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これぞ我が社の生きる道

第5回 株式会社ファイバーゲート 代表取締役社長 猪又將哲氏

第5回 株式会社ファイバーゲート 代表取締役社長 猪又將哲氏

経済構造が大きく変化し、しのぎを削るライバル企業であっても協業の道を探り、ともに生き残りの道を切り開いていくことが珍しくなくなってきています。

「フレネミー(友人と敵を組み合わせた造語)」という言葉も登場するなど、生き残りをかけた危機感は、大企業をはじめ企業の規模を問わず強まるばかり。そんななか、独自性をもって活路を見いだした企業も数多く存在します。

このコラムでは、人手不足や少子高齢化などという経営の逆風を吹き飛ばし、我が道を力強く突き進む企業の姿を追いかけていきます。

競合他社と異なるニッチ市場で高いシェアを狙う

 政府の訪日観光客誘致によるインバウンド需要の高まりや東京五輪開催の影響もあり、ケーブルがなくてもインターネットに接続できる公衆無線LAN「Wi―Fi(ワイファイ)」の整備が全国各地で行われている。
 ワイファイプラットフォームの提供・拡大を進める企業の中でも、北の大地を拠点に気を吐いているのが、ファイバーゲートだ。ワイファイの環境整備を軸に、通信機器の開発製造、設置工事、サーバー管理などを一貫して手がけ、今年3月には東証マザーズに新規上場も果たした。

 同社を15年以上にわたり率いているのが、代表取締役社長で創業者の猪又將哲氏。大学を卒業後、損保会社を経て通信業界に転身し、大手通信キャリアの代理店として、各種通信サービスの加入取次を主要事業とするファイバーゲートを2000年に設立した。
 通信キャリアと仕事をしていくなかで、猪又氏はアパートのような小規模物件では、ブロードバンドサービスに必要な光ケーブル敷設工事が、ほとんど行われていないことに気づく。
 理由は明白だった。敷設工事には光ファイバー固有の高度な施工技術が必要なため通信キャリア側にも多額の費用負担が生じる。光ファイバーを大規模マンションのような戸数が多い集合体に敷設した場合、多数の契約が獲得できるため、敷設工事で生じた費用も簡単に回収できる。しかし小規模物件では契約者が少ないため、利益率が低く敬遠されてきた。
 「国内の賃貸物件の3分の2以上は20戸以下の小規模物件。アパートなどは物件自体の戸数は少なくても棟数で見れば相当な数になる。ニーズがあるのに、やらない手はなかった」(猪又氏)と、ニッチ市場に焦点を当て、新規事業に取り組んだ背景を打ち明ける。

成長をけん引する通信機器の独自開発・自社製造

 同社は2004年2月、集合住宅向けインターネット無料サービス事業を地元の札幌でスタートさせると、確固たる手ごたえを感じたという。05年1月にはさらなるシェア拡大を見込み、東京都港区に東京オフィスを開設。同年11月からは首都圏のアパートや中小型マンションなど集合住宅を対象に、無線LANを利用した集合住宅向けインターネット無料サービスを展開した。06年6月からは、同社で独自開発した部屋内壁面埋め込み型のワイファイアクセスポイントを利用した、インターネット無料サービス「レジデンスWi-Fi事業」をスタートさせた。
 部屋内壁面埋め込み型のワイファイアクセスポイントを利用した場合、LANケーブルや無線LAN用通信機器の設置が不必要なため、入居者はLANケーブルのないすっきりした環境でインターネットが使え、オーナーは低コストの設備投資で入居者無料のインターネット設備とワイファイ環境を整えることができる。
 独自開発している通信機器は低価格を実現するため、利便性に注力したシンプルなつくりで、人件費の安い台湾で設計や製造管理などを行っている。顧客ニーズを製品に素早く反映させ、付加価値を提供できることから、プライベートブランド(PB)化を支援するOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーとしての存在感も増している。
 今やレジデンスWi-Fi事業は売り上げの7割を占め、累積契約戸数は15万戸超え、全国シェアも日本トップラスに達する事業へと成長した。
 09年6月からは観光地(自治体)、商業施設、飲食店、交通機関(船舶、バスなど)向けに、ワイファイ端末やキャリアを問わずに、利用者が無料でワイファイに接続できる環境を提供する多言語化対応の「フリーWi-Fi事業」にも着手した。17年6月時点でフリーワイファイのアクセスポイントが3万カ所を超えるなど、こちらも急成長を遂げている。  

「1番手」めざし、ニッチ市場の探索に余念なく

 同社の強みはこれだけではない。ワイファイ環境整備を軸に、通信機器の開発製造を自前で行うだけでなく、設置工事やサーバー管理に至るまで一気通貫で提供する。独自の高水準の認証技術も大きな強みとなり、厳格な認証システムを供給できる数少ないワイファイ事業者の1つとして存在意義を高めている。
 さらに、この認証システムを利用したコンテンツサービス(UI・UX設計、集客・分析・EC・広告の各サービス)にも目を向け、効率的なマーケティングビジネスの収益化に対する取り組みも開始した。
 「ワイファイ設置の余地はまだ十分にあり、市場は今後さらに大きくなっていく。世界的にも極めて高水準にある日本の認証技術を、東南アジア諸国連合(ASEAN)でどう展開できるかを模索中」と、猪又氏は競合他社とは異なるニッチ市場の探索に余念がない。 “ニッチマーケットで1番手になること”に生き残りの道を見いだし、こだわり続ける。  

羨望のまなざし

猪又氏が度肝を抜かれたというのが、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がサウジアラビアのサルマン国王と会談し、多額の投資の約束を取り付けたという、その行動力。「孫氏は正式な外交ルートを介さずに、独自のルートを駆使して政治のトップに会い、戦略環境を整備する。行動力と人脈は同じ通信業界に身を置くものとして身の引き締まる思い」と、スピード感を持って人材育成と事業に取り組む必要性を今、改めて実感しているそうだ。

会社概要

社名:株式会社ファイバーゲート

設立:2000年9月

所在地:札幌市中央区南一条八丁目10-3 第28桂和ビル4階

URL:https://www.fibergate.co.jp/