越前市で発見! キラリ輝く、モノづくり女子たち

Vol.2

ニューヨークで築いたキャリアを糧に越前市で活躍するクリエイター・三木あいさん。その豊かな暮らしぶりに興味を持って、国内外からの友人がひっきりなしに越前市を訪れるそう。

「共働き率全国ナンバーワン(※1)」、「保育所の待機児童ゼロ」など、女性が働きやすい条件が揃っていることで有名な福井県。その中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについてとりわけ手厚い支援体制があることで知られている。今回は、ニューヨークで学んだデザインの技術と経験を生かし、越前市の伝統技術の魅力を国内外に発信するデザイナーの三木あいさん(37歳)に、キャリア形成と子育て環境について聞いた。※1 福井県の共働き率56.8%、全国平均45.4%(総務省「平成22年度国勢調査」より)

ニューヨークからの華麗なるUターン

三木あいさん(37歳)グラフィック・テキスタイルデザイナー イラストレーター

「私にとって地元に帰ることは人生の縮小ではなくて、一番の目的だったんですよね」。こうにこやかに話すのは、越前市にいながら国内外の仕事をこなし、子育てに趣味にと奔走する三木あいさん。

 大好きな絵本の影響で3歳のときから高校生までずっと、「絵描きになる!」という夢を持ち続けていた三木さん。高校を卒業後、金沢国際デザイン研究所で2年間留学の準備をし、ニューヨークのパーソンズ美術大学に合格。グラフィックデザインとイラストレーションを学んで卒業した後、ニューヨークのデザイン会社でテキスタイルデザイナーとして5年間のキャリアを積んだ。

「学生時代から8年間暮らしたニューヨークには、アートも刺激も飲み歩くお店もいっぱいあって、華やかで楽しくて、すごく自分に合っていると感じていました。仕事も生活も恋人も、当時の私のすべてがニューヨークに根付いていたんです。

 でもその一方で、友人たちにはいつも越前の話をしていたし、『30歳までに私は越前に戻るでの』と越前なまりで宣言して。ニューヨークの先に、いつも越前市を見ていました」

 28歳のとき、ワーキングビザの手続きでトラブルが発生し、急遽帰国。
 「ニューヨークに戻れないと決まったときは本当に辛くて、泣いて、泣いて。でも、勤務先のボスが『トラブルの責任は自分にもある』と、越前市に戻ってから2年間、フルタイムで仕事をさせてくれたんです。日本時間の夜10時から朝8時までSkypeを繋ぎっぱなしにして、それまでと同じように会話をしたり、オンラインで作品を送ったり。インターネットさえあればどこにいても世界とつながって仕事ができるんだと、あらためて実感しました」

 ニューヨーク在住の恋人ともSkypeを通じての遠距離恋愛を続行。帰国してから2年後に将来のことを話し合った結果、恋人が越前市に移住し、婿入りすることに。子どもも生まれ、現在は三木さんが生まれ育った家で家族3人で暮らし、三木さんは自宅の一室を仕事部屋にし、フリーランスのデザイナーとして活動している。

超贅沢!体育館つきの児童センター

「仕事のレベルは世界基準、心の環境は越前市、楽しむことを忘れたくない」と話す三木さんは、いきいきと今を楽しんでいることが伝わってくる働き女子。

 越前市内には、公立・私立を合わせて24の保育園・認定こども園があり、すべての園で延長保育を行なっている。幼稚園は公立・私立合わせて9園。公立は3歳児から入園可能で、私立では2歳児から受け入れている。待機児童はもちろんゼロ。さらに、市内27カ所の保育園や児童館・児童センターなどでは児童クラブ(学童保育)が実施され、働くお母さんをサポートしている。
 今年小学校に入学した三木さんの息子(6歳)も、学校が終わった後は毎日児童クラブに直行。手洗い・うがいをしておやつをもらい、宿題を済ませた子は自由に遊べる。遊び場となるのは、児童クラブに付属する図書室や体育館。

「越前の児童クラブはどこも広い体育館がついていて、うちの子が通っている児童クラブにもバドミントンコート2〜3面分ほどの広さがある体育館があるんです。そこで毎日思いっきり遊ぶのが、息子は楽しくてたまらないみたい。車などの危険も心配しなくていいし、雨の日でも竹馬や一輪車やドッジボールなんかもできるので、安心して預けられます」

 ソフト面の子育てサポートも充実している。例えば、通学時の「旗当番」。地域の人が交代で通学路に立ち、子どもたちを見守る仕組みが今も自然に続いている。また、近所の人どうしがお互いの子を把握していて、外で遊んでいても危険がないようさりげなく注意を払っている。
「子供会やお祭りの当番がしょっちゅう回ってきますから面倒なこともありますけど(笑)、でもそれ以上に助かることがたくさんあります。例えば、どうしても仕事で出かけなければいけないときに、ご近所に子どものお迎えを頼んだり、近所の家で遊ばせてもらっている間に掃除を片付けられたり。ここらには田んぼも川も公園もあって、子どもたちをタダで遊ばせられますから、私が近所の子どもたちみんなを引き連れて行くこともあります。近所の子が『今日はお母さんの帰りが遅い』なんて言えば、『じゃあ、うちでご飯を食べて待ってる?』と誘うのも当たり前。家庭という枠を越えて、街全体で子育てしている感じですね」

「越前のいいとこ見してあげるで、おいで」

三木さんがデザインを手がけた作品。ベビー服も編みぐるみもかわいい!仕事に打ち込めるのも、街ぐるみで子育てサポートがあるからこそ。

 三木さん夫婦がニューヨーク時代から続けている共通の趣味がサルサダンス。結婚した頃には越前市には自分たちに合ったサルサ教室やサークルはなかった。
 「踊れる場所がないなら、作ればいい!」と考えた2人はサルササークルを作り、毎週火曜日に練習を行い、パフォーマンスを披露したことも。

 「サルササークルは私たち夫婦にとっては子どものように大切な存在だし、火曜日の夜は貴重な夫婦の時間。子どもが生まれてからもずっと、火曜日は私の実家に子どもを預けて欠かさずサークルに行っています。メンバーがみんなうちに集まって、飲んで盛り上がったりすることもあるんですよ。そのメンバーにも子供をとても可愛がってもらって、家族のようです。
 生まれてすぐのときから毎週実家でお泊まりしているので、息子も私の母にすごくよくなついていて、まるで母親が2人いるみたい。お泊まりに慣れたおかげでうちの子はどこの家でも物怖じせずにご飯も食べられるし、誰にでも寝かしつけてもらえます(笑)」

 仕事に、子育てに、趣味。どれも自分らしく楽しみながら、のびのびと越前暮らしを楽しんでいる三木さん。その暮らしぶりに興味を持ってくれて、県外はもちろん、ニューヨークから遊びにくる友人たちも多いそう。

 「みんな、田んぼや川で遊んで、夏なら蛍を見て、伝統工芸に触れて『ミキアイが言ってた通り、ほんとにいいとこだね!』と感動してくれるんです。都市部からは遠いのに、毎年のようにきてくれる友達もいます。ニューヨークは今でも恋しいし、もっと東京にも行きたいと思うときもあるけれど、今の暮らしは最高に幸せ。仕事では世界に通用するクオリティを保ちつつも『越前に住んでやっぱりよかった』とずっと言い続けていくことが、今の私の目標なんです」