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これぞ我が社の生きる道

第3回 株式会社アグリゲート 代表取締役 CEO 左今克憲氏

第3回 株式会社アグリゲート 代表取締役 CEO 左今克憲氏

経済構造が大きく変化し、しのぎを削るライバル企業であっても協業の道を探り、ともに生き残りの道を切り開いていくことが珍しくなくなってきています。

「フレネミー(友人と敵を組み合わせた造語)」という言葉も登場するなど、生き残りをかけた危機感は、大企業をはじめ企業の規模を問わず強まるばかり。そんななか、独自性をもって活路を見いだした企業も数多く存在します。

このコラムでは、人手不足や少子高齢化などという経営の逆風を吹き飛ばし、我が道を力強く突き進む企業の姿を追いかけていきます。

生産者にフィードバックして無駄を減らす

 近年、総合スーパー(GMS)などの台頭などで個人商店が少なくなり、野菜や果物を専門で売る「八百屋」の数も減少傾向にある。そんな状況で、旬にこだわり、「新鮮・おいしい・適正価格」を実現し、都市と地方をつなぐ八百屋の存在感が急激に増している。アグリゲートが都内で16店舗を構える「旬八青果店・旬八キッチン」が、その立役者だ。
 創業者の左今克憲氏はもともと、環境問題に興味を持ち、大学では農業を専攻し、休日はバイクで日本各地を巡る旅を続けていた。地方を訪れると、農地で若者の姿をほとんど見かけることはなかった。学生なりに農業が置かれている状況に危機感を覚え、それが同社を立ち上げるきっかけにもなった。
 農林水産省によると、農業の国内生産額は8兆円、さらに加工・流通、販売を経た農業・食料関連の国内最終消費額は80兆円近くにも上る。農業は自然が相手とはいえ、生産にかかったコストがわかりにくく、ほかの産業と比べて効率的に稼いでいるとは言い難い。「効率化を図れる側面はあるのに、従来どおりの道を歩み続けている印象が強い」。左今氏はそこに勝機を見いだした。

 2010年の創業当初は地方の農業法人の営業代行などを請け負っていた同社。徐々に取引先も増え、催事に出店しても売れるようになり、固定の場所で店舗を出店してみようと始めたのが、13年に東京・中目黒で開店した「旬八青果店」の1号店だ。
 一般の八百屋が小売りに特化した業態であるのに対し、旬八青果店の事業モデルはアパレル業界で導入が進むSPA(製造小売り)を参考に、生産から流通、販売までを一気通貫で行う。店頭に並ぶ常時50~60種類の野菜や果物は、物流コストやその時期の相場価格などを勘案。その日の最適なルートを見つけ、東京の市場、産直(地方卸売市場やJA、農業法人など)、自社農場の3つのチャネルを組み合わせて仕入れる。
 普通の小売店では取り扱っていないような珍しい野菜や規格外の青果も、新鮮であれば店頭に並べ、販売を担当するデリバーが客に商品の特徴(料理の仕方も含む)を丁寧に伝えることで購入につなげている。
 生産、流通、販売をつなげることで無駄を減らし、売り上げを伸ばす。客が求める品ぞろえを徹底することはもちろん、「客から得たニーズを生産者にフィードバックすることも重要。それが新たな商品を生み出すヒントにもなる」と、左今氏は試行錯誤を繰り返しながら築き上げてきたビジネスモデルに胸を張る。

一人勝ちではなく賛同してくれる仲間を増やす

 5年間で約20店舗の出店で培った知見を基に、試行錯誤を繰り返しながら築き上げてきたビジネスモデルは、「旬八大学」という名称で外部にも公開している。大々的な告知は行っていないというが、開講して3年、すでに300人以上が受講したというから驚きだ。
 「私たちが一人勝ちしても食農ビジネスは変わらない。優秀な人がどんどん参入して、業界が盛り上がるほうが大事」。自分たちのノウハウを公開し、その思いに賛同してくれる仲間を増やすほうが、より早く理想の食農ビジネスをつくり上げることができると左今氏は言う。
 同社では旬八青果店を運営していくうえで、どうしても発生してしまう余剰青果物の割合を減らすため、余剰青果物を無駄なく価値化した弁当と惣菜を売る店舗「旬八キッチン」も展開している。

 旬にこだわる八百屋が始めた無添加調理の野菜をたっぷり使った弁当やスムージーは、コンビニで売られている商品と価格帯がそれほど変わらない。口コミで人気に火が付き、企業のランチタイムに旬八キッチンの弁当を届けるサービスも開始した。
 さらに10月からは、全国各地から届いた新鮮な野菜や果物を、その場で調理して客に提供する「旬八キッチン&テーブル」もスタートするなど、高収益を上げるための製造事業にも力を入れている。

 同社は21年4月期までに、フランチャイズ展開を加速し、さまざま出店形態で「旬八青果店」を100店まで増やすことを目標に掲げ、営業利益10億円を目指す。フランチャイズ店のオーナーはスタッフの独立や旬八大学受講生も対象としている。生産現場に始まるアナログなオペレーションや情報をIT化し、サプライチェーンやPOS(販売時点情報管理)とも連携して効率化も図っていくという。
 将来的にはビジネスモデルをパッケージ化して、海外で展開することも視野に入れる。名実ともに食農ビジネスのプラットフォームになる日も近い。

羨望のまなざし

左今氏が最近、関心が尽きないという視線の先は、ZOZOの採寸できるボディースーツ「ゾゾスーツ」。個性的で独自性があり、特別感をつくり上げている点にあるという。同社もワン・トゥ・ワンマーケティングの要素を早期に導入し、購入履歴を活用した商品の入荷情報案内や料理レシピの提供などを軸に、顧客満足度の一層の向上に意気込む。「未来に“おいしい”をつなぐインフラの創造」の完成は、もうすぐそこまで来ている。

会社概要

社名:株式会社アグリゲート

設立:2010年1月

所在地:東京都品川区西五反田1-23-7五反田シティトラストビル2F

URL:http://agrigate.co.jp/