越前市で発見! キラリ輝く、モノづくり女子たち

vol.11濱理恵さん(34歳)
アシックスアパレル工業株式会社 縫製リーダー

スポーツウエアの会社に入社し“負けず嫌い”の気質で着実にステップアップ。縫製チームのリーダーとして、世界のアスリートに高品質の「日本製」を提供する。

共働き率全国ナンバーワン(※1)で、かつ出生率も全国上位を維持するなど、女性が産みやすく働きやすい環境が整っていることで有名な福井県。その中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについて、とりわけ手厚い支援体制があることで知られている。

今回は、スポーツを支えるモノづくり企業に勤務する濱理恵さん(34歳)に、仕事のやりがいや子育て事情などについて聞いた。

※1 福井県の共働き率58.6%、全国平均48.8%(総務省「平成27年度国勢調査」より)

苦手だからこそ、あえて仕事としてチャレンジ

濱理恵さん(34歳) アシックスアパレル工業株式会社 縫製リーダー
濱理恵さん(34歳) アシックスアパレル工業株式会社 縫製リーダー

 ミシンを自在に扱い、正確に、かつスピーディーに製品を縫い上げていく。鮮やかな手さばきに、さぞかし子どもの頃からモノをつくることが得意だったのだろうと推察したところ……。
 「それが全然(笑)。モノづくりに興味はなかったし、高校時代の家庭科の成績は低レベル。とくに、ミシンは大の苦手でした」
 濱理恵さんはそう振り返る。であれば、なぜ今の仕事を選んだのかという問いに、「苦手だからこそ、あえて仕事としてやってみたかった」と返答。チャレンジャーである。
 越前市に隣接する越前町に生まれ育ち、福井市内にある高校の商業科で学んだ濱さん。就職に有利になるように事務系の資格もいくつか取得したが、ひとつの求人に惹きつけられた。それが、アシックスアパレル工業だった。
 同社は大手総合スポーツ用品メーカーであるアシックスの子会社であり、国内唯一のアパレル生産拠点。海外や国内のトップアスリート向けスポーツウエアや各種競技向けチームウエアなどの製造を行っている。
 「中学時代に所属していた卓球部のユニホームやシューズがアシックスブランドでした。これが軽くて、動きやすくて、洗ってもすぐ乾く。すごくいいものだなという印象があったので、募集業務は縫製でしたが、苦手なことを克服し、アシックス製品をつくる仕事に携わりたいと思いました」
 競争率2倍という入社試験では、家庭科は不得意科目であることを伝えたが、無事に合格。2003年より正社員となった。

 

自分の裁量で仕事を進行できるリーダーに立候補

もともと北陸は全国有数の絹織物産地であり、現在では繊維加工の集積地。アシックスアパレル工業ではそうした地の利や、濱さんをはじめ熟練技能者の技術力を活かし、高品質のスポーツウエアを生産している
もともと北陸は全国有数の絹織物産地であり、現在では繊維加工の集積地。アシックスアパレル工業ではそうした地の利や、濱さんをはじめ熟練技能者の技術力を活かし、高品質のスポーツウエアを生産している

 入社時はゼロベースだったミシン縫いだが、いざ仕事となったら気合が入り、「負けず嫌い」の性格によって習得。さらに、同社の縫製部は9つのチームで各々異なる製品を担当するシステムだが、4年前に自ら手を挙げ、トレーニングシャツを担当するチームのリーダーに就任した。
 現在、19歳から60歳以上の女性従業員14名の先頭に立ち、縫製の順番や誰がどのパーツを担当するかなど完成までの全工程を効率を考えながら段取りし、納期に間に合わせるという重責を担う。
 「リーダーになる前に、いくつかの工程を任されたことがあり、自分の考えで進められることに面白さを感じたので、リーダーになることを目標にしていました。すべてを自分でコントロールできるリーダーはやりがいがある一方、従業員の急な休みなど突発的なことに対応しながら、常に支障のないように仕事を回していくという大変さもあります」
 また、チームで製品をつくり上げるので、協力体制がものをいう。そのため、濱さんはコミュニケーションを大切にし、みんなから相談されやすい雰囲気づくりを心がけ、チーム力を高める努力をしている。それは、ある先輩の一言で気づいたことでもある。
 「20代のとき、当時のリーダーから“明日の出来高どうしよう”と相談されたのですが、つい適当な返事をしてしまいました。すると、リーダーは“チームで仕事をするのに、そういう言い方はよくないよ”と。それがズシリときました」
 「今も感謝している」というその先輩の言葉が心に残り、チーム全体のことを考えるようになったという。
 積極性を発揮し、着実にキャリアアップした濱さん。プライベートでは、22歳で結婚し、25歳で女児を出産した。従業員約200名の約9割が女性という同社では、結婚し、子どもを持つ従業員が多いが、出産を理由に退職する従業員はほぼゼロ。もちろん、濱さんも産休・育休を経て、仕事に復帰した。

「子育て環境」と「住みやすさ」が移住の決め手に

「会社の育児休業制度が整っているので安心して出産できましたし、就業時間が8時半から17時までなので保育園の送り迎えも問題ありませんでした。なにより、職場には働くママが大勢いるので協力し合う意識が高いですし、とくに子どもが小さかったときは育児の相談もできて心強かったですね」
 会社はもちろん、結婚して移り住んだ越前市の子育て環境にも支えられた。
 「結婚前、私は越前町、夫は福井市に住んでいたのですが、新居を決めるときに二人で相談し、越前市を選びました。職場が越前市なので子育てしやすい地域だということは知っていましたし、自分の好みで選べるほどスーパーが何軒もあるなど、住みやすいことが決め手でした」
 実際に、保育園は土曜保育を行っている第一希望のところに入園できたり、子どもが病気のときは病児保育を行う病院に預けて出社できたりと、さまざまな面で助けられた。
 また、越前市出身の絵本作家、かこさとし氏監修の「だるまちゃん広場」や、かこさとし ふるさと絵本館「砳」など、休日に子どもと遊びに行ける施設が充実しているのも濱さんのお気に入りポイント。2019年11月には、雨の日も楽しめる屋内施設「てんぐちゃん広場」もオープンし、人気の遊び場となっている。
 「日本で開催される世界的なスポーツイベントが増え、今後ますます盛んになるスポーツに仕事を通じて関われることに誇りを感じます。昨年は、『福井国体2018』で福井県選手団が着用したユニホームをつくりましたが、開会式で選手が着ているのをテレビで見たときは感動しました。娘も“すごいね!”といってくれて嬉しかったですね。これからも、世界中のアスリートの方々に喜ばれるウエアをつくるために、“頼りになるリーダー”を目指します」

仕事柄、店頭で売っている服は必ず縫い目をチェックする。「自分はきれいに縫っているなと、いつも実感できます(笑)」と濱さん。去年手がけた「福井国体2018」の福井県選手団用ユニホームの完璧な仕上がりが、その言葉を裏付けている
仕事柄、店頭で売っている服は必ず縫い目をチェックする。「自分はきれいに縫っているなと、いつも実感できます(笑)」と濱さん。去年手がけた「福井国体2018」の福井県選手団用ユニホームの完璧な仕上がりが、その言葉を裏付けている

福井県越前市で働く

越前市には、認定こども園と保育園が私立・公立合わせて計24園ある。地域の子育て支援も行う施設のこと。保育園では通常の保育のほかに、延長保育、一時預かりなどがあり、柔軟な対応で働くママやパパを応援する。