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転職市場を独自にウオッチ

2015年のこれから

2015年のこれから

2015年04月03日 更新

転職者にとって売り手市場に

 3月初めに公表された法人企業統計では、企業業績の好調ぶりが明確になりました。

 全産業(金融・保険を除く)の2014年10-12期の売上高経常利益率は2000年以降でみると過去最高の5.3%を記録しました。4-6月期、7-9月期と3%を切っていた資本金1000万円~1億円の中小企業の利益率も4%を超えました。円安・原油安の恩恵が大企業だけでなく中小にも波及してきたようです。

 15年1月の就業率は前年同月に比べて0.5ポイント上昇し、完全雇用の水準にあるといえます。16年3月の新卒は完全な売り手市場と言える状況です。15年度は転職者にとっても完全な売り手市場でしょう。

ICT時代は即戦力を外部から

 ただ転職市場は技術革新の波で大変革を迎えつつあります。当センターの「情報通信技術(ICT)が変える経済社会研究会・中間報告」では、ICT普及が職業を今後、二極化させるという指摘をしています。

 ICTをフル活用できる高スキルな労働者とそうではない低スキルな労働者の格差が、転職では一歩も二歩も先を行く米国では拡大しているからです。

 米国の専門家の分析では、1980年代以降、工場の作業者などの職業がICTに置き換わり、「新たに高度で高収入な研究者や管理職、経営者と、小売や飲食業など低賃金になりがちな部門の労働需要が増えた」としています。

 これを受け、同研究会の中間報告では、ICT導入に対応して高スキルな職業へ移行できた人材は「大学以上の高等教育を受けている傾向が強い」と分析しています。

 米国のそれなりの大学にはビジネススクールがあることなども、ICT普及によって求められる職種が、投資判断や販売戦略の作成などができる高度人材へシフトしたことが一つの背景にあります。

 進歩の速いICT時代には、時間をかけて熟練労働者を社内育成するのではなく、即戦力の人材を外部から採用する必要に迫られたわけです。

米国での変化と同じ流れをたどる

 こうした「機械が人間に取って代わる」との指摘は、日本でも米国と同様の変化が起きています。日本の専門家の研究では、米国に比べて緩やかながらも労働市場に同じような傾向がみられるとしています。

 変化が緩やかなのは、日本では年功序列や終身雇用といった制度が残っており、ICT時代に応じた業務や経営の仕組みをうまく実現できずにいるからです。

 しかし日本でも転職市場が広がっていることなどは、米国と同じ流れに進んでいるからでしょう。ICT時代には、配置転換などを通じた従来型の企業内人材育成・活用方法では、そもそも技能を取得する仕事が社内にない可能性が高いのです。

自己啓発が一層求められる時代へ

 ICTをいかに活用するかということは、経営そのものです。その巧拙が生産性や競争力を左右します。

 モノづくり大国のドイツですらインターネットを製造業へ大胆に導入し、市場と工場を直結し、製品開発と生産、販売、サービス提供を一体化する「インダストリー4.0」に取り組み始めています。日本も同様の動きが出てくることは避けられないでしょう。

 今後も、拡大する転職市場を有利に活用するには「社内ノウハウの積み重ね」だけでは、だんだんと難しくなっていくでしょう。企業以外でのICTを中心とした自己啓発が一層求められる時代に入りつつあります。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)