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これぞ我が社の生きる道

第4回 株式会社チカク 代表取締役社長 梶原健司氏

第4回 株式会社チカク 代表取締役社長 梶原健司氏

経済構造が大きく変化し、しのぎを削るライバル企業であっても協業の道を探り、ともに生き残りの道を切り開いていくことが珍しくなくなってきています。

「フレネミー(友人と敵を組み合わせた造語)」という言葉も登場するなど、生き残りをかけた危機感は、大企業をはじめ企業の規模を問わず強まるばかり。そんななか、独自性をもって活路を見いだした企業も数多く存在します。

このコラムでは、人手不足や少子高齢化などという経営の逆風を吹き飛ばし、我が道を力強く突き進む企業の姿を追いかけていきます。

誕生のきっかけは孫を身近に感じさせてあげたいとの思い

 年末年始や夏休みなどの休みを利用して、親に孫の顔を見せたいと思っても、帰省先が遠過ぎたり、交通機関の帰省ラッシュなどを考えて二の足を踏んでしまい、なかなか子どもを親に会わせてあげられないという悩みを抱えている人たちもいる。

 そんな悩みを、スマートフォン(スマホ)で撮った子どもの動画や写真を実家のテレビに直接送る「まごチャンネル」というサービスで解決に導こうしているのが、チカクの創業者で社長の梶原健司氏だ。
 兵庫県の淡路島出身の梶原氏は大学入学を期に上京し、1999年に新卒で米アップルの日本法人に入社。それ以来、10年以上にわたってビジネスプランニングやセールスマーケティング、新規事業開発など、さまざまな仕事に携わる機会に恵まれた。
 しかし東日本大震災や、尊敬するスティーブ・ジョブズ氏が亡くなったことをきっかけに、人生について深く考えるようになり、退社を決意。次に何をするかは特に決めずに退社したため、友人の会社を3年近く手伝いながら、自分自身がやりたいことを模索し続けた。
 その間、時代を先取りする製品を、次々と世に送り出しているアップルの元社員というプライドが邪魔をし、「起業するならクールでイノベーティブなものを作らないと格好悪い。友人や知人にがっかりされそう」。梶原氏はそう考え続けていた。一方で実家が遠いことから、親に孫のことを少しでも近くに感じてほしいと、アップル在職時からパソコンのMacを実家の大画面テレビにつなぎ、オンラインストレージのDropbox経由で子どもの動画を親と共有することを続けていた。
 親に孫の成長を見てもらうためにも、自分たちの親世代でも楽に操作ができ、まるでそこに孫がいるかのような体験をさせてあげたい――。周囲の自分への期待が勝手な思い込みであるという当たり前のことに気付き、実現すべきことが整理されてからは、開発に没頭する日々。そして2014年、「シニアファースト」を掲げ、離れて暮らす実家のテレビに孫専用のチャンネルを作るために起業する。

徹底した簡単な操作から始まるデジタル時代の2世帯住宅

 まごチャンネルの仕組みは実にシンプル。写真や動画を送りたい側は、スマホにまごチャンネル専用のアプリをダウンロードし、スマホで撮影した写真や動画をアップする。一方、写真や動画を閲覧したい側は、ホワイトの優しい色合いが特徴的な家を模したまごチャンネルの端末をテレビの脇に設置し、HDMIケーブルでテレビと端末をつないで端末の電源コードを差すだけ。
 端末の中にはスマホと同じようにSIMカードが内蔵され、端末の電源を入れると面倒なセットアップなしに自動的にインターネットに接続され、アップされた写真や動画を見ることができる。写真なら5万枚、1分間の動画であれば約2000本の保存が可能だ。

 端末の操作は普段使っているテレビのリモコンを使う。「パソコンはないという家でも、大概の家にはテレビならある。使い慣れているテレビのリモコンを使って操作できるようにしたのは、ITリテラシーが低くても苦手意識なく使えるようにしたかったから」(梶原氏)と、徹底的に操作の簡単さにこだわった。
 端末の価格は2万円程度で、通信料は月額1250円(1年分前払いの割引適用の場合)。子どもから両親へプレゼントするケースが多いという。
 2016年6月から一般での販売を始めたが、ほどなくして大手証券会社から顧客との関係を見直すツールとして、まごチャンネルを使いたいと声がかかった。今では有名デパートやアマゾン・ジャパンの通販サイトなどでも買うことができる。「まごチャンネル」を使うユーザーからは、ポジティブなメッセージやお礼状が連日のように届き、なんとユーザーの最高年齢は100歳というから驚きだ。
 核家族化が進み、高齢者世帯は国内で1300万世帯に上るともいわれている。「世代間を自然な形でつなぐ道具としてITを使い、写真や動画を一方的に送るのではなく、双方向のコミュニケーションがとれるようにしたい。目指すのは“デジタル時代の2世帯住宅”」と、まごチャンネルに続く商品開発に意欲を見せる梶原氏。家族や大切な人が「時間」も「距離」も「世代」も越えて「チカク」なる同社の取り組みに今後も目が離せない。

羨望のまなざし

梶原氏が最近とても感銘を受けたビジネスが、出向制度を人材育成に活用するプラットフォーム「ローンディール」だ。スキルやノウハウを持つ大手・中堅企業の人材をベンチャー企業に出向させ、人材強化を図る。一方、大手・中堅企業ではなかなか味わうことができない、ベンチャーならではの事業立ち上げの実践的な経験をすることで、次世代リーダーを育成する仕組み。同社でも実際に活用して人材強化を図っているという。単純なシリコンバレーに右ならえの姿勢ではなく、日本の文化や実情に合った課題解決の手法であり、業種は違えども「人と人とをつなぐ」取り組みをしている部分に不思議な共通点を感じるそうだ。

会社概要

社名:株式会社チカク

設立:2014年3月12日

所在地:東京都渋谷区東3-24-8 マーサ恵比寿401

URL:https://www.chikaku.co.jp/