励ますつもりが逆効果 「嫌みな先輩」にならない秘訣

励ますつもりが逆効果 「嫌みな先輩」にならない秘訣

2018/03/27

面談の場でも応用できる 相手を励ます「ペップトーク」

 人を励まし、やる気を引き出す話し方の技術である「ペップトーク」。スポーツの世界で生まれた話術ですが、先輩から新人への声掛けにも応用できます。ただし、信頼関係が構築できていないと、イヤミに聞こえることもあるそう。今回はペップトークをする下地となる信頼関係のつくり方について、日本ペップトーク普及協会専務理事の浦上大輔さんに聞きました。

第1回 先輩社員が告白 私たちが新入社員にモヤモヤする瞬間
第2回 新人のモチベーションを上げる「認める」スキル
第3回 新人のやる気をそがずにミスを指摘する二つの方法
第4回 新人が「期日を守れない」背景と対処法
第5回 新入社員の正しい「叱り方」 叱るべき状況は二つだけ
第6回 後輩のやる気を引き出す「ペップトーク」の4ステップ
第7回 電話に出ない・言われたことしかやらない新人の認め方
第8回 励ますつもりが逆効果? 「嫌味な先輩」と思われない秘訣(この記事)
新人に「教わっていないからできません」と言われたら

 これまでお伝えしてきたように、ペップトークには4つのステップがあります。相手に寄り添う(1)受容、マイナスをプラスに転換する(2)承認、「してほしいこと」を伝える(3)行動、最後に背中を押す(4)激励です。

 さて、あなたが新人に仕事を任せたら「それは教わってないからできません」と言われたとします。何と言えば効果的なペップトークになるでしょうか。

×間違ったペップトーク
 「教わってないからできないと思うよね。私もそうだった。でも、そういう逆境を乗り越えてこそ人は成長するんだよ。まずは四の五の言わずにやってみよう! 大丈夫、できるよ!」

○正しいペップトーク
 「確かに、教わってないことだからできないと感じるよね。私がこの仕事をあなたに任せたいのは、自分で調べてやり方を見つけるのも、仕事の大事な工程だからだよ。やってみて分からなければアドバイスするから、まずは一歩踏み出してみよう」

 間違った例は、一見「受容」「承認」「行動」「激励」の4ステップを踏んでいるように見えます。しかし、信頼関係を築けていない段階でこう言われたら、新人は自分の思っていることを理解してくれていないと感じてしまいます。

 「教わってないからできません」というのは、先輩の狙いと新人が求めていることが違っているために起こります。先輩側は「自分から積極的に仕事を覚えてほしい」と思っていたとしても、新人のほうは「覚えていない仕事を勝手に引き受けて間違えたら迷惑になってしまう」と思っているかもしれません。

 そこで、まずは「教わっていなくても、調べてやり方を見つけるのも大事」と明確に伝えてあげるのです。加えて、「どんな情報があったら挑戦できそう?」「どこまでは自分で分かってる?」と聞いて、新人が求めているものを具体的に探していくのもいいでしょう。

ペップトークの前提は「本気で相手を考えて言う」

 ペップトークでは、何を言われるかも大事ですが、誰に言われるかのほうがもっと大事です。ペップトークを使う人のことを「ペップトーカー」と呼んでいるのですが、「何を言うか」と「誰が言うか」の掛け合わせで、ペップトーカーになれるかどうかが決まります。

 相手と信頼関係のある人が、相手をやる気にさせる言葉がけをできれば、それはペップトーカーです。しかし、信頼関係を築けていないのに言葉だけが巧みだと、とても嫌みっぽく聞こえます。私たちはこれを「イヤミ族・ウワベ族」と呼んでいます。また、信頼関係はあるけれど使う言葉がネガティブな場合は、「カラクチ族・クチワル族」、どちらもなければ「パワハラ族」です。

 尊敬している人に「最近頑張ってるね」と言われたらすごくうれしいけれど、関係の悪い人に同じことを言われたらイヤミに感じますよね。イヤミだと取られないためには、相手の立場に立ち、本気で相手のことを考える必要があります。また、相手から見て、自分がその言葉を言うに値する人間になることも大切です。聞き手は普段の行動をよく見ているからです。

