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これぞ我が社の生きる道

第13回 株式会社シンフィールド 代表取締役 谷口晋也氏

第13回 株式会社シンフィールド 代表取締役 谷口晋也氏

経済構造が大きく変化し、しのぎを削るライバル企業であっても協業の道を探り、ともに生き残りの道を切り開いていくことが珍しくなくなってきています。

「フレネミー(友人と敵を組み合わせた造語)」という言葉も登場するなど、生き残りをかけた危機感は、大企業をはじめ企業の規模を問わず強まるばかり。そんななか、独自性をもって活路を見いだした企業も数多く存在します。

このコラムでは、人手不足や少子高齢化などという経営の逆風を吹き飛ばし、我が道を力強く突き進む企業の姿を追いかけていきます。

「マンガ×Webマーケティング」という仮説が原点

 マンガをはじめとする日本のポップカルチャーは、日本国内のみならず海外においても、若い世代を中心に人気を集めている。インバウンド需要の増加など単純に経済効果として売り上げが伸びているだけではなく、日本文化への理解を深めるための大きな助けにもなっている。

 海外への訴求力も抜群なマンガを、デジタルを軸にマーケティングツールとして活用し、「マンガマーケティング®」という新たな分野を立ち上げて躍進するのが、谷口晋也氏率いる株式会社シンフィールドだ。

 同社の創業は2006年。社長の谷口氏がインターネット広告などを手がける広告会社でキャリアを積んでいた際に、バナー広告にマンガを使っていたクライアントのクリック率が高いことに着目。

 従来から複雑な商品やサービスを説明する際にもマンガが用いられてきたことや、つい手に取って読み進めてしまうマンガの特性なども勘案し、「マンガ×Webマーケティング」が成立するのではないかと仮説を立て、マンガマーケティング®事業をスタートさせた。

「時短コンテンツ」としての特長生かし、新たな分野へ

 マンガは手にとってもらいやすいという利点がある一方で、娯楽要素が強いという潜在的なイメージも浸透している。そのため、マンガマーケティング®で企業のプロモーションを支援することは難しいといった声も聞かれ、創業からしばらくは泣かず飛ばずの日々が続いた。

 思うように収益が得られない中でも、谷口氏は不安にかられたことは一度もなかったという。「マーケティングは人の心を動かし、態度や行動を変えるもの。マンガはわかりやすくて目につきやすく、ストーリー性もあるので人々の共感も得られやすい。今後、情報があふれる時代になればマーケティングツールとして必ず必要とされるはず。マンガをマーケティングに生かすことに迷いはなかった」と当時を振り返る。

 潮目が変わったのは2010年。大手飲料メーカーが手がける健康食品に同社のマンガマーケティング®が取り入れられてからだ。ここで実績を作ったことが大きく影響し、一気に受注は増えた。同社のホームページには今、制作実績として一流企業が名を連ねる。

 同社の成功を受け、追随する企業も出てきているが、谷口氏の表情からは焦りの色は微塵も見られない。「当社は顧客の投資利益率(ROI)の向上を事業ミッションに掲げている。マンガを集客ツールとして利用するたけでなく、それが企業にどれくらいの効果をもたらしたのか、蓄積してきた過去データを基に分析を行えるのが強み」と胸を張る。

 現在は「ユーチューバー」など動画広告が勢いを増しているが、マンガマーケティング®は今後も優秀な「時短コンテンツ」として需要は増えると谷口氏は自信を見せる。全部見ないと内容が伝わらない動画広告は視聴者側に時間投資を強いることになるが、文字とイラストが散りばめられたマンガ広告は情報量が多く、視覚効果もあり、短時間でも自分のペースで読むことができるからだ。

 同社は今後、電子商取引(EC)、教育、出版など、これまで取り組んでこなかった新たな市場にもマンガマーケティング®を導入し、売り上げアップを図っていく意向だ。

マンガ家の期待背負い、生活できる仕組みづくりを後押し

 同社でマンガを担当する登録マンガ家は、連載を経験しているプロから趣味でマンガを描く素人まで幅広い。現在、約900人以上が登録しており、その中から顧客の好みや内容の趣向などに応じて登録マンガ家を提案している。広告制作の進行・管理はもちろんのこと、顧客から要望を吸い上げ、シナリオの制作も同社が行うため、依頼を受けた登録マンガ家はマンガを描くことだけに集中できる。

 少子高齢化の問題は、マンガ業界にも少しずつ影響を及ぼし始めている。マンガ家の数が減れば、日本のポップカルチャーの衰退にもつながりかねない。マンガ広告の仕事で収入を確保し、生活ができるようになれば、マンガ家を辞めてしまう人、マンガ家になるのをあきらめてしまう人の割合も減り、マンガ業界の発展にもつながる。「マンガ家の生活を支援することも当社の重要な責務」と、谷口氏はマンガ家を育てる環境づくりに余念がない。

 次世代を担うマンガ家の輩出にも力を入れる。マンガ学科のある専門学校に繰り出し、マンガ雑誌以外にもマンガを発表する場があることや対価が得られることなどを、谷口氏自ら説いて回っている。

 また有名なマンガ作品については「一定のファンがついているマンガ作品は企業がプロモーションで活用したがる魅力的なコンテンツ。広告利用によって作者や出版社にも新たな収益が生まれるケースも考えられる。海外へ日本企業が進出する際も、世界的に認知されているキャラクターやマンガを活用すれば大きなPR効果が見込める」と、マンガ広告が持つ無限の可能性に期待を寄せる。

 谷口氏の思いに共感するマンガ家も多く、同社のオフィスには著名なマンガ家から贈られた手描きの応援イラストが所せましと並べられている。

羨望のまなざし

谷口氏が羨望のまなざしを向けるのは、即時買い取りアプリ「CASH(キャッシュ)」の運営などを行う「株式会社バンク」の取り組み。お金がなくても「不要なモノ」で「新しいモノ」が買える新しい決済手段「モノ払い」を開発した企業だ。現代版の物々交換となりえるモノ払いは、旅行予約サイト「エアトリ」にも導入されている。「商品を購入する際、これまでは現金で買い物することが当たり前だったが、『モノ払い』はその既成概念を払拭した。物事全体を俯瞰して本質を見極めなければ思いつかないアイデア」と舌を巻く。「マンガ=娯楽」という既成概念を打ち破り、「マンガ=広告クリエイティブ」を目指す谷口氏にとって、同社は一目置く存在でもあり、触発される存在でもある。

会社概要

社名:株式会社シンフィールド

設立:2006年3月24日

所在地:東京都渋谷区幡ヶ谷1-1-1 幡ヶ谷プラザビル2F

URL:https://shinfield.jp/