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場所も時間も柔軟に!期待高まるテレワーク

第2回 テレワークの成り立ちと今

第2回 テレワークの成り立ちと今

 近年、多種多様な働き方が生まれているなか、政府が推進している新たな働き方のひとつが、ICT(情報通信技術)を用いることで時間や場所の制約を受けずに働くことができる「テレワーク」だ。

 政府は2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に働き方改革を行うべく、開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と定め、大手企業を中心にテレワークの導入を呼びかけた。1回目となった今年の7月24日は、大手航空会社などをはじめ約420の企業・団体が首都圏で一斉に在宅勤務などテレワークを実施。参加人数は延べ3万人を上回った。

 第1回は「テレワークを知る」をテーマに、働く側と雇う側の双方のメリットなどに触れた。第2回は「テレワークの成り立ちと今」をテーマに、テレワークマネジメント代表取締役の田澤由利氏に引き続き話を聞いた。

現在の定義は2007年からスタート

 「テレワーク」という言葉自体は1980年代からあるものなのですが、その頃は現在の定義と違っていて、都心の大企業のリゾートオフィス的なイメージでした。現在の日本テレワーク協会の前身が、日本サテライトオフィス協会だったことからも、そのことが伺えます。

 それでは、現在のテレワークというものが出てきたのはいつかというと、2007年に内閣府より「テレワーク人口倍増アクションプラン」が策定され、これが国としての大きなスタートだと言えると思います。当時は第1次安倍政権で、実はあまり知られていないのですが、所信表明にもテレワークの文言が盛り込まれていました。

 政権が代わるなどして一時的にアクションプランの推進が緩やかになっていたのですが、2009年の新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)、そして2011年の東日本大震災で、テレワークに改めて注目が集まりました。しかし、あくまで危機管理のテレワークという視点は永続的なものではありませんし、そもそも災害は起こらないことが望ましいこともあり、今ほどの盛り上がりは見られませんでした。

 その後、現在の安倍政権が女性活躍社会の推進という方針を打ち出すようになり、それにともない、在宅勤務なども可能なテレワークという働き方が見直され始めました。さらにいわゆる新「3本の矢」の政策に介護離職の防止が盛り込まれました。これは今後、今以上に介護離職が増えていくことが予想されるからです。さらには、東京の一極集中を是正し、地方の人口減に歯止めをかける地方創生の一環としても視野に入ってきます。

人材の確保においては目標段階

 このように様々な事象が合わさっていき、テレワークという言葉が再び取り上げられ始め、決め手になったのが昨年に打ち出された「働き方改革」です。働き方改革には同一労働同一賃金や長時間労働の是正、高齢者の就業促進など9つの項目(下記の図参照)があり、テレワークもその項目の1つとして入っていますが、そのほかの項目を成功させるためにもテレワークが不可欠だと思っています。

 例えば残業時間を減らしたところで経済が成長するわけではありません。働き方改革の目的はあくまで経済成長ですから、それを達成するためには柔軟な働き方や、時間当たりの生産性の向上が肝要になってきますので、そこでテレワークが果たす役割が重要になると考えます。

 官の取り組みはこれまで述べたとおりですが、民、つまり企業のテレワークへの取り組みに関しても官と同様、今後の労働人口の減少や介護離職の増加などの理由で、福利厚生の側面から人材の確保という目的に変わりつつあります。これはとても重要なことです。

 人材確保という課題は今後、少なくとも20~30年は続く課題だと思います。ただ、その対策として何をしたらいいのかわからないという企業の方が多いようです。よく取材で聞かれるのが「現在、最も取り組みがうまくいっていると感じられる企業はどこか」という質問ですが、「それはまだわかりません」としかお答えできません。

 なぜなら、既にテレワークを実践している企業もありますが、テレワークにより柔軟な働き方を実現させ、今後より難しくなっていくであろう人材の確保という意味での達成に関しては、まだ目標段階にあるからです。

働き方改革の9つのテーマ

同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善賃金引き上げと労働生産性の向上時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備高齢者の就業促進病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立外国人材の受入れの問題

出所:首相官邸「第1回 働き方改革実現会議」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/

田澤由利(たざわ・ゆり)

株式会社テレワークマネジメント 代表取締役

北海道在住。上智大学卒業後、シャープに入社するも出産と夫の転勤により退職。その後、在宅でのフリーライター経験を経て、1998年にワイズスタッフ、2008年にテレワークマネジメントを設立。企業へのテレワーク導入支援、国や自治体のテレワーク普及事業などを幅広く展開している。現在は内閣府の政策コメンテーターも務める。
著書に「テレワークで生き残る!中小企業のためのテレワーク導入・活用術 」(商工中金経済研究所)、「在宅勤務(テレワーク)が会社を救う」(東洋経済新報社)がある。2015年度情報化促進貢献個人等表彰にて総務大臣賞受賞。

●株式会社テレワークマネジメントについて
今まで事務所を持って働いていた人たちが、時間や場所にとらわれず柔軟に働くことができるようにと変わっていくことはなかなか難しい。何をどうしたらいいのか分からないという企業の悩みや疑問を聞きつつ、スムーズにテレワークを導入していくためのコンサルティングを行っている。

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