言葉で信頼関係を築くポイント

 ペップトークを有効にする信頼関係を築く方法はいくつもあります。話を聞く、挨拶する、約束を守るなどのコミュニケーション。そして、言動が一致していることも大切です。このように、信頼関係を築くのは言葉だけではありませんが、言葉の使い方にはコツがあります。

【言葉で信頼関係を築く二つのポイント】
1:小さな行動を見逃さない
2:「もったいない」視点で伝える

 一つ目は、相手の小さな行動を見逃さないこと。例えば、声が小さくても新人が挨拶をしたら「挨拶してくれてありがとう」と伝える。自分には不満なレベルだとしても、まずは行動を褒めるというものです。100回のうち1回でも挨拶をしていたら、それを見逃さずに伝えます。できていることを伸ばしていく言い方です。

 二つ目は、「挨拶がない」「笑顔がない」など、何かを「足りない」と言ってしまうとストレート過ぎるので、不足点があることを「もったいない」と伝える方法です。例えば「◯◯さんは話をまとめるのが上手だし、人に伝わる文章が書けるよね。だから、話すときは笑顔になるともっといいと思うよ」という言い方をします。できるからこそ、足りない部分があるのはもったいないのだと分かれば、相手もその部分を改善したくなるでしょう。

 普段から「◯◯さんならできるよ」「こういうところがすてきだよね」「◯◯さんが頑張っているのを見て頑張ろうと思ったんだ」といった言葉をかけているだけでも信頼関係は築けます。言葉が信頼関係をつくり、信頼関係があるから言葉が効いてくるんですね。

新人との面談にペップトークを応用してみよう

 面談の場でも、ペップトークの4ステップを応用することができます。新人との面談シーンを例に紹介しましょう。

(1)受容

先輩「今日は時間を取ってくれてありがとう。最近どう?」

新人「最近、やる気が出るときと出ないときがあるんです」

先輩「そっかそっか。私もすごくやる気があるときもあれば、やる気が出ないときもあって、どうやってこの波をキープするか考えた時期があったよ」

(2)承認

先輩「やる気があるときは、どんな感じなの?」

新人「メールの返信も早くできるし、資料の作成も進みます」

先輩「どうしてやる気があるのかな?」

新人「うーん、よく寝れてるからですかね……?」

先輩「他にもある?」

新人「朝、少し早く出社できた日はやる気が出ます」

先輩「よく寝れて、早く会社に行けるとやる気が出るんだね」

(3)行動

先輩「じゃあ、これからやる気を維持するためにはどうすればいいと思う?」

新人「期日が近い仕事があると、残業して頑張っちゃうんですけど、なるべく朝の時間に集中してみようと思います」

(4)激励

先輩「夜は早めに切り上げて、朝に回したほうがやる気が出るかもしれないね。じゃあ一回試してみようよ。やってみて、どうだったかまた教えて?」

 どうでしたか? ペップトークの4つのステップを用いて、相手の状況を理解しながら、新人と一緒に答えを出していきました。スポーツの世界で生まれたペップトークですが、このように新入社員とのコミュニケーションにも応用することができます。ぜひ新人と信頼関係を築き、上手に励ますことができる先輩社員になっていただけたらうれしいです。

文/飯田樹 写真/PIXTA

<この人に聞きました>
浦上大輔(うらかみ・だいすけ)さん
一般財団法人日本ペップトーク普及協会専務理事。一般社団法人日本朝礼協会理事。北海道大学で運動生理学(健康体育科学修士)、理学療法学を学び、運動指導のスペシャリストとして、学校体育、リハビリ医療、高齢者介護の現場で活躍。現在は人をやる気にさせるペップトークの講演・研修を企業、学校、医療・介護、行政、各種団体で行う。著書に「たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク」(フォレスト出版)がある。

Provider

日経ウーマンオンライン

2018/03/27掲載記事を転載
励ますつもりが逆効果 「嫌みな先輩」にならない秘訣