withコロナ時代、
私たちのこれからの働き方

第一線で活躍する女性や、働く女性を応援する企業が、「働く」「学ぶ」「遊ぶ」「美」「健康」に役立つメッセージを発信する「WOMAN EXPO TOKYO 2020 Winter(日本経済新聞社、日経BP主催)」が2020年11月28日にオンラインで開催されました。プレミアムセミナー「withコロナ時代、私たちのこれからの働き方」ではアドビ マーケティング本部バイスプレジデントの秋田夏実氏が登壇し、これまでのキャリアを振り返りながらwithコロナ時代を生き抜くためのリーダー術などを語りました。

これまでのキャリアを振り返って

今、20代の頃に思い描いていたキャリアの通りになっていますか。

どちらかと言えばマルです。20代の頃に今この業界でこういう仕事をしているとまでは全く予想しておりませんでしたが、コアの部分で自分が目指していたことが3つあって、それは大体実現できていると思います。ひとつ目は「自分が好きな製品やサービスに携わる仕事をしたい」、2つ目は「世界とつながることができる仕事がしたい」、そして3つ目は今の自分にとって最も重要な「社会に対してプラスの影響を与えられる仕事がしたい」という目標です。リモートワークが浸透しない、やっているけれども不便があるなど皆さん色々なお悩みがあるかと思いますが、それに対して様々なソリューションを提供・サポートしうる「アドビ」という企業の一員として、その普及に携われることは、世の中のためになっているのだと感じられます。

仕事でピンチの時はどのように乗り越えましたか。

私は物事を割と楽観的に捉える性格なので過ぎたことは忘れてしまうのですが、例えば何千人ものお客様を招待する大きな自社イベントに海外から招いたメインスピーカーが突然来られなくなるなど、ピンチは色々とありました。そういう時こそ慌てず感情的にならないよう常に心がけることが大事だと思います。特に女性は感情的だと言われがちだからこそ、より一層意識して感情的にならないようにする。何かあった時は一回深呼吸をして「大丈夫。これまでもなんとかなってきた」と言い聞かせます。私は死ぬこと以外かすり傷だと思うようにしています。そう思えば何も怖くない。ピンチの時こそ肩の力を抜いて冷静に、みんなでアクションを考えてやっていこうという前向きな姿勢を見せることでチームも安心しますよね。そんなに大変な状況ではないのだと思わせるのは大事だと思うし、その上で論理的に考えて速やかにアクションを決めて行動すればスムーズに解決します。自分が慌てない、テンパっていないというのがすごく大事。気がついた時にはピンチは終わっていると思いますよ。

また、子育てにおいても不測の事態はよく起こります。そういう時もとにかく冷静になろうと心がけています。以前、早朝のウェブ会議で、海外に向けて重要なプレゼンをしなければならない日があり、そんな日に限って、子供がおねしょをしてしまったことがありました。私は大急ぎで子供を着替えさせ、再度ベッドで寝かしつけてから、ウェブ会議の映像を切った状態でお風呂場で洗濯をしながらプレゼンしたのです。自分の置かれた状況を俯瞰して見てみると、このシチュエーションは漫画の一コマにしたらすごく笑えるよね、と思いました。何事もないように英語でプレゼンしているけれど、実は子供のおねしょで濡れてしまった洗濯物を洗っているという(笑)。大ピンチでも笑って受け止められる、受け流せるよう努力をするのが大事だと思います。

コロナ禍での仕事術について

コロナ禍で働き方は変わりましたか。

変わった部分と変わっていない部分とがあります。アドビではコロナ禍の前から個人や家庭の事情で海外に行かざるを得ないというケースがあった場合は、海外から日本の仕事をすることを認めてきました。やりたい仕事を続けられる環境を提供するのは会社としての義務だと思います。アドビには以前から多様な働き方を受け入れるカルチャーがあり、それはコロナ前から変わりません。一方でコロナ禍により、様々な制度が新たに導入されました。例えば、3週間に1回、金曜日がオフィシャルな休日になるという制度は大変好評です。他にも、専用のファンドを用意してリモートワーク中の社員が快適に働けるよう、金銭的な面からもサポートをするなど、色々な取り組みを行っています。

なぜそのようなサポートができるのか。それはアドビのCEOであるシャンタヌ・ナラヤンが各国の現場で何が起こっているのかを真剣に聞き、深く正しく知ろうとしているからです。彼からよく「今現場はどうなっている?困っていることはない?」というカジュアルなチャットや依頼が来るので情報共有をすると、速やかにそれに対するアクションを取りPDCAを回してくれるのです。日本の経営者の方にも社員が本当に何に困っているのかを本気で知って欲しいと思いますし、もっと気軽にコミュニケーションが取れる方法があるといいですよね。日本の会社でそこまでやるのは難しいかもしれませんが、現場の声をもっと聞きたいと思っている経営者は多いと思います。

