「嫉妬やすれ違いある」小西美穂の35歳からの友情論

「嫉妬やすれ違いある」小西美穂の35歳からの友情論

2018/04/09

キャスター小西美穂の人生を変えた友人の一言 斜め上の関係

 放送作家・山田美保子さんから「最もお手本にすべき女性キャスター」と評される「news every.」キャスターの小西美穂さん。「人生が変わる1分間の深イイ話」(日テレ系)での密着取材は大反響を呼び、本コラムでも、女性たちから小西さんの熱い言葉に共感の声が上がっている。今回は、小西さんのキャリアの転機を伺いながら「女友達との関係」について聞いた。

――女性としての人生と報道記者としてのキャリアのはざまで葛藤していた小西さんの背中を押したという女友達のエピソード(「小西美穂『仕事にガツガツ挑戦する人生も悪くない』」)、感動的でした。一方で、「仲が良かった女友達とうまく付き合えなくなってきた」とモヤモヤを抱え始める女性も多いようです。小西さんの場合もそんな時期はあったのでしょうか?

 もちろん、ありますよ! 働いていると、置かれた状況や立場の違いは多様化していきますよね。さらに女性の場合は、結婚するかしないか、子どもを産むか産まないかといったライフイベントの選択によっても、生き方は大きく変化していくもの。だから、20代、30代、40代と年齢を重ねるにつれて、「自分の気持ちを本当に理解してくれる友達」はなかなか見つけづらくなる。

嫉妬やいら立ち、羨望が渦巻く時期はある

 学生時代や社会人になって間もない頃には、同じような愚痴や悩みを打ち明けられていた友達と、なぜか距離ができてしまう。もっと言えば、自分では認めたくないくらいの嫉妬心やいら立ちを感じることもあると思います。

 「彼女のほうが充実していそうで羨ましい」「私はどうしてこうなの?」とモヤモヤが膨らんでいくけれど、プライドがじゃましてマイナスの感情を素直に吐き出すこともできない。友達の幸せを素直に喜べない自分を発見して自己嫌悪に陥る。私もそんなドロドロした感情にまみれていた時期がありましたよ。

 でも、今ならこう思えます。嫉妬や羨望を感じてしまうのは、それだけ頑張っているから。自分が信じる道で必死に努力しているから、「私はこんなにやっているのに」と反発したくなるのだと思います。何も頑張っていなかったら、何も感じないはずですよね? だから、嫉妬心を抱くことは決して悪いことじゃない、と20代・30代の皆さんには伝えたいですね。

――いつごろ、どんなドロドロを抱いていたんですか?

 やっぱり30代後半が一番キリキリしていたかな。その頃、私は3年間のロンドン赴任から帰国して、また日本で仕事を頑張ろうと思っていた時。ふと周りを見渡すと、学生時代に仲が良かった女友達のほとんどが結婚して子どもを産んで、「お受験が大変よね」とか「PTAってさ」という話題で盛り上がっているんです。そういう話題は興味を持って聞くことはできるけれど、自分は経験していないから心から共感することができない。「大変、大変」と言いながらも輝いて見える彼女たちの横顔を見ながら、「私は職場で毎日机にしがみついて原稿と格闘して、夜討ち朝駆けで残業もして……。すごく頑張ってきたつもりだけど、これでよかったのかな」と気持ちが揺らぐことが何度もありました。

 でも、後から聞けばそれはお互いさまだったみたい。仕事を辞めて母親業に専念していた友人から言われたんです。「美穂がロンドンから中継している映像をテレビで見ながら、『なんで私はこんな所で掃除機かけてんだろ』って思ってたのよ」って。

「ぬか床」のように発酵させたらいい

――そんなふうに打ち明けられる時期をまた迎えられたということですね。

 そうそう! 私自身の経験から思うのは、「今はお互いに環境が違うから、あまり理解し合えないし、会っても楽しめないな」と感じたら、無理に取り繕うことはしなくていいということ。大丈夫。本当に大事な友達は根っこのところでつながっているから、心配しなくていいと思うんですよ。

 うーん、例えるなら、「ぬか床」みたいに時間を置いたほうがいいってことかな。

――「ぬか床」ですか?!

 そう。まさに「ぬか床」。ぬか床って適度に放っておくほうが漬物がおいしくなるといいますよね。そのぬか床のようにプツプツと発酵させておいしくなるのが女の友情。お互いに嫉妬や羨望する時期からさらに時間をかけてそれぞれのステージが変わってくると気持ちに余裕ができて、今度はお互いをリスペクトできる極上の時間が待っています。

――ぬか床、ぜひ熟成させたいです。何がきっかけになるのでしょうか?

 やっぱりお互いに「ここまでは頑張りたい」と目標にしていた節目を乗り越えられた時だと思います。子育て中であれば受験が一段落した時期とか、私であれば「この仕事で絶対に力を付けたい」と決めていたチャレンジを乗り越えた時。年齢にすると40代以降でしょうね。

 上り坂を必死に上っている時って滑り落ちないように必死でしんどいから、周りのことまで気にする余裕はない。でも、上り坂を上り切ってちょっと踊り場みたいな場所に出られたら、フーッと深呼吸して周りを見渡せるでしょ。すると、自分が上ってきた坂とは違う坂を上り切った友達ともう一度出会えるんです。上った坂は違うし、道の途中でどんな出来事があったかは知らなくても、上り切るまでの努力やつらさは分かり合えるから、お互いに「よくやったよね」とたたえてリスペクトできる。

 そうやって再会した女友達とは、今も気の置けない関係で、月1回くらいは会ってにぎやかに飲み食いしています。

――どんな話をするんですか?

