Vol.1 最先端の「看板」を全国に発信! 府中で出会えた天職に誇りを感じます

広島県の東南部に位置し、三方を山々に囲まれた府中市。
古くから機械・家具・金属などの製造業を中心に「ものづくり」のまちとして発展し、全国規模の企業が数多く立地している。また、府中市では子育てを全面的にサポートし、「保育園の待機児童はゼロ」。
女性が就業しやすく、多様な働き方ができる地域でもある。
そんな府中市で、今まさに活躍している女性をクローズアップ。
今回は、この地で「自分が本当にやりたい仕事」と出会い、生き生きと働く六反真紀さんに、仕事のやりがいやライフスタイルなどについて聞いた。

熱中できる「ものづくり」の仕事を模索

株式会社タテイシ広美社
企画デザイン課 課長
六反 真紀さん(47歳)
Maki Rokutan
 

「そんな働き方、いつまでもしてたらダメじゃろ」
 そろそろ30歳に近づきつつあった六反真紀さん。いつもの広島弁で、友人が発した一言が心に響いた。その当時、短期間で仕事を渡り歩くフリーターを続けていた自分を心配しての言葉だった。
 しかし、そんな働き方をしていた裏には、ある思いがあったという。それは、「いろんな職種を試して、自分が打ち込める“ものづくり”の仕事を見つけたい」ということ。
 府中市の隣にある福山市で生まれ育った六反さんは、絵を描いたり、マスコット人形やお菓子など、ものをつくることに夢中になる子どもだった。それはいつしか自分のキャリアビジョンとなり、「ものづくり」の仕事に就くために府中市内にある高校の家政科に進んだ。
「卒業後の就職先として志望していた会社があったのですが、高卒では専門的な技術が足りず断念しました。それで、ジーンズショップに就職したのですが、これではないなと感じて退職。以降、いろいろな仕事を試してみたいと思って、派遣社員として働いたり、短期のアルバイトをしたり。あまり女性向きとはいえない、コンクリートのブロックを作る工場でも働きました。いわゆる3Kの現場だったのですが、これがまったく苦にならなくて」
 やはり、自分は「ものづくり」に向いていると確信。周囲にもそう話していたところ、前出の友人が苦言とともに「ある会社の社長と面識があり、そこが人材を募集している」という情報をもたらしてくれた。その会社こそ、府中市で看板業を営むタテイシ広美社だった。
「看板業というのは何をするのかわからなかったのですが、会社見学に来てみたら、社員が看板を組み立てていたり、ペンキで塗装していたり。そういう作業を目にしたとき、“面白そう、コレをやりたい!”とピンときました」

案件ごとの創意工夫がやりがいに

サイン 時代のニーズに応え、最先端のテクノロジーを活かした製品を提供しているタテイシ広美社で働く六反さん。成田空港の免税店やカフェにも、自身が製作に関わったサインが輝いている

採用試験に合格し、1997年よりタテイシ広美社の正社員として一歩を踏み出した。当時、同社自体も、町の看板などを手がける一方、新規事業としてLED電光表示システムを自社開発し、大きな転換期を迎えていた。人材の面においても、パソコンでの作業が飛躍的に増えたため、その担い手として女性社員を積極的に登用。男性中心の会社から、女性も力を発揮できる会社へと移行しつつあった。
 そうした中で採用され、企画デザイン課に配属となった六反さん。仕事としては、お客様の意向を踏まえながら看板のデザインを考え、どのような仕様で製作するのかといったことを含めた企画書を作成し、一部製作も担当する。
「現在は製作と施工の部署は完全に分かれていますが、入社当時は社員が12人ほどで、そのうち5人が女性。人数が少なかったので、ほとんどの社員が施工にも行きました。

毎日の作業がルーティーンではないところが魅力で、なにより看板はお客様ごとに異なるものを製作するオーダーメイド品。毎回、違うデザインを考え、製品づくりをすることが、飽き性の自分にすごく合っているなと感じました」  ようやく「本当にやりたい仕事」に出会うことができ、すぐさま仕事にのめり込んでいった。ただ、天職と思える仕事でも苦労はある。それは、先駆的な事業を手がける会社で働いているからこそのもの。LED電光掲示板を開発した同社では、その技術を応用した最新のデジタルサイネージ(電子看板)にも取り組み、この分野で業界をリードする存在に成長。大手銀行や大手企業などビッグクライアントとの仕事が増え、それにともない製品への要求レベルがどんどんアップしているのだ。 「電子看板をデザインする場合、そのシステムを把握していないと企画書を作成できないのですが、電子の仕組みなどを理解するのはなかなか難しく、日々の勉強は欠かせません。ただ、最新のサイネージを学ぶために今年の5月に社員全員でアメリカのハリウッドへ研修旅行に行ったりと、会社側でも教育体制を整えているのは心強いですね」

のどかな府中暮らしで毎日充電

「19年前に入社したときから、いつも納期に追われている」と話す。そんなゆとりのない状態をみじんも感じせない、穏やかな語り口調が印象的。プライベートの時間は、なるべくのんびり過ごすことでバランスを取っているという

前年比で売上を2倍に伸ばし、急成長を遂げているタテイシ広美社。倍増している仕事を納期内に納めるのはもちろん、能力のある社員は男女を問わずリーダーに抜擢するという社風から13年前に課長に就任した六反さんは、部下の指導など管理職としての責務も果たしている。
 幅広く活躍するその元気を支えているのは、ゆったりと時が流れる府中での暮らしだ。2008年に結婚し、福山市から高校時代を過ごした府中市へと嫁いできた。
「自然に囲まれているところがいいですね。会社の窓からは山が見え、忙しいときでも緑を目にすると落ち着きます。台風などの自然災害も少ないですし、山はもちろん、海も近く、新鮮な野菜や瀬戸内海の魚が安く手に入るので、とても住みやすいですね」

 生活の基本となる住環境も食も、豊かな自然の恩恵を受けることができる府中市。ここでの暮らしそのものが、仕事でフル稼働している心身をリフレッシュしてくれる。
 また、府中市の市民オーケストラに所属し、チェロを弾く。「業務が忙しくて休団中ですが、楽器を弾いていると無心になれるので、いつか再開したい。学生時代に楽器をやっていた若い人たちに、たくさん府中に帰ってきて、ぜひオーケストラに入団してほしいです。」と話す。
「このまま府中でのんびり暮らしつつ、まだまだ仕事も頑張りたい。たまに、姪が住んでいる京都に行くのですが、駅前のLED防災情報掲示板は当社が納めたもの。そこを通るたびに、“これ、タテイシの”と姪に言ってしまい、“それ何回も聞いた”と返されています(笑)。これからも“自分が手がけた看板を町で目にする”という喜びを味わいたいですね。会社自体も現在社員数は37人と小規模ですが、大手広告会社とタイアップして2020年の東京オリンピック向けのデジタルサイネージを開発するなど、仕事が拡大しています。この小都市から全国へ製品を発信していることはとても誇らしいこと。そういう仕事に取り組めることに、幸せを感じます」