在宅勤務でのオンとオフの切り替えには、どんな工夫をされていますか。

スケジュールをきちんと立ててメリハリを持って仕事をすることは、本当に大切だと思います。アドビの場合は本社がアメリカで時差があるのでオンとオフの切り替えが難しい場合もあって、家族と過ごすオフの時間も10%くらいは頭のどこかに仕事のことがあるかもしれません。朝の日課のランニング中にふっと仕事のいいアイデアが浮かんだら、忘れないようにスマホの音声入力で残しておくこともあります。でもメリハリは常に心がけるようにしています。

オンラインでの仕事が増える中で、リーダーとして気をつけていることはありますか。

コロナ禍になってからしばらく提唱してきたことで手応えを感じているものが3つあります。コミュニケーション、エデュケーション、アプリシエーションです。コミュニケーションについては、一方的ではない双方向のコミュニケーションをより意識的に取っていく必要があると思います。エデュケーションについては、今年の5 、6月に自社の製品をもっと深く知ろうという社員向けのオンラインセミナーを、毎週複数回に渡って開催しました。すると、その製品に直接携わっていない社員もこぞって参加して、尚且つ5段階中4.9という高い満足度が得られました。会社の一体感が生まれるのはもちろんですが、自社の製品やサービスを好きになって初めて会社に対する本当の意味でのエンゲージメントが育まれると思います。エンゲージメントが育まれると会社の業績や色々なことが他人事ではなく自分事になるので、コミットメントのレベルも全く変わってきます。また、社員には、自社製品を学ぶ機会を用意するだけでなく、専門領域のスキルを磨ける機会などもどんどん提供し、エンプロイアビリティ(雇用され得る力)を高めるべきだと思います。最後のアプリシエーションは感謝ですね。顔を突き合わせて同じオフィスで働ける環境でなくなっているからこそ、サポートしてくれている仲間に感謝をして、みんなでありがとうと言い合うカルチャーを意識的に作る。距離は離れていても私たちはひとつの大きなチームであるという気持ちを育むようにしています。

今後の目標について

今後の目標やかなえたい、実現したい夢を教えてください。

日本の活力を支えるためにも、もっと多様な働き方が受け入れられ、広がっていく社会を作ることが重要だと考えています。手前味噌ですが、今私がアドビで何の苦もなくリモートワークができているのは、それを支えるツールやソリューションがあって、当然のようにそれらを使うというカルチャーが出来上がっているからだと思うのです。その部分で悩みを抱えていらっしゃる企業は、本当に今こそが変わるチャンスです。簡単にはリモートワークを導入できない業種もあるので、全てに当てはまるわけではありませんが、これを機に新しい働き方をもっと考えていくべきだと思います。ですので、短期的な目標としては、社会のトランスフォーメーションがもっと加速されるように何らかの形で貢献できたらと思います。長期的な視点では、子供たちの未来をもっと明るいものにしたいですね。世界における日本のプレゼンスがどんどん下がっている中で、未来の日本は、もっと活力があって元気な国であってほしい。そのためにも子供たちのクリエイティビティや想像力を支えたいです。クリエイティビティこそが未来の日本の国力に繋がると思うからです。

質疑応答

視聴者から様々な質問が寄せられました。その一部を紹介します。

オンラインで初対面の方と
話す時に気をつけていることは
ありますか。

アイスブレイクが有効だと思います。最初に空気を和らげるための会話はとても大事です。初対面でいきなり本題に入るのはなかなか難しいし、会議が滑らかに進みにくいですよね。例えば相手の方が使われている背景の画像があればそれに対して「素敵な写真ですね」「ご自分で撮られたのですか」など何かコメントしてみる。背景がご自宅の場合、本棚が映っていたとしたら「たくさん本を読まれるんですね。最近はどんな本を読まれましたか」など。絵が飾られていたら「素敵な絵ですね」という会話もあるでしょうし、相手の方のお名前が珍しかったらそれに触れてみるとか色々な膨らませ方があると思います。そういった会話のバリエーションをいくつか持っておくと、初対面でどう話そうかなってドギマギしないでいられるのではないかと思います。

失敗が怖くて前に進めない、
チャレンジできない人に
アドバイスをお願いします。

何かをやったことによる後悔よりも、やらなかった後悔の方が後になってみると絶対に大きいと思います。どうやってもうまくいかない時は誰にでもあるので、大事なのはその失敗から何を学んでどうやったら次に活かせるか、と腹を括ることです。私が30代の頃、色々悩んでいた時に医者をやっている友人に相談をすると「それを失敗したら誰かが死んでしまうの?生きているのだからいくらでも取り返すことができるでしょう」と言われたことがあって。私の失敗が人の命に関わることはないし、だったら大したことじゃないんだと思えるようになって肩の力が抜けたかなと思います。それが先ほどもお話した「死ぬこと以外はかすり傷」につながっています。

秋田夏実

アドビ株式会社 マーケティング本部 バイスプレジデント
秋田夏実さん

東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。シティバンク銀行デジタルソリューション部長、マスターカード日本地区副社長などの要職を歴任し、2017年4月アドビシステムズ株式会社(現:アドビ株式会社)に入社。2018年より現職。3人の子供を育てる母でもある。