が求められる組織の中でよくあるのが、「やる気があるグループ」と「やる気のないグループ」とに分断してしまうという状況。近い雰囲気だったのでしょうか? だとすると、どう解決しましたか?

やる気があるグループとないグループ、どうまとめるか

 多少そういう雰囲気になっていたかもしれませんね。それをどう解決したかというと、キャプテンだった私だけの力ではどうしようもなくて、仲間に頼りました。

 いませんか? グループ同士の間をうまく取り持つような潤滑油的役割を自然と担ってくれるような人。受容力があって聞き上手で、伝達役になってくれる。

 そういう子がやはり当時のチームにもいて、私はずいぶん助けられたんですよね。その子は自分を前に出すタイプではないから、選手としても控えめで、レギュラーとしては活躍していなかったりする。でも、チームをまとめて勝利に導くには欠かせない主要メンバーだったんです。

 だから、私はその貢献をできるだけ言葉にして、「あなたのおかげでチームがまとまっている。本当に助かっている。ありがとう」と本人に感謝を伝えていました。チームへの貢献の仕方は人それぞれで、その違いをリーダーが認めて、評価するアクションは大事ですよね。

 それに卒業してン十年となった今でも、彼女はやっぱり潤滑油的役割を果たしてくれていて、当時のメンバーがずっと交流を楽しめるのも彼女のおかげ。ものすごく大きな魅力だし、皆にとっても財産になっているんですよね。選手としては目立たなかったかもしれないけれど、長い目で見たときにはすごく存在感が光っているなと感じます。

 会社にもいますよね。誰もが評価するようなスマッシュヒットを打ったことはないけれど、皆から頼りにされて、同じフロアにいるだけで周りに安心感を与えてくれるような人。

 決して数値化はできない貢献だけれど、組織にはなくてはならない存在だと思います。

――あらためて、ラクロスで培った経験が、職業人としての小西さんに与えた価値とは何でしょうか?

 何もないところから新しい流れをつくる面白さを知れたこと。自分の頭で考えて、できる努力をすべてした結果、だんだんと賛同者が増えて、いつのまにかたくさんの人が楽しんでくれている姿を見られたこと。

 この経験があったから、私はゼロから始めることに対して何も怖くないんです。初めての記者としての仕事。女性として社内で初めてだった海外特派員。30代半ばでの転職と上京。キャスター職への挑戦。すべて、ゼロからの挑戦でしたが、前向きにがむしゃらに道をつくることを楽しめる自分がいました。

 若いほうが怖いもの知らずになれるのは事実だと思います。でも、いくつになっても挑戦はできるし、日経ウーマンオンライン読者の皆さんはまだまだ若い! 今日とは違う明日が来る喜びを忘れずに、チャレンジを楽しんでいただきたいですね。

 母校の女子ラクロス部は今年で30周年を迎え、この5月には記念式典も開催されました。あの頃の私を後輩たちの姿に重ねて感無量。パイオニアの一人としてこれからもずっと日本のラクロスを応援していきたいと思います。

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聞き手・文/宮本恵理子 写真/稲垣純也

Profile
小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ「深層NEWS」ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組「news every.」でニュースを分かりやすく解説。関西出身の親しみやすい人柄で支持を集める。著書に「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。インスタアカウントはmihokonishi69

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/05/15掲載記事を転載
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