Vol.3 将来の“ありたい姿”への近道としてUターン就職を選択しました

広島県の東南部に位置し、三方を山々に囲まれた府中市。
古くから機械・家具・金属などの製造業を中心に「ものづくり」のまちとして発展し、全国規模の企業が数多く立地している。
また、府中市では子育てを全面的にサポートし、「保育園の待機児童はゼロ」。
女性が就業しやすく、多様な働き方ができる地域でもある。
そんな府中市で、今まさに活躍している女性をクローズアップ。
今回は、府中市で生まれ育ち、大学進学で東京に出た後、就職を機に再び地元に帰った杉岡智美さんに、Uターンを決めた経緯や府中市での仕事や生活について聞いた。

思い描いた将来像に近づくために地元を選択

株式会社北川鉄工所
工機事業部
営業部海外営業3課
杉岡 智美さん(32歳)
Tomomi Sugioka

「今後の自分にとって、この都会の生活は必要なんだろうか……。
 生まれ育った府中から東京の大学に進み、都内で学生生活を送っていた杉岡智美さん。進路を決定するにあたり、そんな問いを自分に投げかけた。
「地元に戻ることも視野に入れ、東京と府中の両方で就職活動を行っていたのですが、内定をいただいた数社の中から就職先を選ぶ際にすごく迷ってしまって。そこで、まず考えたのが、これからの自分はどうありたいのか、それには何が必要なのかということ。東京での毎日は刺激もあるし、便利だし、それなりに楽しい。ただ、いろんなことに選択肢がありすぎて疲れる部分もあり、そういう生活は大学の4年間だけで十分かなと。それより、将来は仕事をしながら結婚もしたいし、子どもも欲しい。それが実現できる環境かどうかという視点で、働く場所を検討し直したのです」
 そして、自分の“ありたい姿”に近づくには「地元に帰った方がいい」と判断。府中で内定が出ていた北川鉄工所に就職することを選んだ。入社の理由は、70年の歴史を持つ「ものづくり」の企業だということ。主な事業として金属素形材事業、工機事業、産業機械事業、駐車場事業を展開する同社は、国内シェアNo.1を誇り、世界180カ国が愛用する工作機器製品を製造・販売するなど、世界中から評価されているグローバル企業でもある。
「府中市は“ものづくりのまち”と、小さい頃から刷り込まれていました(笑)。その響きが心地よく、自分も“ものづくりに携わりたい”という気持ちが自然と培われ、日本のものづくりを支える会社で働くことがとても魅力的に思えました。それと、実は母が北川鉄工所で働いていたということも入社の動機のひとつ。仕事と家庭を両立できる会社だということを、共働きしながら姉と私を育てた母が実証しているわけですから」

社内の英会話クラスでスキルをアップ

チャック・シリンダー 杉岡さんが扱っている工機製品、チャック・シリンダーは、旋盤の工具や工作物を周囲から締めつけて固定させる装置。高精度・高強度を誇る北川鉄工所の同製品は、「世界のスタンダード」として、世界180カ国で愛用されている

 入社後は、工機事業部営業部海外営業3課に配属され、国内と海外のつなぎ役として、米国にある代理店からの受注などに対応。海外販売している工機製品の受注から製品手配、輸出手配、輸出書類の作成、販売後の売掛金の管理まで仕事内容は幅広く、メールや文書、電話連絡などで英語を使う場面も多い。
「英語は好きでしたし、話せるに越したことはないと思って、大学時代に外国人の知人から英会話を教えてもらいました。日常会話はなんとか身につけましたが、仕事を始めて“これは大変”だと。自分の英語力は、ビジネスでは全然使えないレベルだったのです」
 そこで、新人時代は上司の補佐をしながら、英語でのやりとりを見て学んだり、ビジネスでの定型文を覚えたりと日々の積み重ねで習得していった。また、同社では4年ほど前から、社内に社員専用の無料英会話クラスを設置。常駐の英会話講師により個人レッスンやレベル別のグループレッスンを行っている。杉岡さんは週に1回個人レッスンを受け、英語の文書をチェックしてもらったりと語学力アップに役立てているという。
 着々とスキルを磨き、キャリアを積む一方、プライベートでも思い描いたとおりの展開に。2011年に社内の男性と結婚し、その2年後には男児を出産した。

「妊娠したとき、他の会社に勤めている友人に“仕事は続けるの?”と聞かれましたが、“もちろん続ける”と即答しました。というのも、弊社では出産後も仕事を続けるのは当たり前という雰囲気で、女性社員の多くはワーキングマザーです。私が産休・育休をとるときは、休みに入る1カ月前に新入社員を配属してもらえたので、付きっきりで引き継ぎを行い、安心して休むことができました。復帰後も子どものことで急に早退しなければならない場合でも、同じ課内で仕事を共有しているので、後の仕事をお願いしやすく、しかも快く引き受けてくれるのでとてもありがたいです。社内には先輩ママがたくさんいて、子育ての悩みを相談できるのも心強いですね」
 また、同社には各部署の女性社員の代表で構成される“女性委員会”という組織がある。ここでは、女性社員の要望や意見を吸い上げ、改善していくという取り組みを実施。1時間単位で時間休をとれるようにしたり、働く時間帯をスライドできるようにしたりと、子育て中でも働きやすい職場づくりの一助を担っている。

子育てのしやすさで住む場所を選定

社会貢献として地域活動に積極的に取り組んでいる北川鉄工所。1330人(2016年11月1日現在)の社員全員が清掃や植樹などのボランティア活動を行い、祭りへの参加やサポートも担う。とくに、備後国府まつりでは、若手を中心に約80人が練習を重ね「よさこい」を披露。こうした活動が、社員の結束にもつながっている

 きちんと自分のライフプランを考える。それは、住む場所を選ぶにあたっても同様で、結婚当初は広島県福山市に住んでいたが、妊娠を機に府中市へと転居した。「仕事と子育てを両立するには、子育てサポートが充実していて、待機児童もゼロの府中市に住むのがいちばん」と考えた上でのことだった。
 府中市の充実した子育てサポートのひとつは、保育所や幼稚園に入る前の子どもと保護者が自由に遊べる子育て支援センター。市内に数カ所あり、杉岡さんも育休中はよく利用した。
「支援センターには保育士がいて、育児の悩みを相談できたのはうれしかったですね。同時期に出産した中学校時代の友だちと集まって遊んだり、新しいお母さんと知り合ったりと、同じ状況の人と話をすることで、不安の多い初めての育児も乗り越えられました」
 育休明けには子どもを希望の保育所に入れることができ、仕事にもスムーズに復帰することができた。
「もともと、ゆったりと時間が流れる府中が好きだった」という杉岡さんだが、Uターンしてからも地域のよさを再発見することが多々ある。
「しみじみいいなと思ったのは、住宅街を流れる小さな川のほとりで毎年蛍が見られること。3歳になる子どもも大喜びで、豊かな自然の中で子どもを育てられるところが魅力です。地域のイベントも多く、夏の備後国府まつりや全国的に有名な府中みそのお祭り、商店街で行われるハロウィーンなど身近なところで子どもと楽しめるのがいいですね」

 コンパクトなまちだからこそ行政の目も行き届き、地域イベントも盛り上がる。そんな府中暮らしに「満足している」と杉岡さん。
「ただ、仕事については現状に満足せず、いつか他部署の仕事も経験してみたいですし、もっと成長していきたい。弊社の企業ビジョンのひとつ、“お客様第一主義”という価値観を大事にしていますが、つい自分の都合で動いてしまうことも。お客様あっての仕事ですから、常にお客様最優先で考えることを心がけていきたいです」