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言語の職人に頼らず言語の部品化をめざす/アラヤ株式会社

言語の職人に頼らず言語の部品化をめざす/アラヤ株式会社

言語の職人に頼らず言語の部品化をめざす

ビジネスのグローバル化の流れで企業向けの翻訳も大きく変わってきた。デジタルカメラ、携帯電話など世界市場に向けた商品には、30カ国以上もの言語によるマニュアルが必要とされている。日本企業のグローバル化を支える技術翻訳会社、アラヤ株式会社の中嶌重富社長に聞いた。 (編集部 鈴木)

中嶌 重富氏 1947年、東京都生まれ。都立高校卒業後、大手銀行に入行。1989年退職し同年、翻訳会社の常務取締役就任。2004年に退職し、同年アラヤ株式会社設立。 同社社長。

スピードと多言語対応にこだわる

 技術翻訳の世界は最近20年ほどで大きく変わったと中嶌は話す。それまでは、電化製品などの新商品を米国で売り出し、そこである程度売れれば、英国、フランスなどへ進出する。競争という時計はまだゆっくりと時を刻んでいた。

 ところが、「現在では、新商品を売り出すときは、世界同時発売が常識になりました。メーカーから商品発売の数カ月前に、30カ国向け新商品マニュアル作成の依頼を受けることも珍しくありません」と中嶌は説明する。

 アラヤは、自社製品マニュアルや資料の多言語展開に対応する戦略にこだわり続けている。一般的な翻訳では全体の8割は英語が占める。中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語を除けば、その他の言語はわずかで新しい言語の翻訳は採算がとれないことも多い。それでも、多言語翻訳にこだわっている。

 「効率性を考えたら、あまり勧められない戦略なのです。なぜこだわるかといえば、発注者側からの視点を重視しているからです」

 中嶌はこう考える。大手メーカーにとって、30カ国以上の言語に自社で対応することは難しい。すなわち、世界同時発売が世界標準の時代にメーカー側からしてみれば、多言語対応できる翻訳会社は実に便利で頼りになる存在となる。

 他言語を生み出す翻訳には、コツがある。まず、企業の各部署のエンジニアたちの意見を聞きながら日本語と英語の2通りを作る。翻訳支援ソフトを駆使し、クライアントの技術者とも密に打ち合わせを行い、4カ月半ほどで完成させる。翻訳支援ソフトをはじめ原稿解析ソフトの活用、翻訳検品の自動化に積極的に取り組み、最終段階では現地語を母国語とする識者がチェックを行い、高品質を保っている。

心がけることは社員への情報公開

 中嶌が、20年前に銀行を辞め、翻訳会社に移ったころから、これからの翻訳会社は多言語対応でなければ、生き残れないと感じていた。「インターネットが世界に広がり、ソニーやリコーといった日本企業も世界への同時発売が当たり前の時代になって来ました。ドッグイヤーといわれるスピードを求められる時代です」

 例えば、フィンランドの通信機器メーカー、ノキアは100言語に対応しているといわれている。国内で多言語に対応できる翻訳会社は20社程度。年間10億円以上の売り上げを上げているのは数社程度になる。

 アラヤの社名は、ヒマラヤの言葉から取った。サンスクリット語でヒマは雪、アラヤは蔵(蓄積)の意味だ。2004年、56歳で起業した中嶌の思いがこめられている。「この会社が経験や知識などを蓄積する場であってほしい」。そして心がけていることがある。

 「私は、ときどき自分の行動がわかりやすいか、問いかけます。なぜなら、できるかぎりオープンに情報を公開して、他人から見て、予測しやすいように努めています。そうすることで、社員が安心するからです」。組織が混乱することを避けたいと考える。