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一歩先をゆく魅せる「英語」

第15回 ドキュメント展開の基本構造

第15回 ドキュメント展開の基本構造
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第15回

ドキュメント展開の基本構造

 前回パラグラフ間の展開を滑らかにするための、読み手にすでに紹介済みである〈既知〉の情報を確認しながら〈新規〉の情報へと進む〈情報構造〉のテクニックを解説しました。今回は、ドキュメント全体を展開する上での基本構造を紹介します。

ドキュメントの基本構造である三部展開を学ぶ

 今回は、ドキュメント全体の展開という流れの中でその〈一貫性〉(cohesion)について考えます。具体的には、代表的なビジネスドキュメントである〈提案書〉を念頭に置きながら、〈導入〉(introduction)、〈本題〉(body)、〈まとめ〉(conclusion)、からなるドキュメントの基本構造である三部展開を紹介します。

提案書ストーリー展開の学習が有益

 英語であれ日本語であれ、ビジネスドキュメントの作成スキルを向上させるには、「提案書」(proposal)に代表される構造的な展開をしっかりと学ぶのが重要です。

 もちろん、すべてのビジネス文書が具体的な「提案書」であるわけではありません。しかし、「提案書」には他の多種多様なドキュメントに求められる多くの要素が織り込まれています。言い換えれば、ほぼすべてのビジネスドキュメントは「提案書」のどこかを抜き出した文書だといえます。

 例えば、「提案書」とは一見かけ離れていると思える〈謝罪文〉(apology)をみると、通常、

謝罪表明 ⇒ 現状報告 ⇒ 原因説明 ⇒ 対応策 ⇒ 再発防止策 ⇒ 責任表明

 という問題解決型の展開(ストーリー展開)をとります。

 実は、この流れは次回に解説する提案書の構造的ストーリーの一つである〈原状回復型問題〉ストーリーと大きく重なります。ですから、次回詳しく紹介する「提案書」のとる〈=問題解決型ストーリー〉をしっかりと学んでおけば、多岐にわたるビジネスドキュメント作成に柔軟的かつ機動的に対応できるのです。

 そして、これまで学んだ、センテンスやパラグラフレベルでの結束性と次回解説する提案書における〈問題解決型ストーリー〉を統合することによって、ドキュメント全体の〈一貫性〉をさらに確保できるようになるのです。

ドキュメントの基本は三部展開

 提案書に代表される、問題解決型のストーリー展開を学習するに先立ち、まずは、ほぼすべてのドキュメントに共通する、

〈導入〉(introduction)、〈本題〉(body)、〈まとめ〉(conclusion)

という3部分から成る基本的な流れについて触れておきましょう。

 これは、具体的なストーリー展開以前に理解しておきたいドキュメントの大まかな展開です。この基本的な流れを理解する上で、よく引き合いに出されるのが〈ファイブ・パラグラ形式〉です。

 ファイブ・パラグラフ形式は文字通り、5つのパラグラフからなり立つドキュメントの原形です。合計5つのパラグラフで構成される、前述したひとつの〈セクション〉規模のドキュメントです。1つの〈導入パラグラフ〉(introductory paragraph)、3つの〈本題パラグラフ〉(body paragraphs)、1つの〈まとめパラグラフ〉(concluding paragraph)という基本構造をとります。

流れは〈起-結〉・〈承承承〉・〈要約〉

 まず〈導入パラグラフ〉で文書の〈メイン・テーマ〉と結論である〈メイン・メッセージ〉を伝えます。次に、複数の〈本題パラグラフ〉を通して内容を掘り下げます。最後に、〈まとめパラグラフ〉にて〈メイン・メッセージ〉を確認します。いわば、起-結・承・承・承・要約という展開です。このようにfive paragraph formatは〈起結〉・〈承承承〉・〈要約〉という3部展開です。

 文書全体をピミッド構造として捉えると、まずトップダウンに伝えた上で、最後に再度メイン・メッセージを確認するという流れです。ストーリー展開の典型としてよくある、最後に〈結〉がくる 起・承・転・結 とは大きく異なります。また、ファイブ・パラグラフ形式には、途中で論旨が飛躍する〈転〉もありません。

 もっとも、このファイブ・パラグラフフォーマットはあくまでも原形です。ですから、学校などで形式の指定された課題でない限り、実際のビジネスドキュメントでは本題パラグラフは3つであるとは限りません。多くは5つであったり、多少多めの7つであったりします。

 今回は、ドキュメント全体の基本構造を紹介しました。最終回となる次回は、引き続き提案書を念頭に、ドキュメント全体の流れである〈ストーリー展開〉(story development)について詳しく学びます。特に、3つの問題解決型のストーリーの基本パターンに焦点を当てます。


高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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