 アホな話ばっかりしていますよ。関西人だから、基本、自虐ネタです(笑)。「子どもの出来が悪くてしょうがない」とか「仕事でこんなぶっ飛んだことあって参った」みたいな「しくじり話」ばっかりしています。熟成された関係になると、お互いにカッコつけなくていいから最高にラクなんですよ。

――すてきですね。そんな関係に再びなれると信じられたら、「友達と一時的に距離ができてしまっても、気にし過ぎなくていい」と思えそうです。

友人の一言が小西さんの人生を変えた

 その通りです。それに、本当に自分が頼りたいと思う友達とは、ここぞという人生の節目で何が何でも会いに行くと思います。私がロンドン赴任を迷っている時に友人に会いに行ったときもそうでした。(友人の一言が小西さんの背中を押してロンドン赴任を決断した話は、「小西美穂『仕事にガツガツ挑戦する人生も悪くない』」)友人とはいえ、他人の人生の決断を左右する一言を口にするのは勇気がいることだったと思います。でも、きっと彼女は、私の顔に「本当は行きたい」とハッキリ書いてあるのを確認して、私を楽にしようとしてくれたんだと思います。忘れもしない。大阪のカフェで、あの時の私の背中を押してくれたことは今でも感謝しています。

――その方はどういう関係のご友人だったのですか?

 年齢は3つ上。旅行会社でバリバリ働いている女性です。業界は違うし、お互いに忙しいからめったに会わないんだけれど、多くを語り合わなくても、頑張っていることを理解できるという同志のような関係。

 出会いはなんと北極圏(笑)。彼女がツアー開発のためにスカンジナビア政府観光局(当時)に案内されて訪れたノルウェー北端の秘境に、たまたま私が個人旅行をしていたという妙な縁。確か社会人になって数年目くらいで、テレビで北欧特集を見てすごく行きたくなってしまって、自力でコースを調べて旅していたんです。果敢に一人旅をする私を見つけた彼女が「なんでこんなとこに日本人がおんねん!」となって(笑)、以来の縁です。きっと深いところで価値観が一致しているからそんな所で出会えたのでしょうね。

 社内ではなく社外の友人であることも、かえって長く付き合いやすかった理由かもしれないです。歳も上だから、いわゆる「斜めの関係」でしょうか。

同世代だけが「一生ものの友人」ではない

――年上のご友人から感化されたことは他にもありましたか?

 ありましたね。私は大学時代にラクロスに没頭していて全日本代表の選手だったんです。そろそろ同級生が引退しかけている大学4年生の頃、もう一度、代表選考のチャンスがあってすごく悩んだことがありました。「オールジャパンの選手としてまだ頑張ってみたい。でも、同期は引退してるし、後輩にポジションを譲るべきなんじゃないか……」とグルグル悩んで答えが出なくて。思い切って相談してみたのが、アルバイト先の社員だった9歳上の女性です。

 当時、私は英語の勉強も兼ねて、関西在住の外国人向けの情報誌「関西タイムアウト」の編集部でアルバイトをしていたんですね。そこで編集者として働いている女性の一人が、仕事ができてとてもカッコよくて。当時、はやっていたDINKS(Double Income No Kids:子どもを持たず共働きで生活する夫婦のライフスタイル)をサラリと体現していて、旦那さんのことを「○○君」と呼ぶようなところに憧れていました。

 でも、学生の身分からすると30歳前後は立派な大人です。緊張しつつ、あらたまった顔で悩みを打ち明けた私に、彼女はこんなふうに助言をくれました。

 「美穂ちゃん。人は皆それぞれに、自分で自分に優しくしているねん。だから、美穂ちゃんも自分に優しくすればいいんだよ。やりたいようにやったらいい」。

 この言葉に、私は「自分の気持ちを一番に考えていいんだ。だったら、私、まだ競技を続けたい!」と素直に思えて、選考試験を受けてもう一度オールジャパンメンバーになれたんです。読売テレビに入社した1年目も選手活動を続けさせていただいて、国際親善試合にも出られた。その後、引退を決めたんですが、「最後までやり切ることができた」と心から満足できたんです。本当にあの時にいただいた一言のおかげだと思っています。今は大学教授になられていますが、交流はずっと続いています。

――すてきなお話ですね。逆に小西さんが他の方から「あの時の一言のおかげで」と感謝されることもあったのではないですか?

 どうでしょうねぇ。何度かそんなふうに言われたことはありますけど、当時の自分としては深く考えずにパッと伝えた一言だったりしますよね。感謝してくれている相手に「え? そんなこと、私言うたん? そんな偉そうなこと、言ったかなぁ」と返して怒られることもあります(笑)。

 こういう振り返りも含めて、友達関係って時間を重ねるほどに面白くなるなぁと思っているんですよ。

聞き手・文/宮本恵理子 写真/稲垣純也

Profile
小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ「深層NEWS」ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組「news every.」でニュースを分かりやすく解説。関西出身の親しみやすい人柄で支持を集める。著書に「3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/04/09掲載記事を転載
「嫉妬やすれ違いある」小西美穂の35歳からの友情論