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2017年のこれから

2017年のこれから

2017年01月26日 更新

責任転嫁の時代、幕開けか

 2016年は英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が過半数を占めたり、米国大統領に当初は泡沫候補と考えられていたトランプ氏が当選したり「想定外」の出来事が海外で起こりました。この影響は2017年度に具体的に表面化するでしょう。ただ、どのような影響になるか、非常に読みにくい面があります。

 英国はEUから完全に離脱し、EUなど他の国や地域と自由貿易協定(FTA)を改めて結ぶ方針です。英国に進出する日本企業は大きな戦略転換を迫られそうです。FTAの交渉は離脱直後から開始しても、日欧EPAやTPPの交渉過程を考えると、簡単にまとまるとは思えません。今後10年程度は、英国を巡る通商ルールは定まらないと考えてよいでしょう。

 一方、米国ですが、トランプ大統領は「国内に雇用を取り戻す。保護こそ繁栄と強さにつながる」と米国第一主義を掲げています。米フォード・モーターなど米大手自動車会社などにとどまらず、トヨタ自動車のメキシコ工場建設に注文を付けています。米国内に工場を建設したり、生産能力を拡大したりすることを求めています。中国やメキシコ、日本からの一部輸入製品に高率関税をかけるとの意向も表明しています。すでにトヨタは、トランプ政権との摩擦を回避するために1兆円以上の投資を米国内で実施するとしています。

 トランプ氏を支持した白人労働者層やEU離脱を支持した英国の地方の保守層に受けた主張は、一言でいえば「うまくいかないのは、外国や移民のせい」。他者へ責任転嫁は、万国共通で受け入れられやすい主張です。イタリアでは国民投票の結果、経済改革がとん挫しました。フランスやドイツでも極右勢力が台頭しています。英米で起きたような流れは、加速する恐れもあります。

 国民自身が「ポピュリズム」に身をゆだねた場合、外国たたきや移民排斥の動きを為政者が制御しようとしても難しく、貿易戦争、通貨戦争への道を開くでしょう。貿易戦争も通貨戦争も、本当の戦争に至る一里塚です。「2017年は嫌な時代の幕開け」にならないことを祈るばかりです。

 ただフォードも国内で増やす雇用は1000人にも満たず、トヨタの1兆円表明も、そもそも米国で実施するつもりであった計画を言っただけかもしれません。TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱も現状と何も変わらないと考えれば、短期的にはマイナスな要素にならないとも考えられます。駐米大使経験者は「ある程度うまくトランプ政権と付き合うことは不可欠」と話しています。うまく立ち回れば、実質的な日本への影響は目先、大きくないでしょう。

 それよりも、金融や環境規制の緩和(本当に良いことかどうか、疑問も残りますが)、財政拡大によるインフラ投資から米国景気が過熱気味に良くなり、円安・株高を期待する向きも少なくありません。もう一度、円安差益による「棚ぼた的な利益拡大」が得られるのではないかと考えているからです。

 日本経済研究センターの最新の短期経済予測は、17年度は1%成長を実現でき、18年度も0.7%成長とみています。日本の潜在成長率(成長力)程度の成長が実現するとの予測です。当面は、完全雇用の水準が続く可能性が高いでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)

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