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これぞ我が社の生きる道

第9回 ホーチキ株式会社 取締役 天野 潔氏

第9回 ホーチキ株式会社 取締役 天野 潔氏

経済構造が大きく変化し、しのぎを削るライバル企業であっても協業の道を探り、ともに生き残りの道を切り開いていくことが珍しくなくなってきています。

「フレネミー(友人と敵を組み合わせた造語)」という言葉も登場するなど、生き残りをかけた危機感は、大企業をはじめ企業の規模を問わず強まるばかり。そんななか、独自性をもって活路を見いだした企業も数多く存在します。

このコラムでは、人手不足や少子高齢化などという経営の逆風を吹き飛ばし、我が道を力強く突き進む企業の姿を追いかけていきます。

いち早い海外展開と時代の潮流をよむ事業展開で優勢保つ

 災害大国日本は、地震など自然災害による被害が目立つ「災害の時代」だったともいえる「平成」が終わり、新しい時代となる「令和」を迎えた。あらゆる災害への備えに対し、万全な対策に向けた試行錯誤が続いていくが、火災防災において「大正」から「昭和」の時代を経て、変わらずに役目を果たしている設備の1つが火災報知機だ。
 その「火災報知機」を製品の主力とし、火災用受信機大規模市場でトップを走り続ける「ホーチキ」は、日本の火災防災業界の中心的存在である1社。創業は1918年で、国内初の火災報知機メーカーとして主に損害保険会社の出資により設立された 「東京報知機株式会社」が前身。日本橋に我が国で初めての公衆用(MM式)火災報知機を設置した会社として知られる。

 火災報知機メーカーのリーディングカンパニーとして長年、歩み続けてこられた理由を問うと、取締役の天野潔氏は3つの理由を挙げる。

 「早い段階から海外展開を行い、力のある販売代理店と海外の販路を構築してきたこと。火災を予測する火災性状判断ソフトを組み込んだプリアラーム(※1)機能などが付いた火災報知機を開発したこと。火災安全から人命保護領域に市場を広げたこと。すべての要素がグループの強みを生かした事業展開の加速につながっている」。プリアラーム機能付きの火災報知機は、何より時代の潮流を読み、基礎研究で得られたデータの蓄積やセンシング技術(※2)を磨き続け、高層ビルの建設に合わせ提案できたことが大きかったという。

 国内はもとより海外でも高い評価を得て、今では東南アジアをはじめ世界129カ国で事業を展開する。「日系企業ならではの確かな品質と、最後まで面倒を見る日本式のテクニカルサポートが好評で、需要は増え続けている」(天野氏)。

 将来的に国内の建設市場は少子高齢化などで先細りが懸念される。独自の安全・安心を打ち出したプラットフォームの構築を進め、海外を中心とした新市場開拓・市場深堀りを通じて乗り越えていく構えだ。

他社とのタッグで新市場を開拓 ストック事業にも注力

 同社が開発・生産・販売するのは火災報知機だけではない。防災事業の分野では大規模放水銃を用いた消火設備の開発なども手がけている。1988年にオープンした東京ドームにも、この放水銃システムが設置されている。コンプレッサーを活用した噴霧化状の強力(長距離)放水銃は、最大87メートル先まで放水が可能だ。

 東京ドーム以外にも、国内外の大型空間建築物で設置されている同社の放水銃システム。実は東京ドームの建設が決定した際に、設計・施工を担当していた会社から「この施設に合う消火システムを提案してほしい」ということで依頼を受け、検討も含め約5年の歳月をかけてつくり上げた製品だ。

 「放水銃システムの開発は、火災性状や消火能力の実験・研究開発を積み重ねてきた当社の実績を生かす、新しいものづくりの形」(天野氏)とのこと。今後も時代の要請に合わせ、各国の消防規格に対応する市場のニーズに応じた製品の開発・生産・販売を行っていくという。  

 さらに近年は防犯事業にも力を入れ始めている。入退室管理システムや鍵管理システム、電気錠制御システムの領域で、カメラ事業に強みを持つ大手企業などとタッグを組む。ネットワークカメラと連動させる仕組みを新たに構築するなど、他社との協働による製品開発にも積極的に取り組んでいる。

 東京オリンピック・パラリンピックを間近に控え、首都圏を中心にホテルなどの大型物件の建設が続くなか、同社の事業環境は追い風にあるともいえる。「日本市場の成長が鈍化するのは目に見えている。防災設備の定期点検や建物のライフサイクルに応じたリニューアルなどストック事業に力を入れ、主力の火災報知機以外の分野でも事業を加速していくことが重要」と、中長期的な観点から将来を見据える。

 使われないことを願いながら、火災防災に関する製品を作り続ける同社は2018年4月、創立100周年を迎えた。「安全・安心のグローバルブランド確立」に向け、強みのエンジニアリング力にさらに磨きをかけるため、今後は人材育成の取り組みも強化していくという。安全・安心の提供を通じて、社会の期待に応え続ける同社の取り組みが、現代社会のあらゆるシーンで私たちを守っている。

※1:受信機が火災作動に至る前の段階の予備火災警報
※2:センサー(感知器)などを使用してさまざまな情報を計測・数値化する技術の総称
※参考:日本火災報知機工業会、東京消防庁のウェブサイトなど

羨望のまなざし

天野氏が羨望のまなざしを向けるのは、富士フィルムの取り組み。デジタルカメラの台頭で主力事業だったカラーフィルム事業が変革を余儀なくされるなか、攻めの姿勢を崩さずに、フィルムから派生した技術を事業化につなげている。
新発想の医療機器や化粧品の開発に挑む姿に、火災報知機以外での展開を目指す自社の将来像を重ねてしまうそうだ。業種を問わず、既存事業のみでは生き残るのが難しくなっている。それだけに自社の強みを捉えた上での新規事業開発の重要性は、ますます高まっている。

会社概要

社名:ホーチキ株式会社

設立:1918年4月

所在地:東京都品川区上大崎2-10-43

URL:https://www.hochiki.co.jp/

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